夢眠書店開店日記 第7話:POP王直伝! 見る者を惹きつけるPOP作りの極意①

2015年12月05日
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欲しい本に出合うきっかけはレビューや売上ランキングなどさまざまですが、書店での出合いを演出するもののひとつにPOPがあります。そんなわけで、今回はPOPをテーマに「POP王」こと三省堂書店の内田課長から、POP作りの極意を教わります。

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今回の対談相手

内田剛 株式会社三省堂書店 営業本部 営業企画室課長 MD販促担当 兼 販売促進担当
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 PROFILE 
1991年三省堂書店入社。そごう千葉店、成城店などを経て、現在は本部営業企画室で文芸ジャンル担当している。ビブリオは好きだがバトルが苦手な、自称アルパカ書店員。これまでに書いたPOPは3000枚以上で、最近は学校でのPOP講習なども行なっている。

 

POP王がPOPを書くようになったきっかけは……

夢眠ねむ(以下、夢眠)今回は「POP王」である内田さんとお話できるということで、とても嬉しいです! POP自体は書店でアルバイトしていた頃にも書いていたし、この連載でも書いているんですが、実はイロハを学んだことはないんです。いろいろ教えてください!

内田剛(以下、内田)POP作りのノウハウは、学んだことのない書店員のほうが多いと思いますよ。

夢眠:そうなんですね。ずるいとは思うんですけれど、夢眠書店をいい本屋にしていくためにプロのお話を伺わせてください。

内田:一応これまでPOPを3,000枚以上書いているんですが、僕も誰かに教わったわけではないんですよ。自己流なんです。

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夢眠:前に何かで読ませていただいたんですが、売りたい本があって、心を動かされてPOPを書いたのが、最初のきっかけだったと……。ということは「今日からPOP担当ね」と言われたわけではないんですね?

内田:そうですね。「書店としてこれは売らなきゃいけない」と思う本に出会って、どうしたらいいか一人で黙々と考えた結果、POPを書くことにしたんです。

夢眠:POPが付いている本と付いていない本とを見たら、どうしても付いているほうを手に取ってしまうんですよね。POPに関しては出版社の方から「これを売りたいからPOP書いてね」って言われたり、入荷したときに付いていたものを貼ったりするというイメージを持っていたんですが、「これを売りたい」という書店員さんの気持ちで書かれているものもあると知って、「すごくいいなあ」と思いました。

内田:書店に来る読者の方は目が肥えているので、“売らされている” POPなのか “売ろうとしている”POPなのかが、一目でばれてしまうんですよ。だから上手か下手かではなく、気持ちがこもっているかどうかが大切だと思います。

夢眠:とはいえ、それが一番難しいように思います。 “伝える力” が必要ですよね。

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夢眠:そういえば基本的なことなのですが、POPは一般的にどれくらいのサイズなんですか?

内田:「はがき大」という言い方をよくしますね。大きすぎても小さすぎてもいけないんですよ。ただ、本の内容などによってサイズが変わることもあります。

夢眠:えっ、そうなんですか!?

内田:たとえば、文庫サイズの本にあまり大きいものは付けないほうがいいですよね。

夢眠:確かに!

内田:もっとストレートに言ってしまうと、POPがないほうがいい場合もあるんです。非常に売れている本なら、その本自体がPOP代わりになりますし。

夢眠:装丁が目印になって売れるんですね。

内田:たとえば村上春樹さんの新刊が出たら、その本自体がPOP代わりになるでしょう? むしろPOPをつけるならその隣に置く本ですね。何を置くか考えて、その本にPOPを付けて売ることになります。

夢眠:なるほど。……ということは、そういう「でーん」とした本の横に、どれだけ「売りたい」の気持ちを乗せるかが肝要なんですね。

内田:そうですね。書店員が売れている本の隣に何をどう置くかということです。だから売り方としてはPOPも大切だし、たとえば「タワー積み」も大切です。あれも一つのPOPなんですよね。

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夢眠:タワー積みを見て「すごく特徴的だな」と思ったんですが、あれは伝統ですか?

内田:そうですね。器用な人に受け継がれているので、僕にはきっと受け継がれません……。

夢眠:A型の人……?

内田:A型ですね、きっと。でも僕、A型ですよ(笑)。

夢眠:あれー? じゃあ受け継いでもいいんじゃないですか? 私はB型なのでだめかもしれませんが……。

内田:いやいや(笑)。でもタワー積みの方法は、別の機会にでも教わるといいかもしれませんね。 POPについては「いかに自己流を見つけるか」だと思います。さきほども言ったように、僕も自己流なので。イラストやデザインを勉強したことも全くないです。

夢眠:それでもこんなにバラエティ豊かに、本に合わせてレイアウトを変えたりもしていらっしゃるんですね。自己流というと一種類だけになってしまいそうなのに……。やっぱり、いろいろな本を読んでイメージして書いていらっしゃるんですか?

内田:そうですね。やっぱり、読まないと書けないというのはあります。本を読んで、POPを書き終えるまでが「読書」です。

夢眠:感想文というか、「読了!」という気分でPOPを書いていらっしゃると。

内田:自分のためにPOPを書いているという側面もあるのかもしれないですね。どうやったら伝わるかを、読みながら考えて。

夢眠:ということは、日本で一番読書感想文を人に読まれているともいえますね(笑)。

内田:どうでしょうね?(笑)そういえば最近は人に教えることも多くなって、学校でPOPの授業をやったりもしているんですよ。

夢眠:じゃあ今日は私、贅沢ですね。生徒一人、マンツーマンで。

内田:そこで必ずする話があるんですが、それは「本は人」だということです。人と同じように本にも個性があって、長所も短所もあるんですよ。その本の長所を伸ばして短所を補うのがPOPなんです。

夢眠:「補う」!

内田:そこがポイントの一つだと思います。本も人間で、POPも人間。POPを書く僕たちも人間だし、読者も人間ですよね。どうしても「人」が入ってくるんですよ。

 

よいPOPとダメなPOP

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内田:たとえばこれは僕が書いた本『POP王の本!』なんですが、この本の短所は「著者が無名」だというところです。この本では自分が書いたダメなPOPの例を挙げているんですが、ねむさんはなぜこれがダメなのか分かりますか?

POP王の本!
著者:POP王
発売日:2006年11月
発行所:新風舎
価格:1,296円(税込)
ISBNコード:9784289014330

夢眠:えー……、分からないです。

内田:分からなくてもいいんですよ。そうでないと、何のために僕がいるのか分からなくなる(笑)。

内田:このPOPがなぜダメかというと、デザインが本と全く一緒だからなんです。

夢眠:なるほど! 貼ったときに埋もれてしまうんですね。

内田:そうなんです。同じデザインの本がここにあるのに、POPも同じ黄地×赤だったら……同じじゃないですか。

夢眠:そうか! それは盲点でした。「デザインに合わせなくてはいけない」と思い込んでいました。

内田:そうでしょう? でも逆なんですよ。装丁や表紙は本の中身を凝縮させて作るんですが、そこに付けるPOPは、むしろ逆転させて作ったほうが目立ちます。

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夢眠:POPに目がいくようにしなくてはいけないんですね。

内田:『POP王の本!』の場合ならむしろ、たとえば黒地×白のように黄色と逆のイメージの色を使ったほうが、絶対に目に入ります。ソフトなイラストが入った優しい感じの表紙なら、POPは少し角ばった書体にするとか。POPの角を落とすか落とさないかでも、印象が全然違うんですよ。

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夢眠:違いますね。これとかもう、出っ張っているところが……。

内田:目がいきますよね。同じ枠の中でもちょっとはみ出させたり、角を落としてあげたりすると、印象がガラッと変わりますよ。

内田:ほかにもミステリアスな物語の場合なら、見た人が不安を感じるように、あえてPOPの端を片方だけ丸めてみたり……。

夢眠:左右対称じゃないというところでドキドキさせるのか……おもしろーい!

内田:それと自己流というのは、僕の場合だと切ったり貼ったりしているところもそうです。

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夢眠:確かにそうですね。レイヤーがたくさんあるというか。

内田:最初はクレヨンを使ったり色鉛筆にしてみたりと、素材をいろいろと変えて書いていたんですが、一番楽で比較的きれいに見えるのが、色画用紙を切ったり貼ったりする方法だったんですよ。

夢眠:なるほど。

内田:それと、よく「POPを上手に書けない」と相談されるんですけれど。

夢眠:それは思いますね。「下手に書いてマイナスイメージになったら嫌だな……」と思います。

内田:でも、下手でもいいんです。さっきも言ったように、気持ちさえ込められていれば。

夢眠:下手でも一生懸命書いているというのは、それはそれで宣伝になりますよね。

内田:それが伝わるんですよ。「下手に書け」というわけではなくて、結果として下手に見えたとしても、それが人の心に印象として残るということなんです。

夢眠:きれいにサラッとやられるより、がむしゃらに推されたもののほうが気になって読んでしまうこともありますよね。

内田:そうなんです。「きれいすぎると目に留まらない」というのがよくあるんです。

夢眠:印刷物と同じになってしまっては意味がないですよね。個性がにじみ出ているほうが、書いていることが信用できます。


「POPに絶対はない」「荒削りでも下手でもいいから気持ちを込めて作り続け、自己流を見つける」。これまでに書いた3,000枚のPOPを通して内田さんが見つけてきたPOPの極意は、今回少し教わりましたがまだまだありそうです。次回はねむちゃんと内田さんが三省堂書店で選んだ本をお題に、POP作りも行います。お楽しみに!

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〈おまけ〉絵本探し中のねむちゃん
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