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定期的にベストセラーランキングが発表されていますが、日販調べのランキングには「定期誌」がありません。このため、周囲に「昨年一番売れた雑誌は何だと思う?」と質問してみても、正解率は極めて低いものでした。
そこで今回は、「2018年の定期雑誌のベストセラーランキング」を作成し、それをもとに雑誌における売れ行きの傾向を見ていきたいと思います。
まずは、2018年の定期雑誌の売上冊数ベスト30を見てみましょう。
2018年1月1日~12月31日までの売上冊数をカウントし、もっとも売れている号で順位をつけました(※集計対象:日販 オープンネットワークWIN対象書店3,500軒)。
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第1位に輝いたのは「コロコロコミック」。ダントツの実績です。最も売れた号は1月15日発売号でした(付録はポケモンのアイテムコードなど)。
ちなみに2番目に売れたのはスプラトゥーンのアイテムコードがついた号で、「強力付録のついた号が上位になっている」といえますが、お年玉をもらった直後に発売されたということも、一つの要素になっていそうです。購入者は40代女性(母親世代)が突出していますが、70代の購入も目立ちます。
同じく子どもから圧倒的人気を誇る「週刊少年ジャンプ」は、第3位となりました。こちらの最も売れた号は2月10日発売号です。
そのほかランキング上位には、分冊百科の創刊誌も目立ちました。
その中で最も売れたのは「ニードルフェルトでねこあつめ」。なんと「少年ジャンプ」を押さえて堂々の第2位です。
分冊百科の創刊誌は、大々的な広告、安価な価格設定などで大きく販売部数を伸ばしますが、2号目になると大幅に縮小するのが通例。しかしランキング上位に入った手芸系の分冊百科には「併読率が高い」という特徴もあるので、継続率を上げるだけでなく、それとあわせて「似た傾向の創刊誌を購入した人にどうアピールしていくか」ということが、販売においては重要なポイントとなるでしょう。
女性誌では、「GLOW」6月28日発売号が最も売れた雑誌となりました。
なんとこの号、他の号の3倍以上も売れています。付録は「DEAN & DELUCA 保冷4点セット」。
「DEAN & DELUCA」とのコラボ付録は「otona MUSE」12月27日発売号でも実施され、こちらも発売直後から好調に売れて、年末年始の店頭売上を牽引しました。今回のランキングでは集計期間ぎりぎりの発売ながら、第9位となっています。
年末年始といえば、「すてきな奥さん」「ESSE」は、ともに新年号が上位となりました。今年の「すてきな奥さん」は新しい地図の3人が表紙を飾っていたため、併読雑誌にも新しい地図の特集号が並んでいます。
新年号は毎年各社が販促に力を入れる注目の号ですが、「きょうの料理」や「レタスクラブ」についても、11月末から12月にかけて発売された号が最も売れているというのが面白いところです。
また表紙といえば、2018年は安室奈美恵さんが表紙の号が売れ、買いまわりが起きるという現象もありました。
第10位の「sweet」はまさにその号。付録だけでなく、表紙の情報にも敏感になる必要がありそうです。
次に、少し視点を変えて、売上金額ベスト30のランキングも作ってみました。
冊数ランキングで第1位だった「コロコロコミック」は金額ランキングでもダントツでしたが、ずいぶん顔ぶれが変わっています。
第5位にランクインしたのは、本体価格1,907円の「会社四季報」(冊数ランキングでは圏外)。
また女性購買率の高い雑誌が上位に並んでいるなかで、「会社四季報」は男性読者の比率が突出しているのも特徴です。同様のものとしては「文藝春秋」がそれに続いています。
こうして並べて眺めてみたとき、幼児誌の本体価格に驚く方も多いのではないでしょうか。
「小学一年生」は1,370円、「てれびくん」は1,472円。1,000円を超える号が目立ちます。この本体価格の上昇が、順位アップに貢献しました。
「週刊 鉄腕アトムを作ろう!」も、本体価格が高い号が売上に貢献。最も売れた3月27日発売号は、最も価格が高い号でもありました。
高額雑誌の売上がいいというのは、2018年の傾向の一つです。以前は「雑誌は1,000円を超えると売れない」と言われていましたが、ここ数年は定期性が薄れる一方で、欲しい付録や表紙であれば、値段を問わずに購入するという読者の動きが見られます。
そんななかで12月以降、宝島社の雑誌が1,000円を超える定価をつけてきており、今後どのような動きを見せていくのか目が離せません。
雑誌市場の落ち込みのイメージが強いため、売れているお店・売れている雑誌があることになかなか目が向きません。
しかし実際には、売上を伸ばしている雑誌やお店はたくさん存在しています。
売れているということを認知し、多くの人が話題にすることで、その雑誌はさらに売れるようになり、その影響は雑誌売場そのものの活性化にも繋がってくるでしょう。
現在、日本雑誌協会の次世代販売戦略会議が「雑誌売り伸ばしの成功事例に関するアンケート」を実施しています(2月15日締め切り)。
雑誌の売れ方は、大きな転換期を迎えています。あらためて「雑誌の売り方」について考え、時代に即した雑誌売場を開発していくことが必要ではないでしょうか。
(文化通信B.B.B. 2019年1月28日増刊より転載 ※一部編集)