• 夢眠書店開店日記【最終話】本をもっと盛り上げたい!全国の書店員が参加する「本屋大賞」の話④

    2019年03月02日
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    芸能活動10周年の節目に、引退を決めた夢眠ねむ。

    「引退後はいよいよ夢眠書店を開店したい」と語るねむちゃんの最後の対談相手は、“書店員が選ぶ賞”「本屋大賞」の実行委員で、経歴22年のベテラン書店員でもある高頭佐和子さんです。

    今回の話題は、ねむちゃんが準備中の夢眠書店と、“本との付き合い方”について。ねむちゃんが抱えている「ある悩み」に対して、高頭さんはどんなアドバイスをくれるのでしょうか……?

     

    今回の対談相手

    高頭佐和子(たかとう さわこ)
    NPO 本屋大賞実行委員会 理事
    書店員歴22年。大学卒業後、書店に就職。2004年の立ち上げより本屋大賞実行委員として活動している。

    ※今回は、同じく本屋大賞を立ち上げたメンバーの一人で、「夢眠書店開店日記」第1話に登場した日本出版販売 古幡瑞穂も参加しています。

    〉これまでのお話を見る

     

    「夢眠書店」はこんな本屋さんにしたい!

    高頭: (夢眠書店について)ほかに「こんな本屋にしたい」っていうアイデアはおありなんですか?

    夢眠: 半分は本屋で、半分はファンシーショップがいいかなあと思ってます。「たぬきゅん」っていうキャラクターがいるんですけど、そのプロデュースもしていきたいし、本だけじゃなくて読書周りのものもあるといいなと思っていて。あと、100%本屋というよりも、「普段あまり本屋に行かない人にとって“導入”になるような本屋」「本好きが唸る本屋じゃなく、本好きが育つ本屋」がいいなと考えてます。夢眠書店を最初のステップにして、いろんな人がほかの本屋さんにも行けるようになったらいいなって。

    高頭: すばらしいです。

    夢眠: いや~、しかし、私、なれるのかなあ。本屋に……。ちょっと不安です(笑)。

    高頭: 実は正直、「アイドルを引退したあと本屋さんになる」って初めて伺ったとき、「正気なのかな」って思ってたんです(苦笑)。ある意味“斜陽産業”という言葉がぴったりくるような業界なのに、いろんなことに才能があるなか、なぜ本屋を選ばれたのかっていう。

    夢眠: 周りの人からも「本屋さんって今潰れていってるんだよ」って言われます。そういう人には「だからやるんですよ」っていうふうに言ってるんですけど……。でもその一方で嬉しかったのが、「本屋をやる」って言ったら、芸能人のなかでも、本が好きで帯のコメントを書いたりしているような方たちから「めっちゃいいね!」「本、置かせてね」「棚作ってみたい」って声をかけてもらったんです。そういうふうに言ってくださる方も多くて、嬉しかったですね。あと「やることはまだまだいっぱいあるな」とも思いました。

    古幡: すごい。1日店長をやってもらったり、イベントもたくさんできそうだね。

    高頭: ただ、売り場に関して思うのは、ユニークな本屋を作るとお客さんは来るんだけれど、結局本を買ってもらわないと商売は成り立たないということなんですよね。なのでアドバイスとしては、売り場であることを忘れずに、商品の並びを工夫されるといいんじゃないかなと。完成度が高すぎたりすると買ってもらえないというのが、難しいところなんですよ。

    ―― 以前「夢眠書店開店日記」でTitleの辻山さんを取材させていただいたときに、そういうお話がありましたね。「壊せない“完璧な並び”を作ってしまうと、お客さんも本を抜くことができない」っていう

    高頭: そうなんです。そのあたりの匙加減は本当に大事ですね。辻山さんはそれがすごく上手で、「かっこいい棚」ではなく「欲しくなる棚」に並べてあると、私もお店に行ったとき思いました。

    夢眠: そこなんですよね。その感性が今ゼロなんです。「“欲しくなる棚”とは……?」っていう。たとえば昔DJをやっていたり、イベントのオーガナイズをやったりしていたので、「このメンツでこういうイベントを打ったら面白いな」とか、「この曲とこの曲をつなげたらストーリーが生まれるぞ」というのはわかるんですが、それが売り場の棚ではまだ見出せてないんです。

    高頭: あまりあれこれ考えて作り込みすぎないほうがいいと思います。たとえば10冊選んで、順番も考えて並べたとしても、本屋としては「その中から一冊すぐに売れなきゃいけない」んです。お仕事柄、お客さんの気持ちを盛り上げるのに向いていらっしゃると思うので、訪れた人がワクワクするような、明日の力になるようなお店をぜひ作っていただきたいなと思います。

     

    読書で“スタミナ不足”になったときに効く「スイッチ」の話

    夢眠: 本屋さんになるなら、まずは本をいっぱい読まないと。今本当に、圧倒的に本を読めてないんですよね……。

    ―― 本屋大賞の投票に参加したら、二次投票でたくさん本が読めますよ(笑)。

    夢眠: え!?

    古幡: 一次投票は好きな本を自由に選べばいいんだけど、二次投票ではノミネートされた10作を全部読んで、感想と点数をつけて投票しなきゃいけないのよ。「10作」っていっても、仮に全部上下巻だったとしたら10冊じゃなくて20冊だからね(笑)。

    高頭: 二次投票になると、みんな「もう無理かも……」って弱音を吐いてるよね。どの本も面白いんだけど、締め切りがありますから。私も上下巻ものが複数作あったときなんか、思わず高さ測っちゃったもの。

    古幡: あのときはすごかったなあ(笑)。ともあれ、私は「本を読めてない」ってことをあんまり真面目に悩まないほうがいいと思うよ。

    高頭: そうですね。読めるときと読めないときが必ずあると思っていて、ダメなときって、数ページ見ただけで疲れちゃうんです。でも、スイッチが入るときが必ずあるんですよ。私は「仕事でどうしても今この長編小説を読まなきゃいけない」というとき、詩集やエッセイ、対談ものなんかをふと手に取ってみると、それでスイッチが入ったりします。読書は多くの人にとって趣味、本来“楽しみ”としてするものですから、たくさん読むのが偉いというわけではないんです。

    夢眠: 私、よく「本を読んでほしい」って言うし、思ってもいるけど、「走れ」って言われるのは死ぬほど嫌なんですよね。「いいから走れ」って言われると、もっと嫌いになっちゃう。でも運動をすると心が健やかになるっていうことは、実際に運動をしてみて思ったんですよ。そのときに「ああ、私は指さされて笑われるのが嫌だったんだな」ってわかって。

    高頭: 私も運動が苦手で、進学先の高校を選ぶ基準の一つが「マラソン大会がないこと」でした。これができないとハンコがもらえないとか、みんなが見てるところで逆上がりするのなんて地獄ですよね。でも大学に入って初めて受けた体育の授業が、「体の使い方を実際にやって体感する」っていう授業だったんです。「体をこういうふうに動かすと面白いんだ」とわかってからは、運動そのものが嫌いだとは思わなくなりましたね。

    夢眠: そう! そうなんですよね。本もそういうふうに「あ、本読むのって、つらいと思ってたけど楽しいんだな」って思ってもらいたい。ただ、難しさを感じていることがあって。自分が読んだ本をアップして「おすすめだよ」って紹介するとき、ポップで読みやすい本は気軽にできても、3日くらい引きずる本はあんまり気軽に載せられなくて……。普段あんまり本を読まない人にはヘビーすぎるんじゃないかって考えると、おすすめはしたいけど「どこでおすすめしたらいいんだろう?」って思うんです。TPOというか……。

    古幡: 「3日引きずりました」って書くだけで、むしろ気になると思うな。

    高頭: そうですね。「なんで引きずったんだろう?」「どういうところがそうさせたんだろう?」って、むしろ興味がわくと思いますよ。

    夢眠: そっか。それに「3日分味わって数千円」と思えば、むしろ安い……。そういうレビューを書けるようになろう。

    高頭: みんなねむさんのことが好きで、ねむさんのことを知りたくて見ていらっしゃると思うので、もしすぐにその本を買わなかったとしても「そうか、ねむさんはこういうのを読むんだな」と一度知ってもらうことに十分意味があると思います。そうすればきっと「そういえばこの本、ねむさんがいいって言ってたな」って思い出して、買いたくなるときがくると思うんですよね。

    ――「ねむちゃんの好きなものを好きになりたい」っていう気持ちもあると思います。

    高頭: なのでぜひ、本屋大賞で何に投票したかもアピールしてください。「本屋大賞はこれで、私の推しはこれでした」っていうふうにお店に並べてほしいです。

    古幡: それ、大事だよね。

    夢眠: 私、いつも勝手に「夢眠賞」作ってますよ。曲とかお菓子とか。

    高頭: えっ、そうなんですか。ちなみに今年の夢眠賞は……?

    夢眠: たとえばお菓子だと、ちょっと前はパイの実のアップルパイ味でした。今年はハーゲンダッツのアップルパイ味です。

    ―― アップルパイだらけ(笑)。

    夢眠: (笑)

    高頭: そういえばパイの実、最近食べてないです。久しぶりに食べたくなりました。

    ―― そういう効果って、本屋大賞にもありますよね。「そういえば最近食べてないなあ」って、パイの実を思い出すきっかけになるというか。次にお菓子売り場で見たら絶対意識しちゃう。

    高頭: そうですよね。「夢眠賞」、すごくいいと思います。ロゴとかもあるんですか?

    夢眠: 今は特にないんですけど、シール勝手に作って貼ろうかな(笑)。

    古幡: ちなみに本屋大賞は受賞後、「本の帯にロゴを使うときはこれを使ってください」「ロゴ使用帯で販売した分を、翌年の協賛金として拠出してください」と出版社さんにお願いしています。

    高頭: 「ノミネート時はロゴマークを無料で使用できますが、大賞をとったら売上の数パーセントを本屋大賞の活動資金にさせてください」とお願いしています。

    夢眠: なるほど! 参考にします。

    〈次回更新は2019年3月9日(土)の予定です!〉




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