• 夢眠書店開店日記 第8話:「ブック・コーディネーター」という仕事②

    2016年01月16日
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    夢眠書店開店のため、出版業界の色々な方にねむちゃんがお話を伺いにいく「夢眠書店開店日記」。第8話の対談相手は、ブック・コーディネーターの内沼晋太郎さんです。それまで誰もしていなかった「ブック・コーディネーター」の仕事。前回は内沼さんがブック・コーディネートという仕事をつくり、コーディネーターとして活動を始めるまでをお伺いしましたが、今回はさらに詳しく伺っていきます。

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    今回の対談相手
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    内沼晋太郎

     PROFILE 
    1980年生まれ。numabooks代表。ブック・コーディネーター、クリエイティブ・ディレクター。一橋大学商学部商学科を卒業後、某国際見本市主催会社に入社し2か月で退社。往来堂書店(東京・千駄木)に勤務する傍ら、2003年に「book pick orchestra」を設立。2006年12月まで代表を務めたのち「numabooks」を設立。2012年、東京・下北沢にビールが飲めて毎日イベントを開催する新刊書店「本屋B&B」を博報堂ケトルと協業でオープン。著書に『本の逆襲』(朝日出版社)、編著に『コーヒーの人』(フィルムアート社)などがある。

     

    人に本を薦めるのは苦手

    内沼晋太郎(以下、内沼)「ブック・コーディネーター」を名乗っているとよく「おすすめの本を教えてくれ」って言われるんですけど、実は僕、人に薦めるのが苦手なんですよ。本って、結構人を変えちゃうから。

    夢眠ねむ(以下、夢眠)分かります! 本が人を左右することを分かっている身からすると、例えば「14歳の子にこれは早い、でも早かったからこそ私はこう思った」とか……そこまでの責任は負えませんよね。

    内沼:そうですね。なので「おすすめの3冊」を選ぶのではなくて、300冊とか3,000冊の本がある場所を作って、そこを素敵にして、来てくれた人がその中から1冊選んでくれればいいなと思っています。突き詰めればそれが書店や図書館だったりするわけですけど、洋服屋さんや雑貨屋さん、CDショップなんかにちょっとしたコーナーを作ったりすることが、たまたま自分の仕事になりました。

    夢眠:「◯◯さんがくれた本」というのももちろん大事ですけど、自分がその場で気に入って選んだことが最初の1ページを開くモチベーションにもなるので、「場」を提供されるっていうのが私としても一番しっくりきます。「あなたにはこれ!」って言われて「うーん全然違う……」ってなるより、自分で「何となくいいかな?」と思うくらいのほうがいいです。先ほど「HMV & BOOKS TOKYO」の売り場を拝見したんですが、年代別に作られた棚に興奮して、ずっと1980~90年代を見てました(笑)。やっぱり理想の書店はきっかけを提供してくれるお店だなと思って、「たくさんの中から1冊選んでもらえれば」というお話に今ちょっとゾワリとしました。

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    内沼:場所を作って「あとは選んでね」というほうが自分には向いていると思って、ずっとこういう仕事をしてきました。でもそれは本当に運が良かったというか、普通はそういう仕事をしようとしても「どこから依頼が来るんだ?」「どうやって営業しよう?」という感じでなかなか難しいと思います。僕の場合、たまたま誰もそういうことをやっていない時期に仕事ができたので、それを見た人から依頼をいただいているうちに、書店を紹介する雑誌の記事を書いたりするようになりました。

    内沼:B&Bを作ったのも雑誌がきっかけで、「BRUTUS」で本屋特集を作ったときに、編集部の方と僕とB&B(※1)を共同で経営している嶋さんの3人で、全国にある書店のリストアップや取材をやったんです。それでいろんな本屋さんを見たんですが「やっぱり結構大変だな」と。そこから嶋さんと「小さな町の本屋さんが、ビジネスとしてちゃんとやっていけるモデルを作ろう」ということで2人で作ったのが、B&Bです。

    ※1… 2012年にオープンした東京・下北沢の新刊書店で、内沼さんと嶋浩一郎さん(㈱博報堂ケトル)が2人で経営している。「B&B」は「Book & Beer」の略。本を読みながらビールが飲め、毎日トークイベントを開催しているのが売り。

    〈店舗情報〉
    〒155-0031 東京都世田谷区北沢2-12-4 第2マツヤビル2F(下北沢駅南口から徒歩30秒)
    営業時間:12:00~24:00(ドリンクのラストオーダーは23:30)年中無休(年末年始および特別な場合を除く)
    Tel:03-6450-8272
    http://bookandbeer.com/

     

    小さなお店で個性を出すには?

    夢眠:書店って、たとえ好きでも毎日は行かないし、棚のラインナップもそんなにすぐには変わらないじゃないですか。でもB&Bは毎日何かイベントをやっていたり、飲み物があったりして、今まで洋服屋さんや飲食店でコラボレーションされていたものがぎゅーっと詰まっている感じなんですよね。

    内沼:正直20~30坪くらいの街中の新刊書店って、今は本だけ売っていてもほぼ成り立たないんですよ。だから本以外の相乗効果のあるものと組み合わせて収益を上げなきゃいけない。それでB&Bでもビールを出したり、毎日イベントをやったりしています。トークイベントも基本的には有料で、たとえば参加費1,500円に1ドリンクという価格設定で30~50人くらい集めれば、出演者の方にちゃんと出演料を払えるし、利益も出るんです。他にもいろいろやっていて、本棚などの家具を売ったり、英会話教室をやったり、撮影の場所として貸したりもしています。

    夢眠:すごーい! 何でもできちゃうお店ですね。

    内沼:書店は取次から送られてくる本を並べて販売するのが基本ですが、小さい書店でそれをそのままやると、個性が出なくなってしまうんです。

    夢眠:大きい書店の、ただの小さい版になってしまう。

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    内沼:そうです。自分たちで本を選ぶと手間も時間もかかりますが、それでも自分たちで選んで“いい品揃え”にして、いい雰囲気にしてビールも出して……というふうにお店自体の価値を高めていけば、「イベントに出てもいいよ」「英会話教室をやってもいいよ」と言ってくれる作家さんや先生が現れたり、英会話を教わる側の人も「どこかの英会話教室に行くよりも、B&Bのほうが面白そう」と思ってくれたりするんです。そうやってコラボレーションできる人を増やして本以外のものを収益源にしていくことで、B&Bはなんとか成り立っています。

    夢眠:この間行った書店ではお店の前にマルシェが開かれていたんですけど、一つひとつの食材にもこだわりがあって「本が好きな人って、こういうことにもお金を払えるよね」と思ったんです。「こだわりを自分の中にちゃんと持っている人が楽しめる空間だな」と思って、すごくわくわくしました。B&Bも楽しそう! 行きます!!

    内沼:夢眠書店は、どんな品揃えにする予定なんですか?

    夢眠:今のところ私が好きな本をベースにセレクトする予定なので、結構偏ると思います。あとはこうやって出会った方に薦めてもらって、いいなと思ったものも置きますし、絵本も置きます。あとは私は料理の本が好きなので、料理の本のコーナーも作りたい。まだそれくらいホンワカしたイメージなので、このくらい本を入れないと本屋っぽく見えないとか、そういうことはまだ分からないです。

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    内沼:これからは、店主の個性がちゃんと出ていて「その人が選んだ」という感じがする書店のほうがいいと思うんですよね。「この本が欲しい」と決まっている人は、電子書籍やネット書店とか、大型書店のほうが便利じゃないですか。じゃあ小さい書店は何のためにあるのかといえば、昔はベストセラーを売っていることが大事だったかもしれないけど、今は店主の趣味とかお店のコンセプトありきで、かなり偏っていていいと思います。でも、ある程度本屋らしくするには1,000タイトルくらいは欲しいかな……。ちなみにB&Bには7,000タイトルくらいあるんですよ。

    夢眠:うわっ! すごいですね。7,000タイトルって、本棚でいうとどのくらいなんですか?

    内沼:きっと思っているより少ないですよ。30~40棚くらいです、多分。「HMV & BOOKS TOKYO」は50万タイトルくらいあるみたいで……。

    夢眠:ひえっ!!

    内沼:今いるエリアだけなら1,000タイトルもないと思いますが、小さい店だったらこれくらいでも「店」という感じにはなりますよね。


    誰かに一冊選んでもらうのもいいけれど、素敵な空間に足を踏み入れる楽しみ、たくさんある中から好きなものを選ぶ楽しみを提供してくれる書店がいい。「自分がその場で気に入って選んだことが最初の1ページを開くモチベーションにもなる」と語ったねむちゃんは、内沼さんのお話を聞いてどんなふうに夢眠書店のイメージをふくらませているのでしょうか? 次回もお楽しみに!

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