• 夢眠書店開店日記 第3話:編集者ってどんな仕事?(文芸編)③

    2015年09月26日
    知る・学ぶ
    アイドルBOOKS
    Pocket

    大好きな本をもっとたくさんの人に読んでもらうため、「夢眠書店」を開店することになったねむちゃん。「本ってどういうもの?(第1話)」「本屋さんってどんな仕事?(第2話)」と調べたあとは、やっぱり作るところが知りたい!……ということで、第3話「編集者ってどんな仕事?(文芸編)」では、又吉直樹『火花』を編集した文藝春秋の浅井さんにお話を伺っています。

    〉これまでのお話を見る

    今回の対談相手

    15.01浅井茉莉子 株式会社文藝春秋「文學界」編集部

     PROFILE 
    文藝春秋入社後「週刊文春」「別冊文藝春秋」を経て、現在「文學界」編集部。

     

    伝わるように「読む人との段差」をなくすのが編集者の仕事

    夢眠ねむ(以下、夢眠)編集のお仕事に話を戻しますね(前のお話を読んでいない方はこちら)。作家さんから渡された原稿は、どのような視点で編集しているんですか?

    浅井茉莉子(以下、浅井):編集者はよく「最初の読者」と言われます。作家さんが書いたものを最初に読む人間なので、読んでどう受け取ったかについて、率直な気持ちを言うようにしています。

    夢眠:一緒に作り上げたことをいったん忘れて、「読者」として読むんですね。

    浅井:編集者は「作家の伴走者」とも言われます。分かりやすく言うと、「話し相手」なのかもしれません。作品について「ここが分かりにくいです」「どういう考えで書いたんですか?」という風に色々と伺って、「それならこういう表現の方がいいです」とお伝えする感じですかね。

    22

    夢眠:作家さんも本をよく読んでいらっしゃると思うんですが、編集さんって読むのが仕事だから、色んな視点が必要ですよね。

    浅井:本って本質的にはどう読んでも自由なので、編集者も一人ひとり読み方が違うし、読者の方もそれぞれ違うとは思っています。ただ、その中で作家さんの書きたいことや伝えたいことが受け手にきちんと伝わるようにするのが編集の仕事です。言ってみれば「作家と読者の間にある段差をなくす」ということですね。

    夢眠:私もライブの時には、ステージの上にいたとしても、ファンの皆さんと目線を同じにすることを意識しています。私にもヲタ的な視点があって、どちらの気持ちも分かるので、そうしないと伝わらないと思っているんです。編集者も同じなんだろうなと思いました。読者であり作家であり、……通訳みたいな仕事ですよね。バイリンガルというわけではないけれど、どっちもできなくちゃいけない。バランスを取るって、柔軟な頭じゃないとできないことですよね。

     

    小説家でない人が小説を書くということ

    夢眠:アイドルという職業柄、「出版関係のお仕事をすると中途半端だと思われて嫌がられるんじゃないか?」「そう思われないようにちゃんとやらなきゃ!」と思うんですけれど、芸人さんやアイドルが文章を書くことに対してはウェルカムですか?

    浅井:とても素敵なことだと思います!小説を書く可能性って、あらゆる人にあると思うんです。又吉さんなら芸人のこと、夢眠さんはアイドルのこと。皆さんそれぞれよく考えていらっしゃると思うので。

    夢眠:そうですね、よく考えます。

    浅井:それを「小説」というところに落とし込むのは、面白いことだと思いますよ。あと、「1人が書いている」というのも小説のすごいところだと思っています。私は映画も大好きですが、映画はたくさんの人の手で作り上げている。小説は、頭の中を自分の力で書ききれるのがいいですよね。

    夢眠:実は私、小説を書いたことがあるんです。編集さんに「書いてみたら?」って言われて。でもメモ帳のアプリを起動して一行書いて、続きが出てこなかった(笑)。

    浅井:又吉さんもすごく本が好きだから、似たことがあったみたいですよ。「書こう」と思って壮大なストーリーを考えたのに、「あれ?原稿用紙10枚くらいで全部終わってしまった」と。そこから10年以上たって『火花』を書いたので、書くのにはタイミングがあるのかもしれませんね。

    夢眠:えー、じゃあこっそり書いて新人賞に応募します(笑)。

    浅井:その前に見せてください(笑)!

    夢眠:一行目とかやばいですよ。「アルミホイルが眩しい」っていうの。なんだこれ……。

    浅井:いいじゃないですか!

     

    夢眠書店に求めること

    夢眠:夢眠書店を開くにあたって対談相手の皆さんにおすすめの本を伺っているんですが、浅井さんの場合はやっぱり『火花』ですか?

    浅井:そうですね。まずはやっぱり『火花』ですね。

    夢眠:じゃあ、私がPOPを書く必要はないですねー。

    浅井:でも意外と『火花』のPOPってないんですよ。又吉さんのお顔だけで目を引くからかもしれませんが……。あと読んでいただきたいのが、島本理生さんの『夏の裁断』です。こちらも同じタイミングで芥川賞候補になったんですよ。結果は残念でしたけれど、とても素晴らしい作品だと思います。

    夏の裁断
    著者:島本理生
    発売日:2015年08月
    発行所:文藝春秋
    価格:1,188円(税込)
    ISBNコード:9784163903248

    浅井:『夏の裁断』は、女性作家と担当の男性編集者の話なんですけれど……。

    夢眠:おお!この企画にぴったりじゃないですか。

    浅井:でもあまり参考にならないというか……(笑)。

    夢眠:「悪魔のような」って書いてある!

    浅井:恋愛感情ではないのに相手を籠絡するというか、従わせるという感じの男性編集者がいて、その関係に女性作家が翻弄されるという話です。

    夢眠:「編集者ってこんなふうなんだ」と思われると違うってことですね(笑)。この流れで紹介すると誤解されるけれど、フィクションだと分かった上で読むと面白い、みたいな?いいですね!ゾクゾクする。

    浅井:そうです、そうです。タイトルの『裁断』っていうのは……「自炊」って分かります?

    夢眠:本を裁断してデータにするやつですね。

    浅井:そうです。主人公の作家が自宅の本を「自炊」することになり、それをしながら過去の編集者との関係が語らる……というストーリー。恋愛じゃないのに人に依存してしまう・依存させられてしまう、怖い話なんです。

    夢眠:編集さんと作家の関係って、「気持ちを預けて二人三脚」みたいなところがありますもんね。人間として慕うというか。

    浅井:恋愛だと「好きか嫌いか」なので分かりやすいんですけれどね。作家と編集者は関係性が特殊です。

    夢眠:一歩間違うと危ない感じがします。だから最初に担当している作家さんが40人いる(参照:第3話「編集者ってどんな仕事?」文芸編―①)って聞いたとき、「40人全員の気持ちなんて考えられない!」って思ったんです。きっと私は小学校の先生も無理なんだろうなあ。大学の大きな教室で、3人くらいだけに目をかける……っていう方が向いてる気がします。でも浅井さんは、そんな関係を40人と築いていらっしゃるんですよね?

    23

    浅井:身も蓋もないんですが、あくまでも書いてるのは作家さんで、私は背中をちょっと支えるだけです。道案内みたいなことができればいいなと思ってやってます。

    夢眠:わたしも編集さんほしい!

    浅井:文章に関することなら!

    夢眠:じゃあ飲みに行きましょう!

    浅井:ぜひぜひ。作家さんとよくご飯に行くのですが、純粋に楽しいので(笑)。

    夢眠:作家さんとのご飯って、めっちゃ楽しそう!私、それを傍から見たいです!私はどっちかというと表現したい人なので、編集さんのようにアシストはできないと思うんです。だから、そっと見ていたいな(笑)。

    浅井:ぜひ。女性作家さんたちとよく飲んでいますので、いらっしゃってください!

    夢眠:楽しそう。その取材に行きたいなー!

    夏の裁断
    著者:島本理生
    発売日:2015年08月
    発行所:文藝春秋
    価格:1,188円(税込)
    ISBNコード:9784163903248

    ▼各話最終ターム恒例(?)のねむさん直筆POPです!
    夏の裁断

    ―浅井さんはアイドルがお好きだと聞いたんですが、夢眠書店にはどんな企画があったらいいと思いますか?

    夢眠:アイドルはいつ頃からお好きなんですか?

    浅井:入社した頃なんで、8年くらい前からですね。

    夢眠:ちょうど私が秋葉原に来たくらいですね。メイド全盛期。

    浅井:そんな時期だったのでAKBにハマって、特にあっちゃんが好きでした。でんぱ組.incさんも好きですよ!

    夢眠:先見の明を持った方に好きになってもらえて嬉しい!

    夢眠:夢眠書店は、本が好きな人には「いい品揃えじゃん!」って言っていただきたいし、本をあまり読んでこなかった人には「こんなのあったんだ」って知ってもらって、本屋さんに行くきっかけになればと思っているんです。

    浅井:本を読んでいる時の自分の中でのテーマ曲とか、状況が分かるといいかもしれません。

    夢眠:私、ミヒャエル・エンデの『モモ』がすごく好きなんですが、なぜかDragon Ashの「陽はまたのぼりくりかえす」と、とあるお香の3つがセットになっていて。ぶわっと記憶が戻るんです。本を読んでいた時の匂いや環境って重要な要素ですよね。

    モモ
    著者:ミヒャエル・エンデ 大島かおり
    発売日:1998年06月
    発行所:岩波書店
    価格:1,836円(税込)
    ISBNコード:9784001106879

    The Best of Dragon Ash with Changes vol.1
    アーティスト:Dragon Ash
    発売日:2007年09月05日
    発行所: ビクターエンタテインメント(株)
    価格:2,880円(税込)
    JANコード:4988002532421

    浅井:どこで読んでるかって気になるし、そういうのは大事ですよね。

    夢眠:「病室で読んだこの本が忘れられない」とか。感想文はハードルが高いけれど、「読んだ本とその時に聞いていた音楽と、状況を教えてください」と聞けば、いろんな人からコメントをもらえそうですよね。「大変失礼ながら、この本はトイレで読破しました」とか(笑)。ありますよね?私、ショートショートはトイレで読みたいんです。

    26

    浅井:(トイレに)置いていらっしゃるんですか?

    夢眠:置いておいて、一節読んで、……みたいな。

    浅井:そういう“読み方”を薦めるのもいいと思います!

     感想 
    担任の先生であり、伴走者であり、最初の読者であり……。作者と読者を繋いでくれる通訳のような、編集の仕事。なんてたくさんの役割をこなしているんだろう!どんなに才能があっても、埋もれていたら誰にも見られることはない……。それを見つけて、引っ張って、二人三脚でカタチにする。表立たない仕事だけれど、編集者なくして本はできないのです。あ~ぁ、かっこいい!やっぱりホテルにカンヅメしながら、編集者さんにやいやい言われるのは夢ですね(笑)。

    17.01▲文藝春秋社の創設者でもある菊池寛先生の銅像と


    編集について学んで、作家と読者を繋ぐ仕事の奥深さを知った夢眠ねむ。本と読者を繋ぐという意味では、「夢眠書店」も目指すものは同じですね。浅井さんとの対談は今回で終わり。次回は、ねむちゃんが「夢眠書店開店日記」を始めるきっかけになった方にお会いします。お楽しみに!

    次の「夢眠書店開店日記」を読む ▶

    タグ
    Pocket

  • GoogleAd:SP記事下




  • GoogleAd:007



  • 関連記事

    ページの先頭に戻る