• 〈出版業界〉2017年総括と2018年の展望:雑誌市場縮小・出版物輸送危機の中で、書店の将来を考えるときに必要なこと

    2018年01月09日
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    文化通信社 常務取締役編集長  星野 渉
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    アマゾンの「取次バックオーダー停止」

    流通上の要請とともに、書籍の取引条件を変えようとする動きが小売側から本格化したのも2017年の大きなトピックだった。

    アマゾン・ジャパンは2017年4月末、出版社に対して6月末で「取次バックオーダー」を停止すると通知。このことが多くの出版社に衝撃を与え、業界内だけでなく一般日刊紙なども大きく報道したのでご存じの方も多いと思う。

    アマゾンの発注方法は「カスケイド」と呼ばれている。これは「滝」を意味する言葉で、アマゾンからの注文が、取次など複数の仕入先(ベンダー)を上から順番に下りてくる様を表している。

    例えば、A、B、Cのベンダー3社から仕入れるとすると、注文はまずAに流れ、Aが在庫している商品が出荷される。Aに在庫がない残った注文がBに流れ、そこでも在庫商品を出庫した残りがCに流れる。この方法で、アマゾンは各ベンダー間の競争を促しているのだ。

    アマゾンの「バックオーダー」とは、各ベンダーに在庫がなく、最終的に残った注文を再びベンダーに流すことを指す。日本では取引している取次数社に在庫がなかった注文を、カスケイドの最上位(ファーストカスケイドと呼ぶ)の取次から再び流し、取次が出版社から調達する発注方法を指している。

     

    「直接取引」を拡大

    このことによって、取次が在庫していない商品については、利用者がアマゾンに注文しても調達することができず、何度か重なれば、その本はアマゾンのサイトでは購入できない「カート落ち」という状態になる。

    そして、アマゾン・ジャパンは出版社に対して、カート落ちを防ぐために、直接取引するように呼びかけたのだ。

    最近は、多くの著者がアマゾンでの売れ行きを気にしているため(というよりネット書店のおかげで初めて著者がリアルタイムの売れ行きをみられるようになった)、自著がアマゾンでカート落ちしていると出版社にクレームをつける著者が多い。そのため出版社としては、カート落ちに神経質にならざるを得ないのである。

    アマゾン・ジャパンが直接取引に応じた出版社とどのような契約を結んでいるのかは明らかにされていないが、小規模事業者向けにサイト上で登録できる直接取引のサービス「e託販売サービス」では、出版社の利益率が60%と明示されている(取次バックオーダー停止に伴い一時期65%を提示)。

    ということは、アマゾン・ジャパンは直接取引で40%程度のマージンを得ていると想定できる。大手出版社には直接取引に応じた社はほとんどないようだが、中小出版社ではそれなりに直接取引を始めた社があるようだ。売上に対するシェアは少ないとはいえ、既に書店マージン40%を実現しているのだ。

     

    紀伊國屋書店の買切・直仕入

    粗利益率の拡大を実現しつつあるのはアマゾンだけではない。紀伊國屋書店は出版社から直接取引で仕入れる「買切・直仕入」を拡大している。対象商品や出版社、取引条件などはほとんど公表されていないが、一部の出版社が業界紙で明らかにしたところによると、やはり書店マージンは40%前後だという。

    この仕入方法を改めて説明すると、紀伊國屋書店は単品ごとに出版社と交渉し、特定の商品を返品しない条件で直接仕入れている。2015年9月に村上春樹『職業としての小説家』(スイッチ・パブリッシング)の初版の90%(9万部)をこの方法で仕入れて大きな話題になったが、その後も対象アイテムを増やし、2016年には約100点、2017年には約200点を仕入れた。

    また、2017年10月5日には文藝春秋が買切・直仕入の同書店専売商品として、池波正太郎「鬼平犯科帳」誕生50周年記念企画『蘇える鬼平犯科帳』を初版1万部で刊行した。大手出版社としては初のケースであった。

    ▼紀伊國屋書店専売商品として刊行された『蘇える鬼平犯科帳』

    さらに、同書店のほかにも、年間の書籍・雑誌売上が1,300億円を超えるというTSUTAYAも、2017年に入って、売行良好書について返品しない代わりに、通常より多い報奨金を提供するよう出版社に要請している。

    詳細は明らかにされていないが、販売状況をPOSデータで検証し、返品に一定のペナルティーを科すことで実現しようとしているといわれる。


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