• アイヌ語を話す人はたった5人!?『なくなりそうな世界のことば』が話題

    2017年10月17日
    知る・学ぶ
    日販 ほんのひきだし編集部「日販通信」担当
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    大ヒット『翻訳できない世界のことば』に続く、“ことば”がテーマのシリーズ第5作

    みなさんは、いま世界でどれくらいの言語が話されているかご存じでしょうか?

    現在世界には、なんと約7,000もの言語が存在しているのだそうです!! 日本が“国”として承認しているのは196か国だそうなので、単純に割ってみると1つの国につき35の言語が存在していることになりますね。

    7,000ある言語の内容は、英語のように国をまたいで多くの人が使用しているものから、ごく限られた地域で少人数に使用されているものまでさまざま。その中には、話者の減少によって消滅が危ぶまれているものもあるそうです。

    2017年8月に発売された『なくなりそうな世界のことば』は、そんな“少数言語”を集めて紹介した本。各言語の研究者たちがそれぞれの視点から選んだ言葉が、美しく味わい深いイラストとともに解説されています。

    なくなりそうな世界のことば
    著者:吉岡乾 西淑
    発売日:2017年08月
    発行所:創元社(大阪)
    価格:1,728円(税込)
    ISBNコード:9784422701080

    本作は、10万部突破の大ヒットとなった『翻訳できない世界のことば』を第1作として刊行されている「世界を旅するイラストブック」シリーズの最新刊。同シリーズからはこれまでに、『翻訳できない世界のことば』『誰も知らない世界のことわざ』『信じてみたい 幸せを招く世界のしるし』『はかりきれない世界の単位』、そして『なくなりそうな世界のことば』と、大人向けの絵本が5作刊行されています。

    このシリーズにおいて“ことば”がテーマになっているのは、第1作『翻訳できない世界のことば』、第2作『誰も知らない世界のことわざ』に続き、今回の『なくなりそうな世界のことば』が3つ目です。

    これらすべてを担当されたという創元社編集局の内貴さんと、営業担当の水口さんに、本作についてお話を伺いました。

     

    今回ご協力いただいた方

    (左から)
    創元社 営業本部 東京営業部部長 東京支店長 水口大介さん
    同 編集局 第一編集部 エディター 内貴麻美さん

     

    『翻訳できない世界のことば』『誰も知らない世界のことわざ』に続く、“ことば”がテーマの作品

    ――シリーズ第1作の『翻訳できない世界のことば』が大ヒットし、シリーズ通してのファンも多い作品かと思います。書店や読者の方の反応はいかがですか?

    水口:本の世界観を気に入ってくださる方がたくさんいらっしゃって、嬉しい限りです。年齢や性別を問わないテーマなので、20~30代の女性をはじめ、幅広い年齢層の方に手に取っていただいていますね。読者の方がSNSでお気に入りのことばを紹介してくださったり、書店様が本書の発売をホームページやSNSで告知してくださったりしているのをいろんなところで目にします。

    ――言語独自の言葉をテーマにしたものは、今回発売された『なくなりそうな世界のことば』がシリーズ3作目となります。まずは、今回「少数言語」をテーマに選んだ理由から教えてください。

    内貴:シリーズ1作目の『翻訳できない世界のことば』が発売直後から話題になり、その勢いが衰えないうちに姉妹書を出したいと思っていました。2作目の『誰も知らない世界のことわざ』も好評だったので、1作目・2作目につながるような“ことば”に関するものをと思案した結果、“少数言語”をテーマにすることが決まりました。1作目に少数民族のことばがいくつか入っていたことからも、ヒントを得ています。

    翻訳できない世界のことば
    著者:エラ・フランシス・サンダース 前田まゆみ
    発売日:2016年04月
    発行所:創元社(大阪)
    価格:1,728円(税込)
    ISBNコード:9784422701042
    誰も知らない世界のことわざ
    著者:エラ・フランシス・サンダース 前田まゆみ
    発売日:2016年10月
    発行所:創元社(大阪)
    価格:1,728円(税込)
    ISBNコード:9784422701059

     

    「そのことばらしさ」を大切に選ばれた50のフレーズ

    ――本書では、50もの単語やフレーズが紹介されています。こちらは、どのように選ばれたのですか?

    内貴:まずは著者の吉岡乾先生に、各地域の言語を研究されている方に声をかけていただき、「その“ことば”らしい単語を3つ挙げてほしい」とお願いしました。そうして集まった中から、吉岡先生と私と、イラストレーターの方の3人で、最終的に50まで絞っていきました。

    ちなみに吉岡先生は、言語学・フィールド言語学の研究者で、国立民族学博物館の助教です。特にパキスタンの少数言語を専門としておられます。

    ▼世界中から集められた少数言語を紹介。

    ――紹介されている言葉は、どれもその言葉を通して民族の姿が感じられるものばかりですね。読んでいて、見知らぬ土地に引き込まれるような感覚がありました。

    内貴:選ぶ時、吉岡先生は言語学的な視点での面白さや、文章にした時のイメージを大切にされていました。イラストの西さんはイラストにした時のイメージ、私は好みで……(笑)。

    ▼モンゴル語族のダグール語では、「なるようにしておけ」というフレーズが、草原の近くでは「鞍をつけずに」という意味で用いられるそう。その土地ならではの使われ方から、彼らの暮らしぶりが伺えます。

    内貴:紹介する単語の説明や、その言語についての解説は、吉岡先生が書いてくださっています。とてもやわらかい表現で、単語の意味がわかりやすいですよね。言語の解説についても、協力いただいた研究者の方々からの情報をもとに、先生が書いてくださいました。

    ――イラストも、本の世界観にぴったりですね。

    水口:本作の絵は、ほぼ切り絵で制作されています。また、表紙やイラストの中の文字も西さんの手書きです。言葉や解説文からイメージを膨らませて描いていただいたので大変だったと思いますが、素敵な絵になりました。

     

    文化や生活の違いから、特有の言葉が生まれる

    ――紹介されている言葉の中には、どんな時に使うのか想像できないものもありますね。例えばこの「ボロソコモダップ」は、「莫大な量の小さな何かが降る」という意味ですが……。

    内貴:私たちは「雨のことかな?」と思うけれど、その地域では雨が大量に降るのが普通のことなので、雨が降るときには使わないんですよね。

    ――めったに降らない小さなものが降る時に、その言葉を使うと。

    内貴:そういう、地域ならではの言葉は多いです。吉岡先生によると、人は「生活に密着したものには名前をつけるけれど、必要でないものには名前をつけない」のだそうです。例えば、ロシアのウイルタ語には、雪を表す単語がいくつもあるのだとか。生活に密着しているものだからこそ、バリエーションが豊かになっていくんですね。

    ――日本語も「梅雨」「夕立」「時雨」など、時期や状態によって雨の表現が変わりますよね。普段何気なく使っている言葉も由来がわかると面白いし、新しい言葉に出会うと世界が広がります。ちなみに、お2人はどんな言葉が気に入っていらっしゃいますか?

    内貴:ドム語の「グイカ」と、コリャーク語の「ウィヌクジュガージュトゥグル」ですね。「グイカ」は「風のことば」という意味。電話による通信のことなのですが、あえて「風のことば」と表現するのが素敵だなと思っています。

    2つ目の「ウィヌクジュガージュトゥグル」は、「7月末から8月初めに種雄トナカイが角を磨くときの暑さ」という意味です。「角を磨くというトナカイの生態」と「夏の暑さ」の表現をつなげて、1つの言葉にしてしまっているのが面白いですよね。単語を組み合わせて作るのが得意な民族の言語なんだそうです。

    ――特性を伺うと、民族や言語についてさらに興味がわいてきますね。面白いです! 水口さんはいかがでしょうか?

    水口:私はワヒー語の「プルデュユーヴン」が面白いなと思いました。これは「家畜に乳を出す気にさせる」という意味で、初めて目にした時に「家畜に乳を出す気にさせる」ってどういう状況だ!?と驚きました(笑)。私たち日本人は、こういう言い方はなかなかしないですよね。

    ――「ルルン」や「マラマラアク」なんかも、響きがよくていいですよね。ひと目見ただけでは意味が想像ができないところも、読者の好奇心を刺激すると思います。

     

    アイヌ語の話者はたった5人! 日本にもある“なくなりそうなことば”

    ――“世界のことば”というと外国の言語をイメージしがちですが、本書では日本の言語も紹介されています。

    内貴:日本からは「アイヌ語」を紹介しました。存在自体は多くの方がご存じだと思いますが、実は、アイヌ語の話者数はたった5人しかいません。アイヌの方の人口はもっと多いのですが、作文ができるくらい自由にアイヌ語を使える方は少ないようです。

    ――日本にも“なくなりそうなことば”があったんですね。

    内貴:ただ、積極的にアイヌ語を勉強している人もいて、減るばかりではないようですよ。

    ▼アイヌ民族は北海道だけで約17,000人いるそうですが(※公益社団法人北海道アイヌ協会HPより)、流暢な話者はなんと5人。




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