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全国の書店員さんが一押し本を紹介する連載「わが店のイチオシ本」。
第35回は、東京都台東区にあるbook express エキュート上野の書籍担当・工藤修志(のぶゆき)さんにご登場いただきました。
工藤さんの“イチオシ本”は、『自分をコントロールする力 非認知スキルの心理学』。近年、注目を集める「非認知スキル」ですが、なかでも「実行機能」は人間の将来に影響を及ぼす能力なのだそう。そんな最新の知見がつまった本書の読みどころについて、ご自身の体験とともに紹介いただきました。
なぜ、ダイエットをしているのに食べ物の誘惑に屈してしまうのか、1時間集中して勉強しようと思ってもスマホに手が伸びてしまうのか。多くの人はいろんな場面で誘惑と戦い、勝ったり負けたりしていると思います。
実際、書店で働いていて思うのは、ダイエット本と自己啓発本はたくさんの新刊が出続けていますが、常に売れるジャンルであるということです。それは内容云々よりも、それを実行することの難しさを物語っているのだと思います。かくいう私も、食べ物の誘惑に負けダイエットに成功できない一人でもあります。
誘惑に負けてしまう人もいれば、それに打ち勝つ人もいる、そこにはどんな違いがあるのだろう? なぜ不合理な選択をしてしまうのだろう? 多くの人が考えたことのある疑問だと思います。そんな中、新刊出しの時に目に入ったのがこの本です。
本書では、コントロールする力=実行機能としており、実行機能を高める方法を指南するのではなく、実行機能とは何なのか、人間の成長過程でどのように育まれていくのかを知識として与えてくれます。
その中でも、個人的に強く共感した内容をご紹介したいと思います。
子ども時代の実行機能の高さは、将来の経済状態や健康状態に影響する、というものです。
自分語りになってしまいますが、私には5歳年上の兄がいます。子ども時代、次男である私は自分で言うのもなんですが、何をやっても卒なくできるタイプで、勉強も運動もこれといった努力なく、それなりに良い成績を収めることができていました。
逆に兄は体が小さいこともあったのかもしれませんが、勉強も運動も芳しくありませんでした。ですが、兄は「英語の勉強で一日10単語覚える」、「1年間で本を100冊読む」などと決めたら、それを必ず実行できる人でした。
そして今現在、私より兄のほうが収入も、社会的評価も高いので、「まさに」と感じました。兄に限らず、友人や同僚など周りの人を見てみると実行能力の高さの重要性を感じる場面はたくさんあり、読者にとってもそれぞれ共感できるところがあるかと思います。
またこの本の読みどころは、前述した通り、実行機能が何かを知識として与えてくれるところにあります。得た知識は、読者がそれぞれのアプローチで実生活に活かすことができるのではないでしょうか。
私の場合は、実行機能はストレスの影響を受けて低くなるという点に注目しました。
書店では多くのスタッフが働いています。彼らに実行機能を発揮し、誘惑に負けず仕事に集中してもらうには、ストレスの少ない職場環境を作ること、つまりは「スタッフの要望には何かしらの早いレスポンスが重要であるのではないか?」など想像を膨らませながら読み進めることができました。
人生を生きていくうえで必須であろう能力、自分をコントロールする力=実行機能について知りたい方は、ぜひ読んでみてください。
◆作り手からのメッセージ◆
ビジネスの成功や将来の健康を左右する「非認知スキル」。「YouTubeばっかり見てる子どもの将来はどうなるの?」「大人の私でも鍛えられる?」……そんな素朴な疑問に、最新の発達心理学が丁寧に答えます。自分をコントロールしながら言いますが、まさに人生を左右する一冊になるかも!?(講談社 現代新書編集部 栗原一樹さんより)
book expressエキュート上野(Tel:03-5826-5684)
〒110-0005
東京都台東区上野7-1-1
JR上野駅構内3F入谷改札内 エキュート上野内
※営業時間 7:30~22:30(日・祝日 ~22:00)
(「日販通信」2020年2月号「わが店のイチオシ本」より転載)