• 夢眠書店開店日記 第5話:大好きな絵本ができるまで ―編集者ってどんな仕事?(絵本編)①

    2015年10月24日
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    夢眠書店開店のため、出版業界の色々な方にねむちゃんがお話を伺いにいくこの連載。今回のテーマは、絵本の編集者です。「子どもの頃からずーっと絵本が好きだ」というねむちゃん。その中でも加古里子(かこさとし)さんの本が特に大好きだということで、編集した方へのお礼も兼ねて、偕成社にお邪魔しました。

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    今回の対談相手

    千葉美香 株式会社偕成社 編集部

     PROFILE 
    大学卒業後、偕成社で雑誌の編集部を経て、単行本の子どもの本の編集に携わる。いつまでも3歳の心を忘れずに(!)、日々おもしろいものを探し続ける。

     

    編集者になったのは「子どもが好きだから」

    夢眠ねむ(以下、夢眠)私、すごく本が好きなんです。最初に読んだのはもちろん絵本ですし、絵本が好きだったから本が好きになったと思うんです。本日は、そんな「みんなの原点」になる絵本の話が知りたくてお邪魔しました。よろしくお願いします!

    千葉美香(以下、千葉)こちらこそ、よろしくお願いします。

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    夢眠:実は、一番好きな絵本は『からすのパンやさん』なんです。でも今日お邪魔して、新シリーズの『からすのてんぷらやさん』を初めて知りました。「レモンちゃんが大人になってる!『レモンさん』になってる!」って驚きました。

    からすのパンやさん 2版
    著者:加古里子
    発売日:1973年09月
    発行所:偕成社
    価格:1,080円(税込)
    ISBNコード:9784032060706

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    ※2013年、「からすシリーズ」から40年ぶりの続編が全4冊で刊行されました。

    からすのおかしやさん
    著者:加古里子
    発売日:2013年04月
    発行所:偕成社
    価格:1,188円(税込)
    ISBNコード:9784032062106

    からすのやおやさん
    著者:加古里子
    発売日:2013年04月
    発行所:偕成社
    価格:1,188円(税込)
    ISBNコード:9784032062205

    からすのてんぷらやさん
    著者:加古里子
    発売日:2013年05月
    発行所:偕成社
    価格:1,188円(税込)
    ISBNコード:9784032062304

    からすのそばやさん
    著者:加古里子
    発売日:2013年05月
    発行所:偕成社
    価格:1,188円(税込)
    ISBNコード:9784032062403

    〉特設サイト
    http://www.kaiseisha.co.jp/special/kakosatoshi/karapan.html

    夢眠:今まで取材させていただいた方は皆さん「本が好きで出版業界に入った」とおっしゃっていたのですが、千葉さんも、もともと本が好きでこの世界に入られたんですか?少女時代から伺いたいです!

    千葉:はるか昔ですけれどね(笑)。私も本は好きでしたが、子どもが好きだったので、子どもに関わる仕事がしたいと思っていました。そうすると、保育園の先生か、絵本かなと。絵本を選んだのは、絵本の専門店で働いたことが影響していますね。高校生の頃、学校帰りに毎日そのお店に寄って、「いつかここでアルバイトしたい」と言っていたんです。そうして大学2年生になったとき、やっと雇っていただいて。安い安い時給でね(笑)。

    夢眠:私も本屋さんでアルバイトしていたんですが、本屋さんは時給の安いところが多いですよね……。私は650円くらいでした。

    千葉:私のときは350円くらいでしたよ。

    夢眠:えっ、本当ですか!?

    千葉:そう(笑)。でも「ここにある本は全部読んでいいよ」と言われたのが魅力的だったんです。「そうじゃないと、お客さんに勧められないでしょ」と。ちょうど新しい本の出版が相次いでいたときだったので、すごく面白いと思って、この道に入りました。

     

    絵本は 50+50=100 ではなく 100+100=200

    夢眠:絵本は「読み継がれていくもの」という側面が特に強いじゃないですか。ベストセラーが根強い印象なのですが、そんな環境の中で、新しい絵本はどのように作られているんですか?

    千葉:本を作るときには、「あれが売れているから、似たもの作ろう」と考えて作ることも、「他にはないものを作ろう」と考えて作ることもあります。私は、偕成社では後者の方が多いと思いますね。また、「この方にこういうテーマで書いていただきたい」とお願いする場合もあります。絵本には、作(文章)と絵の2つの要素が必要なんですよ。加古さんは両方やっていらっしゃいますが。

    夢眠:そうですよね。原作があって、それに他の方が絵をつけている絵本も読んだことがあります。

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    千葉:その場合は作者の方にまずお話を書いていただいて、それを一緒に見ながら、どう絵本にしていくか話し合います。絵については、作者の方がイメージを持っていて「この方に描いていただきたい」とおっしゃることもありますし、一緒に探すこともありますよ。

    夢眠:「よき方がいらっしゃったら……」みたいな。最初から希望があるときは分かりやすいと思うのですが、一から探す場合は、他の絵本を見たり展覧会に行ったりするんでしょうか?

    千葉:そうですね。個展も見に行きますし、「こういう絵を描かれる方がいらっしゃるんですよ」と作者の方に提案することもあります。

    夢眠:絵本って、文章も大事ですけれど、絵も重要じゃないですか。「この絵めっちゃ覚えてる!」「こんな世界を実際に見てみたい!」とか、トラウマになるほど怖い絵とか。子どもに響く絵って、どういう風に選ぶんですか?

    千葉:色々なタイプの方がいらっしゃるので、「文章やストーリーをどんなふうに広げてくださるのか」ということを一番に考えています。「絵本一冊を100と捉えて、絵と文章で50ずつ構成する」ではなく、「絵も100、文章も100で、一冊の絵本としては200になる」というイメージですね。

    夢眠:すごーい!確かに、絵本ってそういうイメージがあります。どっちも完璧というか。どちらかが欠けていると、ひとつの絵本としての強度が損なわれてしまうのかもしれないですね。

    千葉:もっと言うと、絵と文章が喧嘩していてもいけないんです。トータルで見たときに、うまく融合していなくてはならない。絵と文章を別の方が担当する場合は、基本的にまず文章があって、絵の方がそれに合わせてラフを描くんです。でも、それを見て作者が文章を直すこともよくあります。だから、「文章をカチッと固めて、次は絵を固める」という作り方になることは、そうそうありません。最後の最後まで文章が動くことも多いですよ。

    夢眠:絵本って言葉が短いですよね。だからこそ、言い回しや文字の一つひとつにも気を遣っていらっしゃるだろうなあと思っていました。

    千葉:文章には書かれていないことが絵に描かれて、作品の世界が広がることもあります。例えば『ともだちや』。これは、キツネが1時間100円で友達になってあげる「ともだちや」を始めるお話です。

    ともだちや 2版
    著者:内田麟太郎 降矢奈々
    発売日:2011年02月
    発行所:偕成社
    価格:1,080円(税込)
    ISBNコード:9784032048902

    〉偕成社『ともだちや』作品ページ
    http://www.kaiseisha.co.jp/index.php?page=shop.product_details&product_id=283&vmcchk=1&option=com_virtuemart&Itemid=9

    夢眠:あはは、憎たらしい顔してるー!

    千葉:このお話でキツネをこういう格好にしたのは、降矢ななさん(『ともだちや』で絵を担当した絵本作家)なんですよ。

    夢眠:ゴーグルに浮き輪にちょうちん…… 変わった格好ですね。

    千葉:そうでしょう。文章には「キツネ」としか書かれていないので、動物らしい四本脚のキツネが描かれたかもしれないですよね。でも降矢ななさんは、「『ともだちや』という商売なので、誰から「友達になって」と言われるか分からない」と考えたんです。どんな場合にも対応できるよう、このスタイルにしたんだそうですよ。

    夢眠:海でも、暗いところでも大丈夫ってことなんですね。そのせいで“寂しいひょうきん者”という感じが出ていて、読んでいて切なくなりました。

    千葉:そういうところも、狙っていらっしゃったかもしれませんね。

     

    絵本の編集者は “郵便やさん” みたい

    夢眠:作家さんが文章を書いて、絵がついて、また文章を変えて……というお話を伺って、文通みたいだと思いました。

    千葉:ああ!そうですね。

    夢眠:文章と絵のやりとりで話が広がっていくって、面白いですよね。

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    千葉:両方の方と一緒に話すことはあるんですが、そうでない場合の方が面白いときもあるんですよ。

    夢眠:編集者さんを介して文通しているなんて、郵便やさんみたいですよね!やりとりがガッチリとハマったときは、それはそれは嬉しいんでしょうねえ。

    千葉:そうですね。うまくいかなくて辛いときもありますが(笑)。

    夢眠:心中お察しします(笑)。


    絵本は、絵だけが素晴らしくても文章だけが完璧でもいけない……。どちらもメインであるということが、「50+50で100を作る」ではなく「100と100で200にする」というお話からも伝わってきました。「子どもが好きだったから絵本作りを仕事にした」という千葉さん。次回は、読者が子どもであるゆえの、絵本作りの難しさ・楽しさをお聞きします。お楽しみに!

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