• なぜ関西弁!?嫌われがちな“あの生きものたち”が自分をアピールする図鑑が話題

    2018年06月13日
    知る・学ぶ
    日販 ほんのひきだし編集部「日販通信」担当
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    「めっちゃ跳ぶで」
    「パスタも食うたろ」
    「シャンプーしてれば大丈夫や」

    ノリのよさそうな関西弁で生きものたちが自らを紹介する、『家の中のすごい生きもの図鑑』という本をご存知でしょうか?

    〈屋内編〉〈屋外編〉〈居住者編〉に分けて64種を紹介し、嫌われがちな虫たちの意外な特技や、知られざる特徴、そしてこれらが家の中に1つの生態系として存在していることを教えてくれるこの図鑑。「家にこんなに虫がいるなんて耐えられん!」と拒否反応を示す人もいるかもしれませんが、害虫だと思っていたものが実は人間には害がなかった……なんてこともあるそうです。

    この本はどんなきっかけから生まれたのか、編集を担当した「山と溪谷社」の神谷さんにお話を伺いました。

    家の中のすごい生きもの図鑑
    著者:久留飛克明 村林タカノブ
    発売日:2018年03月
    発行所:山と渓谷社
    価格:1,080円(税込)
    ISBNコード:9784635062886

     

    今回取材にご協力いただいた方

    山と溪谷社
    自然図書出版部 部長/デジタル事業推進室 室長
    神谷有二さん

     

    あえて「家の中」にフォーカスした理由

    ――本を開いて最初に登場したのがゴキブリだったので、思わず悲鳴を上げました(笑)。まずは、この本が生まれたきっかけを教えてください。

    弊社の本は図鑑などを中心にベーシックな内容のものが多いのですが、そんななかで「楽しいテイストの生きものの本が作れないか?」ということで考えていました。また社内には私も含めて生きもの好きが多く、日頃から「嫌われがちな虫にも、すごいところがあることを伝えたい」という思いを持っていたんです。それで、生きものの“すごさ”を前面に出した本にしようと思いました。

    弊社が運営しているTwitterアカウント「山と溪谷社いきもの部」(@Yamakei_ikimono)で、私の家の中で撮影したクモの動画を紹介したとき、「スパイダーマンと一緒だ!」と大反響があったこともきっかけです。糸を引いて虫を食べているクモの姿が、スパイダーマンに重なったんですね。クモが怖い子も、「こういうところがすごい!」という切り口からなら興味を持ってもらえるのではないかと考えました。

    ――自然界の想像を超えた生きものではなく、あえて「家の中にいる生きもの」をテーマにしたのはなぜでしょう?

    生きもの好きに限定せず、家にいることの多い主婦の方をはじめとした幅広い読者を想定していました。そう考えた時に、日々身近に接しているゴキブリやハエなどを“すごい”という切り口で紹介したら斬新なのではないかということで、家の中にいる生きものの長所を紹介することにしたんです。

    たとえば“便所コオロギ”とも呼ばれるマダラカマドウマは「脚の力が強くてジャンプ力がすごい!」とか、キイロショウジョウバエは「わずか10日で成虫になって、年間で30世代も生まれる」とか、本当に多種多様な特徴があるんです。そして家の中には、人間の体も含めて、想像している以上にあらゆるところに生きものがいます。そして虫たちがそこにいるのには、人間がどんな生活行動をしているのかということも関係しているんです。

    いい面・悪い面あわせてお互いに関連しあっていて、すべてを「害虫だ!」と駆除するのがいいわけではありません。そういうことも含めて、「家の中に一つの生態系がある」ということは発見ではないかと思いました。「家の中に、こんなにたくさん生きものがいるんだ!」「みんな生きているんだ」ということを感じてくれたら嬉しいですね。

    ▼人間と生きものたちの「相関図」と、「家のどこにいるか」を示した図。

    ――『家の中のすごい生きもの図鑑』は、長所を伝える一方で、生きものの〈実害度〉もわかるつくりになっています。

    実際に人に害を与える生きものもいるので、図鑑として最低限の知識を得られることも必要だと思い、注意しなければならないことを盛り込みました。

    たとえば家の中に現れるイエヒメアリは、実害度2(※実害度3が最大)。「餌を消化せずに持ち運び、仲間に分け与えることができる」というすごい一面がある一方で、女王アリが多く雑食性のため繁殖力が高く、駆除するのが難しいという困った特徴も持っています。そのため「1匹おったら、1万匹の家族がおるかもな」「清潔にしといたらええけど、毒餌っちゅうもんもあるらしいで」と、実害の度合いをマークで示したり、対処法をわかりやすく伝える工夫をしています。

    ▼イエヒメアリ自らが生態や対処法を教えてくれる。「いらんお世話やな」の一言に思わず笑ってしまう。

     

    気になる関西弁の理由は「原稿がそうだったから」!?

    ――続いて、ずっと気になっていた「関西弁」の理由を伺いたいのですが……。

    実は、著者の久留飛克明先生から最初にいただいた原稿が関西弁だったんです(笑)。想定外ではありましたが、コテコテすぎない関西弁で、先生独特の柔らかい雰囲気やおもしろさがあったのでそれを活かすことにしました。

    昆虫科学教育館の館長をつとめていらっしゃる方で、NHKラジオ「夏休み子ども科学電話相談」などでも人気の先生なので、読者からは「文章が先生の声で脳内再生された」なんて声もいただいています。

    ――もう一つ、生きものたちが、デフォルメされたいわゆる“かわいいイラスト”ではない点も気になりました。これにも理由があるんでしょうか?

    幅広い読者を想定していたので、あえて子ども向けにしなかったんです。 また、漫画っぽすぎない、リアルでありつつ柔らかい雰囲気にはこだわりました。

    かわいくはありませんが、興味のある子は読んでくれているようですし、気持ち悪い部分を残した“ほどよくリアル”な虫たちが関西弁で話すので、クスリと笑える内容になっていると思います。

    ――読者からはどんな反応がありましたか?

    「めっちゃおもろいで! たまにホロリもするけどな」「リアルだけど気持ち悪くない匙加減ベストなイラスト」といった声がSNSでも多く見られて、こちらの意図がきちんと読者に伝わっていることを感じています。関西弁のままにしておいて本当によかったですね(笑)。

    笑えるだけでなく必ず発見がある内容ですので、まだ読んでいない方にもぜひ読んでみていただきたいです。

     

    同時期に発売された『いきもの人生相談室』も好評

    ――同時期に発売された『いきもの人生相談室』についても少しお伺いしたいと思います。裏表紙には「貯金できない」「40歳オーバーで独身」「ハゲへの恐怖」「スマホ中毒」「ブラック企業」など胸が苦しくなるような単語が並んでいますが、どんな内容なんでしょうか?

    こちらもくだけた読みものです。「人間の悩みに動物が答える」という構図で、同時に動物のリアルな姿を伝える内容になっています。

    「生活」「家族」「仕事」「恋愛」「学校」という5つの切り口から、それぞれの悩みに対して、動物が自らの生態や特徴をもとに答えてくれています。また巻末には、本編に登場した動物の情報を写真付きで掲載しています。

    ――この中で紹介されているオオカミのエピソードが印象に残りました。一匹でもたくましく生きる強いイメージのオオカミが、「親のスネかじりはいつまで許される?」という相談にこんなにやさしい答えを出しているなんて意外です。

    ――「小学生編」「大学生編」などのように、人生の時期を絞ってみてもおもしろそうです。

    今回は1作目なので、性別や世代を問わない普遍的な悩みを取り上げました。今後は続編として、性別や世代に特化したものも検討したいですね。

    ――どちらも続編を楽しみにしています。本日はありがとうございました!

    家の中のすごい生きもの図鑑
    著者:久留飛克明 村林タカノブ
    発売日:2018年03月
    発行所:山と渓谷社
    価格:1,080円(税込)
    ISBNコード:9784635062886
    いきもの人生相談室
    著者:今泉忠明 小林百合子(編集者) 小幡彩貴
    発売日:2018年03月
    発行所:山と渓谷社
    価格:1,296円(税込)
    ISBNコード:9784635550178

    (取材日:2018年5月2日)




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