• 夢眠書店開店日記 第3話:編集者ってどんな仕事?(文芸編)②

    2015年09月19日
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    大好きな本をもっとたくさんの人に読んでもらうため、「夢眠書店」を開店することになったねむちゃん。「本ってどういうもの?(第1話)」「本屋さんってどんな仕事?(第2話)」と調べたあとは、やっぱり作るところが知りたい!……ということで、第3話「編集者ってどんな仕事?(文芸編)」では、又吉直樹『火花』を編集した文藝春秋の浅井さんにお話を伺います。

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    今回の対談相手

    15.01浅井茉莉子 株式会社文藝春秋「文學界」編集部

     PROFILE 
    文藝春秋入社後「週刊文春」「別冊文藝春秋」を経て、現在「文學界」編集部。

     

    「持ち込み」って文芸の世界にもあるの?

    夢眠ねむ(以下、夢眠)「新人作家が描いた漫画を持ち込みする」っていうのは聞いたことがあるんですけれど、文芸の世界にも「持ち込み制度」はあるんですか?

    浅井茉莉子(以下、浅井):基本的には、文藝春秋には持ち込みはないです。「作家になりたい方は、新人賞に応募してください」という形式にしています。

    夢眠:えー、そうなんですか!ちなみに、「へえ、この人作家になりたかったんだ」って思った方はいますか?「夢眠ねむ」で投稿されていて「あれ?」と思ったら、実際に夢眠ねむ本人だった!ということがあったりするんでしょうか。……って、何の話してるんだろ(笑)。

    浅井:あると思います(笑)。学生さんはもちろん、お医者さんや、いろんな職業の方が応募されますよ。

    夢眠:そこで賞を獲った方や見出された方が、その後作家として原稿を依頼されるんですか?

    浅井:そうですね。賞を獲ったら、雑誌に掲載されてデビューするのが一般的です。

    ―新人賞って、どれくらい応募があるんですか? その中から掲載されるのはいくつなんでしょう。

    浅井:今だと1,700~1,800くらいの応募があります。その中で掲載されるのはだいたい1本ですね。

    夢眠:すごい倍率!!

    浅井:でも、「書き続けること」がそれ以上に難しいんです。最初の1本から2作目、3作目……といかに書き続けるか、一緒に頑張りたいところです。

    夢眠:新人賞への応募以外に、新人を発掘する方法はあるんですか?

    浅井:ひとつは、他社の雑誌に掲載された方へのアプローチです。純文学の世界では「文芸誌」と呼ばれる雑誌があります。各新人賞の結果を見て、「この人に書いていただきたい」と思ったら、エッセイのお願いをします。

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    【主な文芸誌】
    『文學界』(文藝春秋)
    『群像』(講談社)
    『新潮』(新潮社)
    『すばる』(集英社)
    『文藝』(河出書房新社)

    夢眠:まずはエッセイなんですね!人柄が出るからですか?

    浅井:それもあるんですけれど、例えば「文學界」でデビューした場合、その後の2~3作は「文學界」で書くのが慣例なんですよ。なので、他社でデビューした方にすぐに小説をお願いするのは難しいんです。「それでもこの方から何か原稿をいただきたい!」というときに、エッセイをお願いするんです。

     

    又吉さんに原稿依頼したときってどうだったの?

    浅井:又吉さんの場合は、「又吉さんっていう本好きの芸人さんがいるんだなー」と思っていたところに、偶然「文学フリマ」というイベントでお会いしたんです。エッセイが面白かったので、小説を書いていただきたいと思って手紙を渡しました。

    夢眠:古風で素敵!「小説書きませんか」って書いたんですか?

    浅井:そうですね。それでお会いして、「書いてみましょう」と。

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    夢眠:そこから小説の内容について詰めていったんですか?

    浅井:小説家としてデビューされている方だとすぐに「じゃあ書きましょう」となるんですけれど、又吉さんの場合は書くことを決意されるまでにも時間がかかりました。初めてお会いしたのが2011年だったので、『火花』は4年かけてできたことになりますね。

    夢眠:じゃあ、満を持しての出版だったんですね。個人差があると思うんですけれど、「書きましょう!」となってから本にするまで、どれくらいの時間がかかるんですか?

    浅井:作家さんによってペースが違って、100ページを1年くらいかけて書く方も、1か月半くらいで書く方もいらっしゃいますよ。おおまかな締め切りを共有して、それに向けて書いていただくのがスタンダードですね。

    夢眠:作家さんそれぞれの「向いている方法」を提案するんですね。そういうところも担任の先生みたい。

     

    芥川賞ってどんな賞?

    夢眠:改めまして、芥川賞受賞おめでとうございます!そもそもの話なんですけれど、芥川賞の選考過程ってどうなっているんですか?

    浅井:芥川賞は、文芸誌に掲載されたものが対象になります。「火花」は「文學界」に掲載されました。選考過程としては、まず対象作品の中から候補作を絞る選考会があります。選考委員の先生方には、その候補作の中から受賞作を決定していただきます。

    夢眠:候補作は出版社の方が決めているんですか?

    浅井:芥川賞と直木賞については、文学振興会というところが決めています。

    ※日本文学振興会は、「文芸の向上顕揚を計ることを目的」として、芥川龍之介賞、直木三十五賞、大宅壮一ノンフィクション賞、松本清張賞、菊池寛賞の選考と授賞を行う財団法人です。

    夢眠:作家さんはもちろんドキドキすると思うんですけれど、案外編集さんの方がドキドキするんじゃないでしょうか?

    浅井:本当に、めちゃくちゃ緊張しました!

    夢眠:作家さんには「大丈夫ですよ!」って言いながら、内心ドキドキしていたんですね!ちなみに受賞の連絡って、電話で来るんですか?

    浅井:芥川賞の場合は、作家さんに直接電話がかかります。

    夢眠:じゃあ編集さんには、作家さんから「取りました!」っていう連絡がくるんですか?

    浅井:「取りました!」とか「残念でした」っていう電話をいただきます。

    夢眠:受験みたいですね。

    浅井:本当にそうです。

    夢眠:文学賞は色々ありますけれど、芥川賞ってとりわけ話題になりますよね。本を読まない方でも「芥川賞を受賞したなら読んでみようかな」って漠然と思うじゃないですか。どうしてなんでしょうね?いまさらかもしれませんが、芥川賞のすごさというか、特徴を知りたいです。

    浅井:簡単に言うと、芥川賞は「純文学の新人賞」です。今回で第153回だったんですけれど、1年に2回あるので、77年続いているということになります。まずそれがすごいことかもしれませんね。

    夢眠:「文學界」の新人賞だけで倍率1700倍ですもんね。そこから対象の雑誌が増えると……とんでもない倍率だ!「この方に書いてほしい」と思った作家さんと4年かけて作ったものが受賞して、「うわぁ!やってやったぜ!!!」って気分になりましたか?

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    浅井:「こんなことが現実に起こるんだな」って思いました。原稿をいただいた作品が芥川賞を獲ったのも初めてだったので。芥川賞は、その作家さんが一生に一度しか受賞しないものなので、そこに関われるのはとても嬉しいことです。

    夢眠:浅井さん、もっと調子に乗ってもいいと思うのに、すごく淡々としていますよね。よくできた人間だな……(笑)。自分が書いていなくても、私なら調子に乗っちゃう(笑)。


    又吉直樹さんが芥川賞作家になるまでの道のりを伺って、普段覗けない文芸の世界を垣間見たねむちゃん。「倍率1700倍から作品が選ばれても、それ以降も書き続けることが難しい」というお話には、ほんのひきだし編集部も思わず襟を正しました。次回は「編集という仕事の意義」を教えていただきながら、夢眠書店で何をしたいか考えていきます。お楽しみに!

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