• 23年間封印された、ある警察官の死――NHKスペシャルのディレクターが語るカンボジアPKOの内実

    2018年06月17日
    知る・学ぶ
    ほんのひきだし編集部
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    1993年に、日本の自衛隊が初めて参加したカンボジアPKO(国連平和維持活動)。その際自衛隊員とともに、文官として75人の警察官も派遣されました。

    しかし任務中に武装勢力の銃撃を受け、1人が死亡、4人が重傷に。さらに警察官の死は23年間封印され、遺族にも知らされなかったといいます。

    停戦合意により戦闘が停止していたはずのカンボジアで、何が起きたのか?

    隊員たちが初めてその内実を語り、第71回文化庁芸術祭優秀賞(テレビ・ドキュメンタリー部門)、第54回ギャラクシー賞などを受賞したNHKスペシャル「ある文民警察官の死~カンボジアPKO 23年目の告白~」。番組のディレクターであり、今年1月にその内容を書籍化した『告白 あるPKO隊員の死・23年目の真実』を上梓した旗手啓介さんに、番組制作の経緯や取材から見えてきたものについてお聞きしました。

    告白
    著者:旗手啓介
    発売日:2018年01月
    発行所:講談社
    価格:1,944円(税込)
    ISBNコード:9784062205191

     

    自衛隊と共に派遣された文民警察官は丸腰

    ――本書は、2016年8月13日に放送されたNHKスペシャル「ある文民警察官の死~カンボジアPKO 23年目の告白~」を基に、未公開の事実を盛り込んで書籍化したものです。日本が初めて本格的に参加したPKOの地・カンボジアで、文民警察官の高田晴行警部補(当時33歳)が殉職した事実について、いまや多くの日本人が忘れてしまっているかもしれません。まず、番組制作のきっかけからお聞かせください。

    カンボジアPKOにおいて文民警察隊長を務めた警察官僚・山﨑裕人氏(警視正、当時40歳)から、長年保管していた報告文書を何人かの手を経て、私たちに託されたことが始まりです。山﨑氏は警察庁を退職したあと、二十数年間秘蔵していた報告文書を何とか世に出せないか、と述べられました。

    文書のページをめくると、「隊長失格」という4文字がまず飛び込んできました。報告文書という体裁でありながらも、部下を全員無事に帰国させられなかった山﨑氏の後悔や嘆きが、生々しく書き綴られていたのです。

    「決して美談とはなりえない話なのに、なぜ公開したいのですか?」という私の問いに対して山﨑氏は「自分たちが仲間を失ってまで行なった活動が歴史に埋もれていることに忸怩たる思いがある」という。「75通り(カンボジアに派遣された文民警察官の人数)のPKOが眠っている」という彼の言葉を聞き、私たちは当時の隊員たちへの取材を始めたのです。

    ――本書で印象深いのは、「カンボジアの停戦は保たれている」とする日本政府の前提と懸け離れた現地の惨状です。1992年10月のPKO文民警察隊派遣当時、カンボジアはどんな状況だったのでしょうか。

    日本からPKOが派遣された時期は91年のパリ和平協定によって内戦が終結した直後で、プノンペン政府、ポル・ポト派、シアヌーク派、ソン・サン派といった勢力が入り乱れていました。ポル・ポト派の影響力が強かった一部の州でゲリラが橋を爆破したり、住民を殺害したりすることがあったものの、危険な地域は限られていた。

    ところが93年に入ると、それまで比較的安定していた北西部でも銃撃事件が相次ぎ、カンボジア全土で状況が緊迫化していきます。

    ――高田警部補が所属する部隊が派遣されたアンピルでも銃声が鳴り響き、想定外の情勢悪化に困惑する隊員の様子が記されています。

    日本政府としては「紛争地域に行くわけではない」という前提であるため、文民警察官は武器を携行しておらず、丸腰の状態。また警部補以下の隊員たちのほとんどは海外勤務の経験がなく、PKOについて特別な訓練を積んでいない状態でした。

    文民警察官は現地で基本的にUNTAC(国連カンボジア暫定統治機構)の指揮の下に行動しますが、日本政府からも部隊の安全確保について命令を受けていた。隊員たちはそのような二重指令による板挟みにも悩まされました。

    (写真:大坊崇)

    ※本記事は、PHP研究所発行の雑誌「Voice」2018年7月号(6月9日(土)発売)に掲載されたインタビュー「著者に聞く 旗手啓介氏の『告白 あるPKO隊員の死・23年目の真実』」を一部抜粋したものです。全文は同誌7月号をご覧ください。

    Voice (ボイス) 2018年 07月号
    著者:
    発売日:2018年06月09日
    発行所:PHP研究所
    価格:780円(税込)
    JANコード:4910080590789

    旗手啓介 はたて・けいすけ(NHKディレクター)
    1979年生まれ。神奈川県出身。2002年、NHK入局。ディレクターとして福岡局、報道局社会番組部などを経て、2015年から大阪局報道部所属。主な作品に、NHKスペシャル「サミュエル・エトー アフリカを背負う男」「巨龍中国 大気汚染 超大国の苦闘」など。本書のもととなった「ある文民警察官の死~カンボジアPKO 23年目の告白~」は文化庁芸術祭賞優秀賞など6つの賞を受賞。




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