• 『ぜったいに おしちゃダメ?』米国の大ヒット絵本が日本でもスマッシュヒット!編集者が綴る舞台裏

    2018年04月12日
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    サンクチュアリ出版 取締役編集部長 橋本圭右
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    ぜったいに おしちゃダメ? 洋書

    ライムグリーンの表紙。ポップに飛び出す〈DON’T PUSH THE BUTTON!〉の文字。Oの文字がボタンと同化し、人懐っこそうな紫色のモンスターがそのボタンを物欲しそうに見ている。

    ページを開くと、まずボタンが目に飛び込む。どのページを開いてもボタンは同じ位置にあり、いかにも押せという雰囲気だ。この絵本のルールは「ボタンを押しちゃダメ」。にもかかわらず、モンスターのラリーが「だれもみてないから、おしちゃいなよ」と誘惑してくる。

    誘いに乗ってボタンを押していくと、ラリーの身に次々とおかしな変化が起こる。ラリーは一体どうなってしまうのか?

    ――2017年3月、ロンドンブックフェアから戻った副社長にアメリカ発の同絵本を紹介されたとき、最初の印象は「アメリカっぽい!」だった。少なくとも、売れそうだと思った記憶はない。あちらのグミやアメみたいに、日本人にはどこか過剰な気がした。

    どうしよう。弊社は児童書版元ではない。でもいつか児童書はやってみたかった。子どもたちの笑顔が見たいから? 一発当たればデカそうだから? 「良い絵本とは?」「売れる絵本とは?」の仮説を持たない我々には、出版の決め手がない。

    苦肉の策として、同絵本に適当な訳をつけ、営業部員の一人に持ち帰らせた。彼の2歳になる息子の反応を確かめるためだ。良い反応を期待したわけでもない。結果がイマイチだとしても、自分たちを納得させられると思った。やっぱり日本はアンパンマンやしまじろうの国でしたねって。

    ところが翌朝、「息子があんなに笑ったのは初めてです。何度も読めってせがまれました」という報告を受ける。あわてて出版決定。あわてて人気絵本の傾向を勉強した。

    絵本コーナーで平積みされる作品は、昔からおなじみの定番絵本がほとんどだ。親がまず子に与えるのは自分が昔読んだ定番。じいじもばあばも旧友もママ友も贈り物に選ぶのは定番。理由は明確だ。失敗が少ない。幼児という名の地球外生物が、一体どんな絵本を好むか、大人の目では判断がつかないからだろう。

    ならば「どうすれば判断がつくか?」が販促のポイントになると結論づけた。

    「営業の倅の食いつきが良かった」だけでは足りない。まず200組の親子にサンプルを送り、感想を集めることにした。また、プロの目から見てどうか。人気保育士の「てぃ先生」に依頼して、実際に園児に読み聞かせをしてみた感想をいただいた。

    その結果は、まるで夢みたい。「子どもがこんなに笑ったのは初めて」「こんなに何度も読んでと言われた絵本はない」。営業部員の感想と完全一致したのだ。

    これだ! 〈とにかく笑う〉〈何度も読まされる〉が、買い手の判断を助けるキーワードだと確信した。

    親子でゲラゲラ笑いながら読む絵本。そのイメージは販促物にも反映した。一面置きでも賑やかに見える【展開BOX】。てぃ先生の【コメントPOP】と、子どもたちが爆笑する様子をおさめた【書店店頭用映像DVD】。商品をシュリンクするお店では内容が見られないから、【店頭用サンプル小冊子】も送付した。

    帯も重要だ。「店頭で帯がとれてしまう」という声には、帯と同デザインのシールを貼付したサンプル本で対応した。

    ▼書店店頭での陳列(上から未来屋書店イオンモール北戸田店、TSUTAYAさがみ野駅前店)

    ぜったいに おしちゃダメ? 書店展開ぜったいに おしちゃダメ? 書店 POP玉砕覚悟だったが、初版16,000部。発売2日目で7,000部重版という初速が出た。

    さらに売り伸ばしの力になったのは、広告でもパブでもなく、書店で開かれた読み聞かせ会である。「幼稚園(保育園)の読み聞かせで子どもが気に入ったから買った」という感想が多く寄せられたため、急遽、画用紙で作ったボタンを用意。これを使って読み聞かせを実施した書店で売上が伸びた。

    子どもの爆笑は強い。瞬く間に口コミが広がり、発売半年で20万部近く。第2弾『クリスマスも ぜったいに おしちゃダメ?(仮題)』の発売を予定している10月まで、この勢いはきっと続くだろう。

    ぜったいにおしちゃダメ?
    著者:ビル・コッター
    発売日:2017年09月
    発行所:サンクチュアリ出版
    価格:1,058円(税込)
    ISBNコード:9784801400436

    文・サンクチュアリ出版  取締役編集部長 橋本圭右

    ※本記事は、「日販通信」2018年4月号に掲載された「特集 児童書販売2018」の転載です。


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