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夢眠書店開店日記 第8話:「ブック・コーディネーター」という仕事①

2016年01月09日
知る・学ぶ
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2015年に始まった「夢眠書店開店日記」も、そろそろ連載開始から半年を迎えます。2016年最初のテーマは「ブック・コーディネーター」。一見すると「本を選んでくれる人」というイメージを持ちますが、実際はどんな仕事なのでしょうか?

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今回の対談相手

内沼晋太郎

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 PROFILE 
1980年生まれ。numabooks代表。ブック・コーディネーター、クリエイティブ・ディレクター。一橋大学商学部商学科を卒業後、某国際見本市主催会社に入社し2か月で退社。往来堂書店(東京・千駄木)に勤務する傍ら、2003年に「book pick orchestra」を設立。2006年12月まで代表を務めたのち「numabooks」を設立。2012年、東京・下北沢にビールが飲めて毎日イベントを開催する新刊書店「本屋B&B」を博報堂ケトルと協業でオープン。著書に『本の逆襲』(朝日出版社)、編著に『コーヒーの人』(フィルムアート社)などがある。

 

「ブック・コーディネーター」という仕事を作るまで

夢眠ねむ(以下、夢眠)まず内沼さんが、いつ頃からどんな切り口で本がお好きだったのかなどをお聞きしたいです。例えば暇さえあればずっと本を読んでいたとか、あるいは本の装丁が好きだとか。

内沼晋太郎(以下、内沼)僕はずっと音楽をやっていて、大学2年生くらいまでは音楽を作ったりしていました。でも途中で、自分で作った音楽を自分が気に入らなくなってしまったんです。そこから「作る」側というより「伝える」側に回りたいと思うようになりました。その後は雑誌に興味を持って、仲間と一緒に雑誌を作っていましたが、こだわりすぎて結局出来上がらないまま終わってしまったんですよ。ハードディスクがクラッシュしてデータが全部消えて、皆のやる気がなくなってしまったり(笑)。

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内沼:その雑誌を作っているときに書店に話を聞きに行ったのですが、そこで初めて「作ったものを書店に『これを売ってください』と持って行っても、必ずしも売ってもらえるわけではない」と知りました。ちょうどその頃、ジャーナリストの佐野眞一さんの『だれが「本」を殺すのか』という出版業界や流通について取材した本がベストセラーになっていて、本を「作る」ことよりも「売る」「届ける」ことのほうに興味が移りました。それで今に至るという感じです。

夢眠:媒体として音楽から本に興味が移ったというよりは、本のほうが自分に向いているかも、伝えられるかもと思ったということですね。

内沼:もともと本は中学生の頃から読んでいましたが、大学生になってだんだん音楽や美術などの本以外のものにも関心を持つようになって、そのときに「本だったら何でも入れられる」「雑誌だったら何でもできる」と気付いたんです。雑誌に興味を持ったのはその要因が大きいですね。いろいろ入るものとしての本が好きなのかもしれません。

夢眠:本好きの私としては「本は買うものだ」という意識があるので、「頑張らないと本が売れない」っていう感覚がなかったんです。自然に本屋さんに行って、新刊をチェックしたり、好きな作家さんを追ったりしているので。でも実際は、薦められないと本を手に取らない方とか、本を手に取るタイミングが減っている方が多いということに最近気づきました。内沼さんは「雑誌っていいな」と思ったあと、なぜ書店を始めようと思ったんですか?

内沼:そうですね。僕も大学生の頃は「活字離れ」とか「出版不況」とか言われても、あまりピンときていませんでした。書店が好きで普通に行っていて、お金はそんなにないけどたまには買っていましたし、お客さんもいっぱいいましたから。

夢眠:「(本を)買う」っていう行為が自然なんですよね。

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内沼:でも先ほど言った佐野眞一さんの『だれが「本」を殺すのか』を読んだときに「そんなに簡単なものじゃないんだな」と思ったんですよ。そこから……大学生ってほら、結構思い込みが激しいじゃないですか(笑)。

夢眠:激しい(笑)。私もそうでした。

内沼:大学3年生くらいで「俺が出版業界を変えられるんじゃないか」みたいな気持ちになって。就職活動をしているときに出版社もいくつか受けましたが、もし運良く内定をいただいてどこかの雑誌に配属されても、1年目の社員がいきなり出版業界を変えられるわけがないと思ったんですよ。

夢眠:やっぱり(周りより)ちょっと大人だったんですね。

内沼:それで少し遠いところから出版業界全体を見られるような会社に行こうと思って、最初は「東京国際ブックフェア」を主催している会社に入りました。でもいざ入社してみると会社員が向いていなかったというか。結構大変で、2か月半で辞めてしまったんです。それから、とりあえず本のことで自分にやれることをやろうと思って、千駄木の往来堂書店でアルバイトをしながら「book pick orchestra」というオンラインの古本屋を立ち上げて、いろんな方法で古本を売る活動を始めました。それこそクラブイベントみたいなところで古本を売ったり。

夢眠:いろいろ融合させて……。

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内沼:そうです。やっていると、美術展などにも呼んでいただけるようになってきて。最初にやったのは原宿にある洋服屋さんからの依頼で、その店の一角に本の売り場を作るという仕事でした。それまでは大きな洋服屋さんの一角で本を売るというのはあまりなかったんですが、この仕事がきっかけで、雑貨屋さんとかCDショップといったいろんなお店の一角に本の売り場を作ったり、あるいは企業の受付や集合住宅の共有スペースのライブラリーに置く本を選んだりする仕事をいただくようになりました。それで10年くらいずっと続けています。

夢眠:そういう仕事って、本に関する仕事としては初めて聞いたんですけど……何ていうんですか? セレクター?

内沼:僕は「ブック・コーディネーター」と言っています。

夢眠:なるほど。「その場に合う」とか「そこに来るであろう人たちに見てほしい」とかを考えてコーディネートしてあげているんですね。

内沼:「場所を作る」という仕事ですね。


書店だけでなく洋服屋さんや雑貨屋さんにも「本のある場所」を作る、ブック・コーディネーターという仕事。夢眠書店開店日記では書店にも取材に行きましたが、ブック・コーディネーターの内沼さんが見ている「本」「本屋」「読書」はどんなふうなのでしょうか? 次回をお楽しみに!

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