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  • 映画「ドライブ・マイ・カー」を掘り下げるトークセッションを開催(会場:文喫 六本木)

    2021年08月20日
    本屋を歩く
    ほんのひきだし編集部
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    主演に西島秀俊さんを迎え、村上春樹さんの短編小説を映画化した「ドライブ・マイ・カー」が8月20日(金)から全国で公開されます。

    本作は、日本映画としてはじめて第74回カンヌ国際映画祭コンペティション部門で脚本賞を受賞し、そのほかの独立賞も含めて4冠という偉業を達成。さらには、トロント国際映画祭などへの正式出品も決定するなど、日本公開を前に世界から大きな注目を集めています。

    公開に先立ち、8月16日(月)に、濱口竜介監督、美学者の伊藤亜紗さん、映画研究者の北村匡平さんによるトークセッションが、「文喫 六本木」で開催されました。

    濱口監督と伊藤さんは大学のゼミの同級生として、学部は違うながらも同じ授業を受けた仲であり、北村さんとは今回が初対面とのこと。

    伊藤さんと北村さんの「ドライブ・マイ・カー」を観た感想や、濱口監督が語る制作秘話など、作品をより深く掘り下げるイベントとなりました。

    「ドライブ・マイ・カー」あらすじ
    舞台俳優であり、演出家の家福悠介(演:西島秀俊)。彼は、脚本家の妻・音(演:霧島れいか)と満ち足りた日々を送っていた。しかし、音はある秘密を残したまま突然この世からいなくなってしまう――。2年後、演劇祭で演出を任されることになった家福は、愛車のサーブで広島へと向かう。そこで出会ったのは、寡黙な専属ドライバーみさき(演:三浦透子)だった。喪失感を抱えたまま生きる家福は、みさきと過ごすなか、それまで目を背けていたあることに気づかされていく……。

    (左から、北村さん、濱口監督、伊藤さん)

     

    北村「21世紀の『羅生門』ともいえる作品」

    北村さんは「ドライブ・マイ・カー」について、「3時間という視聴時間があっという間に過ぎていった。2010年代最高の映画だと思っていた濱口監督作品の『ハッピーアワー』を超えた」と感想を述べました。

    また、黒澤明監督が芥川龍之介の『藪の中』を、『羅生門』や『偸盗』を組み合わせ、独自解釈を加えて映画「羅生門」を作ったのと同じく、「ドライブ・マイ・カー」では『女のいない男たち』の中の短編『ドライブ・マイ・カー』、『シェエラザード』、『木野』もあわせたうえ、「濱口ワールドを繰り広げたという点で、“これは21世紀の『羅生門』だ”」と絶賛。

    伊藤さんからの「本作を手掛けるきっかけは?」という質問に濱口監督は、「プロデューサーから『村上春樹さんの短編映画を撮ってほしい』というオファーを前々から受けていた」と返答。

    村上春樹作品の映画化は難しいと思う一方、原作「ドライブ・マイ・カー」が雑誌「文藝春秋」(2013年12月号)に掲載された当初から読んでいて、自身も電車や車などの「移動空間」で会話をする映画作品を手掛けていたことや、内容が自分自身のテーマに合致する部分もあったことから、「ドライブ・マイ・カーだったら」と承諾したとのこと。

    それに対し伊藤さんも、「濱口ワールドは、密室空間に椅子と机と人がいれば出来上がってしまう」と納得していました。

    また、濱口監督は、原作の「黄色いオープンカー」だと、緑色の自然な背景と色が近いためくすんでしまうことや、オープンカーだと風のノイズが入ってしまい現場での音が使えないため、赤の車に変更したことも明かしました。

    ©2021 『ドライブ・マイ・カー』製作委員会

     

    伊藤「人間関係というより、“存在関係”を描いている」

    濱口作品での他者とのコミュニケーションの描き方について、伊藤さんは、「人間関係というより、“存在関係”を描いている。人と人との関係がまるでタバコの煙のような……人が吸っていると自分も吸いたくなるような、誰かの行動によって自分にも繋がっていくという点で共振、共鳴を感じます」とコメント。

    それを受けて、濱口監督は「自分の映画を人間ドラマだと言われるとどこか違和感があったんですが、人間が関係することで、その存在が影響を及ぼすものをずっと見ている。役者とテキストの関係もそうだと思うし……今までいただいた感想の中でも一等嬉しいです」と、伊藤さんの賞賛にはにかむ場面も。

    トークセッションの最後には、登壇者3名から、「ドライブ・マイ・カー」に対するコメントがありました。

    北村匡平さん
    「間違いなく『ハッピーアワー』の一歩先を行く作品。自分の身体と同化した車を手放し、委ねることによって自分の感覚が開かれていくという感覚をぜひ体験していただきたいと思います。可能であればぜひ2回観た方がいいと思います」

    伊藤亜紗さん
    「人と単に分かりあう、共感ということではなく、郷にじっくりと入っていき、自分の心の傷に向き合うということ。濱口監督は人間を違う視点で描いている監督。大学時代の作品を観た時はもっと実験的な監督になると思っていたが、人間の心を描いているというスタンスに同世代としてとても感銘を受けます」

    濱口竜介監督
    「伊藤さんとは、同級生としてやっていた人とこうやって再会が出来てとても嬉しかったです。また、北村さんが今日仰っていた“委ねる”というテーマに関しては正直自分では意識していなかったのですが、今まで撮影したドキュメンタリー作品の中で自分が撮影したものの編集を人に委ねる、手放すということでまた新鮮な作品作りが出来るという過去の経験を思い出し、また違った観点から映画を楽しめるようなお話が聞けたと思います。ついに20日公開なのでぜひ楽しみにしていただければ」

     

    映画「ドライブ・マイ・カー」作品情報

    監督:濱口竜介
    脚本:濱口竜介、大江崇允
    音楽:石橋英子
    製作:『ドライブ・マイ・カー』製作委員会
    製作幹事:カルチュア・エンタテインメント、ビターズ・エンド
    制作プロダクション:C&Iエンタテインメント
    配給:ビターズ・エンド
    出演:西島秀俊 三浦透子 霧島れいか/岡田将生
    原作:村上春樹「ドライブ・マイ・カー」(短編小説集『女のいない男たち』所収/文春文庫刊)

    女のいない男たち
    著者:村上春樹
    発売日:2016年10月
    発行所:文藝春秋
    価格:748円(税込)
    ISBNコード:9784167907082

    2021年8月20日(金)全国ロードショー
    ©2021『ドライブ・マイ・カー』製作委員会

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