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    夢眠書店開店日記【最終話】本をもっと盛り上げたい!全国の書店員が参加する「本屋大賞」の話①

    2019年02月09日
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    芸能活動10周年の節目に、引退を決めた夢眠ねむ。「夢眠書店開店日記」の連載も、このたびお届けする第18話が最後となります。

    「引退後はいよいよ夢眠書店を開店したい」と語るねむちゃんの最後の取材先は、先日ノミネート作が発表された“書店員が選ぶ賞”「本屋大賞」です。

    ぜひ最後までご覧ください。

     

    今回の対談相手

    高頭佐和子(たかとう さわこ)
    NPO 本屋大賞実行委員会 理事
    書店員歴22年。大学卒業後、書店に就職。2004年の立ち上げより本屋大賞実行委員として活動している。

    ※今回は、同じく本屋大賞を立ち上げたメンバーの一人で、「夢眠書店開店日記」第1話に登場した日本出版販売 古幡瑞穂も参加しています。

    〉これまでのお話を見る

     

    夢眠ねむが見た「本屋大賞」

    夢眠: 2015年に「夢眠書店開店日記」の連載が始まって、2017年の11月には『本の本 夢眠書店、はじめます』が出て、いろいろやってきたんですが、2019年3月に芸能活動を引退することになりまして。今後は書店を経営しつつ、自分が作ったキャラクターのプロデューサーとしてやっていこうということを決めているんですが、そのきっかけになった大きな要素の一つが「本屋大賞」の発表会なんです。それで、連載の最終回は本屋大賞のお話を伺えたらいいなと思って。本日はよろしくお願いします!

    高頭: こちらこそ、よろしくお願いします。

    ―― ねむちゃん、本屋大賞の発表会で「本屋をやりたい理由があらためてわかった」って言っていましたよね。

    夢眠: そうなんです。私がアイドルになろうと思ったのは、アイドルを応援するオタクの姿を見て、好きなことを「好きだ」って声に出して言えることとか、「この人たちを売ろう」と情熱をかける姿がすごく美しく見えたのがきっかけだったんですけど、本屋大賞の発表会にお邪魔して、それと同じ力を目の当たりにしたんです。

    ▼2018年4月に開催された「本屋大賞」発表会の集合写真

    夢眠: 自分たちが前に出て何かするっていうんじゃなくて、本を盛り上げるために皆さんが熱く語っていらっしゃって。本屋大賞自体はもちろん知ってたんですけど、あらためて「すごくいい賞だな」と体感しました。

    高頭: そんなふうに思っていただけて、実行委員としてとても嬉しいです。

    夢眠: 一番面白かったのは、折原一さんのスピーチでしたね(『異人たちの館』で2018年発掘部門を受賞)。推薦した書店員さんが「高校生のときにこの本を読んで書店員になったんです」「体が痺れるような体験をぜひ味わってほしい」「ずっと品切れだったのがついに復刊したので全国の人におすすめしたいです」ってすごく情熱的にプレゼンされてたのに、折原さんは「でも、これまで何度も絶版になって……」っておっしゃってて、温度差がすごくて(笑)。

    高頭: あれはいいスピーチでしたね(笑)。

    夢眠: 「文化を盛り上げているのは、当人よりも周りの人たちなんだな」っていう、いい意味での“熱量の違い”を感じたんですよね。アイドルをやっていて実感するのは、アイドル本人がどんなに頑張ってもそれだけじゃ売れないってことなんです。肝心なのは“イケてるオタク”がどれだけつくか。発信力があって、自分の好きなアイドルが売れることを恐れないファンがつくかが、すごく大事なことだと思ってるんですけど。

    高頭: なるほど……。

    夢眠: 本が好きだと、「自分だけがわかっていればいい」「あんまり他人には教えたくないな」みたいな気持ちになっちゃったりすることもあるんですけど、本屋大賞の発表会にいた書店員さんたちは「この本が好き!」っていう気持ちをまったく隠さずに全力で応援していて、それがすごくいいなって思ったんです。

    高頭: わかります、本屋大賞ってまさにそういうことで……というか、それ、すごくいい話ですね。もう今回、この話で終了してもいいんじゃないかっていうくらい(笑)。

    夢眠: え!?(笑)

    古幡: でも本当にそうで、本屋大賞は「本をもっと盛り上げたい」「でも、みんな本を好きなはずなのに、それぞれの職場であんまり本の話をしないよね」っていうところから始まったんだよね。

     

    「売り場からベストセラーをつくる」

    ―― 本屋大賞は、書店員の投票だけで選ばれるという点が特徴的ですよね。スローガンは「売り場からベストセラーをつくる」。

    高頭: みんなで集まって飲んでいて、不満というか……たとえば芥川賞や直木賞って、「該当なし」のときがあるじゃないですか。もちろん文学賞は何が選ばれるか毎回楽しみにしていますし、選評も読んでいますけど、文学賞は作家や評論家の方たちが選ぶ賞なので、該当作なしの場合もあれば、「これが受賞したらすごく売れるだろうな」と期待していた作品ではないものが受賞することもある。でも、その結果を不満に思うのはおかしいんじゃないか?と。「私たちには売り場があるんだから、だったら自分たちで何かやるべきだろう」ということで、本屋大賞を作ることになりました。

    夢眠: そうか。「文学作品として賞にふさわしいと評価されるもの」じゃなくて、本屋大賞は書店員さんが「売りたい」と思う本を選ぶ賞だから。

    高頭: お客様が本屋に来て、面白いものを買って、「本って面白いな」「また本屋に行ってみようかな」って思ってもらうための賞なので、正直1位が何になるかはそこまで大事じゃないんです。

    夢眠: 「本の雑誌」の座談会(※)、読みました。「本が売れない・元気がないと言われている書店業界に、なんとか元気が出るアイデアを出そう!」っていう、まさに“本屋大賞前夜”というべき内容の……。レンタルビデオ店のたとえが……(笑)。

    2003年9月号掲載:書店員緊急座談会「『本屋さん大賞』を作ろう!」

    高頭: あれはやたら心に響きましたね(笑)。自分たちで何かやろうとは思っても、当時はやっぱり「書店員が集まっておすすめ本を決めたところで、どれだけのアピールになるのか?」っていう疑問があったんですよ。それに対して「全国のレンタルビデオ店の店長が集まって、アダルトビデオの“店長おすすめ大賞”を決めたら俺は絶対に観る」と言った人がいた。私もあの座談会に参加していたんですけれど、そのたとえは「なるほど!」と思いました。

    ――「読んで面白かった本から一番売りたいものを選ぶ」という柱では全員が合意していたものの、「それをどうやって売るの? 売れるの?」っていう話になったときに、そのたとえが出てきたんですよね。

    高頭: 書店員って、言ってしまえば「ただの店員」じゃないですか。ただの店員がおすすめするものを面白がる人が世の中にいるんだろうかって、「自分たちでもっと本を盛り上げよう」「何かしよう」と言いながらも、一方で照れみたいなものがあったんですよね。アダルトビデオのたとえは本当にそのとおりで、きっと自分たちよりはるかにたくさん作品を観ていて、もちろん好みが合うかどうかはわからないけれど、これだけ多くの店長が「これは観るべき」と言っているなら、やはり観る価値のあるものなんだろうなって思うじゃないですか。

    夢眠: それで実際にやってみたら……。

    高頭: 1回目から異様ともいえる盛り上がりでした。それこそ最初は「座談会に参加したメンバーの店だけで(本屋大賞を)決めて売ったとしても、きっと200冊くらいは売れるよね」「いやいや、もっと売れるんじゃないの?」「2,000部くらい増刷してもらえたら万々歳だね」って話してたんですよ。それが宣伝した甲斐もあって、参加してくれた書店員も、取材してくださったマスコミも想像以上の数でした。

    夢眠: 大成功じゃないですか!

    古幡: 5月の大型連休前に発表したっていうスケジュールもよかったよね。

    高頭: そうそう。大型連休を前に書店店頭から商品がなくなってしまって、さあ大変だ!って慌ててしまうくらい盛り上がって。そうすると投票した書店員も「こんなにお客様に読みたいと思ってもらえるなら、もっとやろう」っていうふうに思うじゃないですか。そういう、いい循環につながっていったんです。それから、おかげさまで15年続いています。

    夢眠: 理事の皆さんは、立ち上げから変わらないんですか?

    高頭: 転職や異動で理事を離れる人もいますが、続けているメンバーが多くて、新しいメンバーも増えています。離れた人も、発表会の手伝いに来てくれたりしていますよ。私はずっと本屋ではあるんですが会社が2度変わっていて、「本の雑誌」の座談会のときは1つ目の会社のときでしたけれど、本屋大賞の委員会メンバーはずっとやっています。一番長く属している組織なので、委員会の仲間のほうが「昔からの同僚」って感じがしますね(笑)。

    夢眠: 仲良しだ!(笑)

    〈次回更新は2019年2月16日(土)の予定です!〉




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