• 「スタンド使いはひかれ合う」“変態”という最強の状態になるためのマインドセット:【対談】高橋晋平×吉田尚記(3/3)

    2018年04月09日
    知る・学ぶ
    日販 ほんのひきだし編集部 浅野
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    2月24日(土)に発売された『企画のメモ技(テク)』『没頭力』という2冊の本。

    前者は“売れる企画”を生み出し続けるための仕組みを紹介する一冊、後者は「ワクワクした気分で目覚めて、夜に満ち足りて眠る=上機嫌で過ごす」ための仕組みについて書かれた一冊です。

    一見異なるように見えるこの2冊は、実はたくさんの共通点を持っていました。

    そこで今回は著者のお二人に、お互いの本を読んでもらったうえで対談をセッティング。“共通点”をはじめ、本について感じたことをたっぷり話していただきました。

    対談記事(2/3)を読む:“面白い企画”はマーケティングからは生まれない!?

     

    「スタンド使いはひかれ合う」

    高橋僕、今日ぜひ吉田さんに伝えたい話があって。『没頭力』にも通じる話なんですけど。

    吉田おっ、何でしょう。

    高橋さっき、5年間1日も欠かさずに「にゃんこ大戦争」をやってる話をしたじゃないですか。実はこの間、地元の駅のみどりの窓口で、列に並んでいる時に例によってやっていたんですよ。そしたら、後ろから「すみません、そのトサカが生えてるにゃんこはどこで手に入るんですか」って声をかけられて。それがきっかけで、すごく気の合う友達ができたんです。

    吉田えっ! すごいですね。

    高橋「始めて何か月くらいですか?」「1週間くらいです」「こいつはかなり先ですよ、なにせ僕5年やってますから」って話してたら、「にゃんこ大戦争のこともっと教えてください」「今度会社に遊びに行ってもいいですか?」っていうふうにどんどん発展して、飲みに行って、昔プレイしていた大好きなRPGの話でまた盛り上がって……(笑)。5年間欠かさず「にゃんこ大戦争」をやっていたことが、「友達を見つける」ということにつながったんです。それも、とんでもなく気の合う友達を。没頭することは、自分にとって必要な人間を“釣る”ための行為にもなりうる。そういうことも、『没頭力』を読む動機の一つになるんじゃないかなと思うんです。

    吉田僕もそう思います。『没頭力』に甲本ヒロトさんの話を書いたんですけど、年上の人に対して「うらやましい」とめったに思わない僕が、甲本さんに対しては「すごく楽しそうでうらやましいな」と思っている。それで「どうしたらそんなふうになれるんですか」とストレートに質問してみたんです。そうしたら「自分で楽しいと思うことをずーっとやっていて、ふっと横を見ると、そのとき隣に誰か立ってるの」って。

    高橋かっこいいですねえ。

    吉田かっこいいでしょう。高橋さんは5年プレイして、そんな人に出会った。逆にその人は、1週間で高橋さんに出会ってるわけですよね。

    高橋そうなんです。人生にこういうことって起こるんだなと思って、すごく嬉しかったです。

    吉田そういう瞬間って、明日来るかもしれないし、一生来ないかもしれないけれど、何もやっていないことには絶対に訪れない。「すぐに訪れなくてもやめない」という条件に耐えうるのは、やっぱり“没頭すること”なんです。「友達を作るために1週間頑張りましたが、友達が1人もできませんでした」だと辛いでしょう。「恋人を作るのに必死になって、興味もないのにアウトドア用の車を買って、バーベキューとかやっちゃう」なんてのも虚しい。でも1週間没頭できるものを毎日やって何も起こらなかったとして、そのせいで「幸せじゃなくなってしまう」なんてことはないですよね。本当にやりたいことがルービックキューブだとしたら、ルービックキューブをやらないことには、同じようにルービックキューブを楽しんでいる人には出会わないんです。「スタンド使いはひかれ合う」んですよ。

    高橋僕は“儲かる商品”を作るのが仕事ですけど、結局その近道は「今の自分がやりたいものを作って、それに共感する人を集めること」なんです。集まってきた人は自分にとって大事な人だし、そこから始まらないと広がりもない。僕は器用じゃないので、何万もの人がほしいものを考えることはできないし、考えても無駄だと思ってます。

     

    “没頭”できる企画でなければ、作っても売れない

    吉田没頭って「フローに入る」ともいいますけど、「『一番フローに入っている人』と『フローに入っていない人』ってどんな人だろう?」って考えたんですよね。フローに入っている人は、たとえばスポーツ選手や俳優さんがそうだと思います。パフォーマンスをしている人は基本的にフローに入っているから、引き込まれて、ついていっちゃう。逆にフローに入っていない役者さんの演技なんて、こっちが見てられないですよね。

    高橋これ、言うのちょっと勇気がいるんですけど、「オープンイノベーションのためのミーティング」みたいなものに“何かあるかも”と期待して参加してる人たちって、フローに入ってないですよね。没頭しているんだとしたら、やること・やりたいことはもう始まってしまっているわけで。

    吉田作業でしかフローは訪れないので、まさに「気付いたらそうなっている」というのが正しいです。高橋さんは仕事の上で、どういう時に「フローに入っている」状態になりますか?

    高橋僕は身も心も金銭面も弱いので、物を作るってすごく勇気がいるんです。本当はすごく慎重派ですしね。でも「これは超面白い!」となれば、そこからはロットで数百個、仕入れ金額が数十万円するとしても、もう見えなくなっている。たぶんつまらない企画だと、「これ仕入れるのに何十万円もするのか」「やべえな」って引いちゃうと思うんです。「仕入れるしかない」「スケジュールしか見えていない」みたいな感じになったら、その時点でフローに入っていて、そうなればあとはもう大丈夫。そういうことが、自分でお金を払って物を作るようになって、わかりました。

    吉田関係ねえ! 突っ込むぜ! みたいな。

    高橋それに、情熱をかけられないのなら、物なんて作っても売れないですよ。特に今の時代って、大きなお店が売り場に並べてくれたところで売れない。プレゼンして「この商品を売ろう」と思ってもらって、バイヤーさんが仲間にならないとだめなんです。ただ、その人たちも手厳しい。そこに立ち向かっていくためには、それに全力を注げるくらいのネタじゃなければいけないんです。それを没頭力と読んでいいかはわからないですけど、「バイヤーが怖い」とか「プレゼンが通らなかったらどうしよう」とか、そんなこと思いもしないくらいの企画。それは自分に「それをほしい」という強い気持ちがないと、絶対に成立しないんです。

    吉田なるほど。

    高橋マインドセットの話でいうと、僕は『企画のメモ技』で「ボツネタを楽しもう」ということも言っています。“自分の欲”から発想していく方法にチェンジしたとしても、ボツネタ自体は出るんですよ。というか、ほとんどはボツネタ。“売れる企画”ばかりがポンポン思いつくわけではない。でも、それを楽しめたら最高じゃないですか。会社員時代の僕みたいに「ボツネタしか出てこなくて辛い」「ボツ企画しか出てこないから才能がない」なんて落ち込んでも辛いだけ。「こんなくだらないの思いついちゃった」って笑っちゃうようなものが出てくるのを楽しもうよと。

    吉田やっぱり高橋さん、変わってますよ(笑)。

    高橋そういうのをひたすら書き出すということについては超得意で、スピードにも自信があります(笑)。その先に“売れる企画”が生まれるのがわかっているというのもありますね。100個くらいネタを出すと、1個くらいはいいのがあるんですよ。100個中1個って、わりといい確率ですけど。1個中1個を目指しちゃうから何も思いつかないんです。出たところで当たらないし。適当でもいいからとりあえず出して「この中で1番は何だ?」って考えたほうが効率がいいし、それが楽しめるようになったら無敵です。

     

    肝心なのは“開き直り”


    高橋不安まみれの緊張状態にあったものが、いろいろ考えていく中で「あれ? これ、いけるぞ?」と気付いて、スイッチが入ったらそれしか見えなくなる。企画を作っていくときの心理状態ってだいたいこういうステップになっているんですけど、スイッチが入るとものすごくリラックスした状態になるんです。この「スイッチが入っている状態」が“没頭”ですよね。

    吉田そうですね。図にしてみると、必ず最初に“不安”があって、ここで“開き直り”が起きる。それからじゃないと没頭はしないんですよ。順番が逆になることはありえない。「開き直ってから不安になる」って、経験ないでしょう? 専門的な話になりますが、「不安」は交感神経が優位になっている状態で、「没頭」は交感神経と副交感神経が同時に働いている状態。「交感神経が優位になっている状態」から「副交感神経のスイッチを入れること」はできるけれど、その逆はできないんですって。ジェットコースターにたとえるとよくわかるんですけど、ジェットコースターって、怖いじゃないですか。でも椅子に固定されたら、望むと望まざるとにかかわらず走り出しちゃう。開き直って、それを受け入れるしかないですよね。そして、走り出すともう何も考えられなくなって、降りるときはほとんどの人が笑っている。開き直れないと、怖いだけで全然楽しくないわけですけど。

    高橋“開き直り”というワードがまさに当てはまるエピソードが2つあるんですけど、僕、ある時にボードゲームを作って、売れるかどうかわからなかったので最小ロットで仕入れたんです。確か数百個だったかな。その商品は商談もまとまらなかったし、売れ行きも全然よくなかった。一方その後に作った「民芸スタジアム」では、「これはいける」と思って5倍くらいの量を仕入れました。これって僕にとっては未知の領域で、今思うと完全に開き直りです。とにかく量がすごくて、ひと部屋在庫で埋まっちゃうくらいだったんですけど、それでも「やばい、大丈夫かな」とは思わなかった。もう「ガンガン売るぞ」という勢いがついてしまっていて、色んな人に全力ですすめたし、実際に結構なスピードで売れたんですよ。あのときの感覚は、没頭に近いかもしれない。結果として百個単位で仕入れてくれるお店が現れたり、地元の秋田県でふるさと納税の返礼品に採択されたりしました。

    吉田それ、完全に開き直っている状態ですね。

    高橋ただ、「没頭した結果を求めてはいけない」というのには当てはまらないかもしれないですけどね。

    吉田「100万円で仕入れた商品が10万円分しか売れなかったけど、楽しかったらいいや」みたいな(笑)。笑い話を買うにしては金額が高すぎるかもしれませんが、少なくともスッキリはしているでしょうね。このステップを踏んでいないと、“なくなってしまった可能性”をあれこれ考えることになってしまいますから。

    高橋もう一つは「∞プチプチ」を作ったときです。前著『プレゼンをキメる30秒のつくり方』で書いたんですが、当時、上司がすごく怖い人だったんですよ。企画を出してもたいていボツにされていて……。それが「∞プチプチ」を企画したとき、初めて逆らう行動に出ました。

    吉田ってことは「∞プチプチ」は、最初からすんなり通っていた企画ではないってことですか!?

    高橋「これを企画会議に出させるわけにはいかない」って言われました。でも絶対そこで諦めたくなかったので、「引っ込められない」「なんとか出させてほしい」と粘り強く交渉したんです。確かに失敗したら迷惑はかけるかもしれないけれど、プレゼンするチャンスくらいくれてもいいじゃないかと。これってもはや作戦でも何でもないですよね(笑)。『企画のメモ技』には人を巻き込むための作戦も書きましたけれど、あのときはそれよりも何よりも“開き直っている”という状態だった。でもその時点で、勝負は決まっていたように思います。

    ――人生を機嫌よく過ごすこと、情熱を傾けられるような仕事をすること、いずれも「開き直り」がカギであるというお話になりました。ただやっぱり、開き直るということは今の状態から何かしら必ず変わるわけで、少なからずエネルギーが必要ですよね。『没頭力』に登場する言葉を借りると、「不安と正面から向き合う」ということになるんですが。

    吉田そうですね、開き直りが一番大切です。没頭するステップのなかで、自分で何とかできるのは「開き直り」だけなんですよ。〈不安な状態〉には放っておけばなるし、没頭は訪れるものですから。『企画のメモ技』に関しても、最終的に「これはいける!」という思いを貫き通せる企画にできればいいわけじゃないですか。商品企画の本ですけど、「自分の欲のツボを押さえる」という根本にある考え方は、趣味にも通じることです。「没頭」のメカニズムを解説したのが『没頭力』だとすれば、『企画のメモ技』は、「開き直りのためのハウツー」をものすごく丁寧に、細かくステップに分けてフレーム化してくれている本だと思います。

    ――『企画のメモ技』『没頭力』の2冊はおそらく多くの売り場でビジネス書に分類されると思うんですが、自己啓発のためのビジネス書って、理解はできても「まずはそのとおりに実践してみる」「実践し続ける」というところが壁になってる気がするんです。それはきっと「開き直れていない」ってことなんでしょうね。この2冊は内容がすごくクロスオーバーしているので、仕事に悩むビジネスマンの方にはぜひ、併読することをおすすめしたいです。

    吉田どちらも「不安がある」「さてどうする?」っていうときのために必要な、“開き直り”の種類を扱っている本なんですよね。マインドフルネスやアドラー心理学もそうだと思います。

    高橋会社員だと、会社という組織の一員であるがゆえに、そもそも「これがやりたい」ということを口に出しづらい場合も多いですよね。あとは、どうしても大義名分が必要になるケースがある。誰かと一緒にやるにしても予算を割いてもらうにしても、「うちの会社でやる意味はあるのか」「利益は出るのか」ということをまず考えてしまいがちです。それももちろん大事だけれど、そればっかり考えていると「やりたい」という気持ちがそれに負けてしまいます。

    ――組織で取り組む仕事だと、「共感する人間が集まっている」という状態ではない場合も多いですからね。

    高橋それが定着すると、やっぱり鬱屈としちゃいますよね。そんなときは忍者からのアドバイスじゃないですけど、逃げるというか、いったん本業とは関係のないところで開き直っていくことがすごく重要だと思います。自分の好きなものを好きでい続ける、楽しみ続けることが、最終的に本業に返ってくるということは必ずあります。それが出会いなのか、面白い企画なのかはわかりませんけれどね。僕自身、起業したのは倒れたのが一因ですから。ひ弱だとは思っていたけど、ここまで本当に弱いと思っていなかった。倒れた時に「人生一度きりだ」って気づけたから今こうなっているわけで、僕の心身が強靭だったら会社員を続けていたと思います。僕の場合は「神様に開き直らせてもらったんだな」という思いもあります。

    吉田開き直りでいうと、“変態”って開き直ってるじゃないですか。

    高橋変態というのは、性倒錯という意味で?

    吉田それ以外も含めてです。たとえば味覚がものすごく独特な人っていますよね。普通の人は食べられないようなものを「おいしい」ってたくさん食べる人とか。最近気づいたんですけど、いわゆる“変態”の人でうじうじ悩んでいる人って見たことない気がするんですよね。むしろみんな生き生きしているというか……。

    高橋確かに、そんな気がしますね。

    吉田アダルトビデオには「どんなものでも300本は売れる」という通説があるんだそうが、ご存知ですか?

    高橋いえ、知らないです。“どんなものでも”売れるんですか。

    吉田たとえば女性が出てきて、脱がないし喋りもしない。身じろぎもせずにただ座っているだけという内容でも、それをいいと言う人が必ずいる。つまりすべてのアダルトビデオには価値があって、人の欲にさまざまな形があるからそれが成立しているんです。どんな欲を持っていてもそれは否定されることではないし、逆にいうとみんなどこかしら“変態”なはずなんですよ。

    高橋なるほど。

    吉田『企画のメモ技』にも通じることですが、一般的には正解を導けるはずのマーケティングの手法で“売れる企画”を考えても、売れなかったり、そもそも企画段階で終わってしまったりする。アダルトビデオにしたって、ランキング第1位のタイトルが必ず第2位より興奮するなんていう保証はないわけでしょう。「常識的に考えてこうだ」っていう考え方に意味はないんです。そもそも常識自体が、自分のためではなくて他人のためにあるものですからね。

    高橋僕も、それに似たことを先輩に言われたことがあります。自分の子どもにも「できるだけ逆に行ったほうがいいぞ」「それを嫌がっちゃいけないぞ」って言ってますね。昔は“皆と同じものを持ってるのがいい”みたいな風潮がありましたけど、それはダサいんだぞって。

    吉田「なるべく個性のある子を育てましょう」「個性を伸ばしましょう」なんていいますけど、極論を言うと「マイノリティを育てましょう」ってことでいいんじゃないかと思います。だからもし自分に“変態のかけら”みたいなものを見つけたら、臆せずそっちに振り切っちゃったほうが幸せになれる。仕事がうまくいかない人も、「なんかつまらない」と絶望している人も、まず自分自身を“怪物”だと思って、できるだけ機嫌よく毎日を過ごせるようになるといいなと思います。

    (了)


    高橋晋平:『企画のメモ技』著者。1979年秋田県生まれ。株式会社ウサギ代表取締役。2004年に株式会社バンダイに入社し、大ヒット商品となった「∞プチプチ」などバラエティ玩具の企画開発・マーケティングに約10年間携わる。2013年にはTEDxTokyoに登壇し、アイデア発想に関するスピーチが世界中に発信された。2014年より現職。さまざまな企業の企画ブレーンや、チームを育成しつつ新商品を立ち上げる「企画チームビルディング」にも携わる。

    吉田尚記:『没頭力』著者。1975年東京都生まれ、慶應義塾大学文学部卒業。ニッポン放送アナウンサー。第49回(2012年)ギャラクシー賞DJパーソナリティ賞受賞。マンガ、アニメ、アイドル、落語、デジタルガジェットなど多彩なジャンルに精通しており、「ミュ~コミ+プラス」「エージェントHaZAP」などでパーソナリティを務めるかたわら、年間100本におよぶアニメやアイドルのイベントの司会も担当している。

    一生仕事で困らない企画のメモ技
    著者:高橋晋平
    発売日:2018年02月
    発行所:あさ出版
    価格:1,512円(税込)
    ISBNコード:9784866670300
    没頭力
    著者:吉田尚記
    発売日:2018年03月
    発行所:太田出版
    価格:1,200円(税込)
    ISBNコード:9784778315993




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