• 夢眠書店開店日記 第7話:POP王直伝! 見る者を惹きつけるPOP作りの極意②

    2015年12月12日
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    夢眠書店開店のため、出版業界の色々な方にねむちゃんがお話を伺いにいく「夢眠書店開店日記」。第7話のテーマはPOPです。今回は「POP王」こと三省堂書店の内田課長に教わりながら、ねむちゃんが実際にPOPを作ります。

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    今回の対談相手
    00_ねむ・ほんのひきだし-4th_0029c内田剛 株式会社三省堂書店 営業本部 営業企画室課長 MD販促担当 兼 販売促進担当

     PROFILE 
    1991年三省堂書店入社。そごう千葉店、成城店などを経て、現在は本部営業企画室で文芸ジャンル担当している。ビブリオは好きだがバトルが苦手な、自称アルパカ書店員。これまでに書いたPOPは3000枚以上で、最近は学校でのPOP講習なども行なっている。

     

    POPに書くことはどうやって決めよう?

    ―今回は、三省堂書店で選んできた『きょうのおやつは』のPOPを作っていただこうと思っているんですが……。

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    きょうのおやつは
    著者:わたなべちなつ
    発売日:2014年10月
    発行所:福音館書店
    価格:1,620円(税込)
    ISBNコード:9784834081237

    ―さきほど長所・短所の話をされていましたが、内田さんはいつも本を読むとき、どんなところに気を付けていらっしゃるんですか?

    内田剛(以下、内田)まずは、文章・イラストを問わず「このページがすごい!」「このフレーズがすごい!」と思うところをチェックします。あとは「色は何がいいかな」「形は丸めたほうがいいかな」と作るPOPのイメージを膨らませながら、ざーっと読んでいきます。

    夢眠ねむ(以下、夢眠)そうか! 自分の中で「太文字になっているところ」を探しつつ、読んでいくわけですね。

    内田:「このフレーズはしびれる!」というものがあったら、それを使ってしまっていいと思います。

    夢眠:伝えたいことや自分がひっかかったところをお勧めするんですね。

    内田:ちなみに、タイトルはあってもなくてもいいです。さきほどの「ダメな例」で話したように、本と同じになってしまうので。

    夢眠:どうしても書いちゃうんですよ、タイトル。今日お話を聞くまでずっと、本と同じように書かなきゃいけないと思っていたので……。

    内田:Webに載せるときはタイトルがないと分からない場合もありますが、書店には本の実物があるので、タイトルはいらないです。著者の名前も同じで、いらない場合もあれば「この人が書いた本だ!」というのを大きく出したい場合もあります。

    夢眠:たとえばこのPOPなら、糸井さんのファンの方には「糸井さん」と大きく書いてあるほうがいいですよね。

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    内田:それを上手にやっているのが、ヴィレッジ・ヴァンガードさんのPOPですね。タイトルや著者名には関係なく、いいフレーズがあるならそのフレーズを、読んでいるときの気分ならその気分を、安さがその本の最大の長所なのであれば「お買い得!」と書く……というふうに、ワンフレーズになっているんです。そういうPOPには、やっぱり足が止まるんですよ。POPの最大の狙いは足を止めることなんです。

    夢眠:ほしい本がすでにある人は別ですが、そうでない人にとってはたくさん本があって選べないですもんね。

    内田:そうなんです。何を買ったらいいのか、何を探したらいいのか分からない人が増えているので、POPは大事な道しるべになるわけです。

     

    POP作成の「はひふへほ」

    内田:ちょっとだけ授業っぽいことをやりますと、POPの「はひふへほ」について、いつも学校とかで話すんですが……。

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    夢眠:「はひふへほ」……?

    内田:まず「ひ」は、「ひどいなーっ」です。愛があるのなら、POPは「ひどいなーっ」でもいいんですよ。「ふ」は、「ふつう」。そんなにうまく書こうとせず、普通に書けばいいと。

    内田:僕が好きなのは、「は」と「へ」と「ほ」です。「は」は、「はっとさせる」。僕は「はっとさせる」POPを書く人ではないんですよね。

    夢眠:えっ、そうなんですか?

    内田:ワンフレーズでズバッと言い切っていたり、デザインがどぎつかったりするのが「はっとさせる」POPです。ヴィレッジ・ヴァンガードは「はっとさせる」タイプかもしれないですね。僕のPOPはむしろ「ほ」なんですが……。

    夢眠:「ほっとさせる」か……(笑)。

    内田:「はっと」はインパクトで、「ほっと」は癒しなんです。次に「へ」ですが……「へ」はなくてもいいんだけれど……「へぇー、なるほど」です(笑)。

    夢眠:(笑)。「分からせる」ということですね。

    内田:あとは「はひふへほ」から少しずれますが、五感に訴えかけるPOPはやはり効果が高いです。今は光るPOPも珍しくなくなりましたが、あれは本当に効くんですよ!

    夢眠:光るって、LEDか何かですか? それもずるいなあ。……あ、なんだかカラスよけみたいなPOPですね(笑)。

    内田:カラスはよけて人は集まってくるということです(笑)。ほかには匂いのするPOPもありますよ。

    夢眠:匂いまであるんですか!?

    内田:コーヒーの匂いのものもありますし、ホラー小説につけるPOPなら線香の匂いが向いていますね。

    夢眠:何でもありですね。

    内田:そこでちょっと朗読が聞こえたりすると、さらに関心を引くことができます。今はDVDを流す売り場も増えましたが、動きのあるものもやっぱり効果がありますね。

    夢眠:スーパーマーケットの鮮魚コーナーで「おさかな天国」が流れているイメージですね。「さかな さかな……♪」って聞いているうちに買ってしまいます。

    内田:洗脳に近いですね(笑)。……あ、それならねむさんに「本を読めば◯◯」と歌ってもらえばいいのか。

    夢眠:歌いますよ! 「本を読むと頭が良くなる」とか「モテる」とか(笑)。

    内田:あとは「かっこいい」とかですね。僕は、本を買ったあと読まなくてもいいと思っているんです。「本を持っている自分がかっこいい」というのもありだなと。

    夢眠:私はそういうことを伝えたいですね。

    内田:読まない人たちにどうやって興味を持って書店に親しんでもらえるか、買っていただけるか。そこから入ってくるものって、ものすごくあると思います。

     

    いよいよPOP作り!

    ―そろそろPOP作りに移りましょうか。

    夢眠:どんなPOPにしようかなあ……。さっきの法則に沿うと、水色×赤色は避けるべきですよね。

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    内田:僕はそのほうがいいと思います。

    夢眠:この本ではホットケーキができるから……(本を読みながら)おいしそうだなあ。

    内田:ホットケーキか。おじさんになると「ほっとけない本」とか書いちゃうので、ダメですね(笑)。

    夢眠:じゃあ、それはやめておきましょう(笑)。

    (※ここからは絵本の内容を想像しながらお楽しみください)

    夢眠:ホットケーキを描きたいなあ。でもそうすると、ばれちゃいますよね。あと鏡っていうポイントと…。

    内田:そうですね。これは本当に「一目見れば絶対に惚れる」という自信がありますよね。

    夢眠:これは本当に欲しくなると思う。

    内田:それ、いいですね! それは絶対に欲しくなりますよ。出会ったら最後、絶対買いたくなる、欲しくなる。「ぜひ手にしてみてください」と書いてみるのはどうですか?

    夢眠:ごちゃごちゃ言うよりは、「手にしてみては」と言いたいですね。

    内田:「絶対に誰もが好きになる。一度出会ったら最後」と。「私みたい」って書いちゃうのもいいかも?

    夢眠:謎の売り込み(笑)! ……なんだかPOP王の話すことが全部POPに聞こえてくるのですが。病気にかかったのかな(笑)。

    内田:いやいや(笑)。

    夢眠:コピーみたいですね。私なら、だらだら長く書いちゃう。この本は、小さい子どもにとって料理体験ができるところがいいなと思ったんですけれど、文章にすると長くなってしまいそうで。それに鏡の良さが伝わらない。

    内田:確かにこの本は、一緒に料理してみる感覚ですね。

    夢眠:疑似体験の要素は非常にあるんですが、「奥行きがある」みたいな説明的な言葉を絵本に添えるのは堅いんじゃないかとか、色々な邪念がありまして……。

    内田:まずは誰に訴えかけるかですね。子ども目線なのか、親なのか。

    夢眠:夢眠書店にはちびっ子もいっぱいいてほしいですが、やっぱり親世代に買っていただいて、ちびっ子に伝えてもらいたいです。

    内田:そうすると、親御さん向けのフレーズの選び方も必要ですね。

    夢眠:あと男の子もいっぱいいるという想定なので……。

    ―お母さんよりお父さんに買ってもらうところが、夢眠書店の特徴かもしれないですね。

    夢眠:「お父さんでもホットケーキが焼ける!」とかどうでしょう。

    内田:この本を買って帰ったら、絶対にお父さんの株は上がりますね。

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    夢眠:お土産にするといいですよね。

    内田:これをもらったら、子どもは飛び上がって喜ぶと思いますね。

    夢眠:男の子の部屋にこの絵本があるってアツいなあ(笑)。人を選びそうではありますが……。

    ―お二人とも、まとまりましたか?

    夢眠:えー、やっぱり難しい! この本の短所は、男の人が手に取りづらいところですよね?

    内田:大正解ですよ。どうやったらこのかわいらしい本に、お父さん世代が興味を持って買ってくれるかを考えるといいですね。

    夢眠:「誰でも作れるよ!」とかがいいですかね。

    内田:それをどう表現するかが難しいところですね。

    夢眠:イメージがなんとなくできてきました。

    ―まずはベースの色を決めましょうか。

    夢眠:グレーがいいかな……でも、ホットケーキも入れたい。私、つい渋い色を選んでしまうんですよね。

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    内田:選び方も気分によって変わるんですよ。同じ本でも、毎回違うPOPになることがよくあります。

    夢眠:さっき言っていた「重ねてはみ出させる」というのをやってみたいです。フライパンをバーン!と付けたい。

    内田:なるほど、いいですね。

    夢眠:内田さんは、だいたいの想像図ができてから作り始めるほうですか?

    内田:僕は考えながら作りますね。POPって、組み合わせなんですよ。このイラストを飛び出させるのか、枠内に収めるのか。キャッチやタイトル、イラストがあって、それをフレームにどう収めるか。考えながらやると結構楽しくて、学校でPOPの授業をすると小学生はとても喜びます。授業をやるのは中学校が多いですが……。

    夢眠:何の授業でやるんですか?

    内田:国語ですね。中学2年生のカリキュラムにあるんですよ。「POPを書こう」もしくは「本の帯を作ってみよう」。

    夢眠:進んでるなあ。今はそんな時代なんですね。

    内田:学校の先生としては、帯よりもPOPのほうが個性が出しやすいと考えているようです。僕が授業をしに行っている学校では、毎年お題が『走れメロス』なんですよ。僕はその学校に5年間行っているので、これまでに1,250枚の『走れメロス』のPOPを見てきましたが(笑)、同じものは1枚もないです。それが面白い。やっぱりPOPには個性が出るんです。

    ―それでは、実際に作ってみましょうか。これまでこの連載で書いてもらったねむちゃんのPOPも、あとで講評してもらいましょう!

    夢眠:やめてー! 本のデザインとPOPを同じにしてしまっているんです。

    内田:でもPOPに “絶対” はないですからね。作る人が楽しんでいて、見た人にも楽しんでもらえれば、それでいいんです。

    夢眠:うう、分かりました……。緊張するなあ。

    内田:作る側もみんな自己流なんですから。切ったり貼ったりするのが楽しいんですよね。

    夢眠:楽しい! すでにめちゃめちゃ楽しいですよ。

    内田:それがすごく大事だなと思っています。

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    (両者黙々と作業)

    夢眠:あ、でかっ。ホットケーキのほうがフライパンより大きかった(笑)。

    内田:そういうのも楽しいですよ(笑)。……僕みたいなおっさんも、家でこういうことをやっているんです……。

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    夢眠:ご自宅で作っているんですか?

    内田:店だと書けないんですよ。店では一枚も書いたことがないです。

    夢眠:へぇ~! 時間外労働というわけですね。

    内田:好きでやっていることですからね。ストレス解消法でもあるんです。これをストレスに感じるようになったら、僕は仕事を辞めます。

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    ―あ、ねむちゃんのPOP、いいじゃないですか。かわいい。

    夢眠:男の子目線で、ちょっとクールなPOPにしてみました。文章、長いかな……。でもなあ……、悩むー!

    ―こんなに悩むの、珍しいですね。

    夢眠:人に見せないだけですよ。スッとやっているふりをしているだけ(笑)。

    内田:……無言になりますね。蟹を食べているときと、POPを書いているときは(笑)。


    POPが完成に近づくにつれだんだん口数が減っていった二人ですが、次回はいよいよ作ったPOPを披露し合います。内田さんによれば「同じ本がお題でも1枚として同じPOPにはならない」ということでしたが、いったい二人はどんなPOPを作ったのでしょうか? お楽しみに!

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