• 夢眠書店開店日記 第5話:大好きな絵本ができるまで ―編集者ってどんな仕事?(絵本編)②

    2015年10月31日
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    子どもの頃からずーっと絵本が好きだったというねむちゃん。第5話「大好きな絵本ができるまで ―編集者ってどんな仕事?(絵本編)」では、児童書出版社である偕成社の千葉さんにお話を伺っています。今回は、絵本の特徴のひとつである「読者のほとんどが子ども」という切り口から、絵本作りの裏側や、加古里子さんの作品が持つ魅力に迫ります。

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    今回の対談相手
    千葉美香 株式会社偕成社 編集部

     PROFILE 
    大学卒業後、偕成社で雑誌の編集部を経て、単行本の子どもの本の編集に携わる。いつまでも3歳の心を忘れずに(!)、日々おもしろいものを探し続ける。

     

    子どもが一番シビア

    夢眠ねむ(以下、夢眠)(絵本と)他の本との大きな違いのひとつに「読者が子ども」ということがあると思うのですが、気をつけていることはありますか?子どもが考えていることって大人の想像力を超えていて、こちらの迷いなんかはすぐバレちゃいそうですよね。

    千葉美香(以下、千葉)子どものものだからといって「これくらいでいいだろう」というのは絶対にないと思ってやっています。子どものほうがずっとシビアですし。

    夢眠:敏感ですもんね。

    千葉:そうなんです!間違いも、正してくれるのは子どもですね。「こことここ、服の色が違います」とか。

    夢眠:あはは。おはがきで届くんですか?

    千葉:はい、そういうご指摘を受けたりします。だからどこまでも気を抜いてはいけません。子どもは、ページの隅にいるような小さな生き物に注目することもありますし……。

    夢眠:隅から隅まで見る感じ、よく分かります。私も『からすのパンやさん』では、ラインナップのページがすごく好きなんです。「見ても見ても見尽くせない」って、ずっと思っていました。今は一覧できるんですけれど、小さい頃は「はぁーっ!(うっとり)」って、ある一部だけ集中して見ていましたね。

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    加古作品の魅力

    千葉:『からすのパンやさん』は、40年前に発売されたんですよ。この新シリーズの4冊は、40年ぶりの続編なんです。以前から「続きを書いてください」という読者の声が多かったので、加古さんは続編をどう形にするか長い時間考えていらしたのですが、途中で「4冊になりそうです」とご連絡があって。

    夢眠:一人ずつだ!

    千葉:それぞれ「何やさん」にするかも、ずっと考えていらっしゃいました。加古さんは子どもたちからの手紙をとても大切になさっていて、手紙からいろいろ分析しているんです。加古さんの作品は500~600ほどあるのですが、そんなにたくさんの作品も「現在も発売されているもの」と「そうでないもの」に分けて、違いを考えたりなさっていたそうです。そして生まれたのが、この4冊です。大きなテーマは、「家族」と「子どもはおいしいものを食べるのが好き」ということになりました(笑)。

    ※編集部注:『からすのおかしやさん』のあとがきには、「『おいしい本』にしたいと思ったのですが、お口にあいましたでしょうか?」というおちゃめな一文も。

    夢眠:この4冊は「チョイスが渋いなあ」と思っていて、そこが好きです。4つの中におそばと天ぷらがあるっていう。「加古さんっぽい!」と思いました。

    千葉:私も驚きました(笑)。

    夢眠:今日見て一番最初に手に取ってしまったのは『からすのてんぷらやさん』ですね。やっぱりいいなぁ。

    千葉:インパクトがありますよね。

    夢眠:ページをめくって驚いたのは「イワさんが目を怪我している!」でした。作品の冒頭でいきなり火事が起きているって、衝撃的ですよね。加古さんの本は、悩んだりみんなで考えたりしていて、ただのドリームではないところが好きです。他社の作品ではありますが、『からだの本』シリーズを読んだときにも、「子どもにここまで説明してくれるなんて!」という感動がありました。子ども扱いされていないというか。

    あなたのおへそ
    著者:加古里子
    発売日:1981年11月
    発行所:童心社
    価格:1,404円(税込)
    ISBNコード:9784494009213

    千葉:そうなんですよね。加古さんは、大学生の頃から子どもたちに絵本を読んだり、自分で紙芝居を作ったりされていたそうで、そのときに「子どもは面白くないとどこかに行っちゃうし、全然聞いてくれない」というのが身にしみて分かったんだそうです。「むしろ、子どもに色々教えてもらったことの方が多いんだ」とおっしゃっていました。だから加古さんは、子どものことを必ず「子どもさん」って言うんですよ。

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    夢眠:それが読んでいて伝わってくるのか、私には「絵本を通して加古さんを慕っている」という感覚があります。いろんなことを教えてくれたお兄さんというか。お会いしたことはないんですけれど(笑)。それでも、先生であり、お父さん・お母さんであり、それでいて親や先生とは違うことを教えてくれる方で、私にとっては貴重な存在でした。

    千葉:加古さんの本の中では、群衆の一人ひとりにも物語があるんです。ただの「その他大勢」じゃなくって。

    ▼『からすのパンやさん』より

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    夢眠:全員が主役というか。確かに、読みながら「この子なんで怪我してるんだろう」「かわいそう」と思っていました。

    千葉:そういう楽しみ方を残していらっしゃるんです。40年経っても、それは変わらなかったですね。校正のために何度も何度も読みましたが、何度読んでも「面白い!」って思いました。

    夢眠:私がこれを見て「やっぱり加古さんだなぁ」と思ったのが、えびフライの解説です。変かもしれませんが、「ここまで子どもにえびフライのことを教えてくれるのか!」と思ったんです。

    ▼『からすのてんぷらやさん』より

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    夢眠:整頓されたカッコ良さというんでしょうか。手順がきちんとしていて、スマートで賢い印象を受けたんですよ。ポップでかわいいのに、きちんと整理されているところがすごいです。絵本としても素敵だし、魅力的だと思います。

    千葉:もともと理科系の方なので、「賢い子になってほしい」「先人の知恵を子どもたちに教えたい」という思いがあるんです。ものごとは一つひとつだけではなく、幅広く見なくてはいけないというお気持ちがあるんですよ。


    ねむちゃんが加古里子さんの作品を好きな理由と、加古里子さんが絵本を通して伝えたいことが通じ合っていて、ほんのひきだし編集部も「ずっと愛される本には、作者の愛情がたくさん詰まっているんだな」とあらためて感じました。次回は、ねむちゃんと千葉さんがそれぞれの“絵本に対する思い”を話しながら、夢眠書店をどんな本屋さんにするか考えていきます。お楽しみに!

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