• 夢眠書店開店日記 第11話:作家・装幀家ユニット「クラフト・エヴィング商會」の仕事②

    2016年04月30日
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    今回も引き続き、クラフト・エヴィング商會のお二人にお話を伺います。前回の対談では、日常的に“気になった言葉”や“ひらめいたこと”を書いた紙を、台所の壁に貼って共有していらっしゃることが分かりましたが、ではその言葉たちはいつ、そこから旅立っていくのでしょうか?

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    今回の対談相手

    クラフト・エヴィング商會(craft ebbing & co.)

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     PROFILE 
    吉田浩美と吉田篤弘によるユニット。著作の執筆と、装幀を中心としたデザイン・ワークを主として活動している。主な著書に『クラウド・コレクター/雲をつかむような話』『らくだこぶ書房21世紀古書目録』『ないもの、あります』などがある。
    著作のほとんどに物語の中の二次元的存在として登場するため、ユニット自体が架空の存在と思われがちだが、実際に存在し、これまでにおよそ1000点を超える書籍・雑誌などの装幀デザインを担当。同時に自著に登場する架空の品々を「ないもの、あります」の謳い文句のもと、さまざまな手法によって具現化し、自著と展覧会を通して数多く発表している。


    〈こちらの方にもご協力いただきました〉
    岸本洋和さん:

    株式会社平凡社 編集者。クラフト・エヴィング商會、並びに吉田篤弘さんの担当編集。
    ※今回の取材は、平凡社の会議室をお借りして行いました。

     

    「気になる言葉」や「ひらめき」は、溜まったら捨てちゃうの?

    夢眠ねむ(以下、夢眠)日常にアイデアを貼れる場所があるのって、発明ですよね。でも、それって溜まるじゃないですか。剥がすタイミングはいつなんですか?

    吉田篤弘(以下、篤弘)いや、剥がしてないです。

    夢眠:えっ! じゃあ、ずーっと蓄積されていくんですか?

    吉田浩美(以下、浩美)いつのまにか剥がれ落ちて、なくなったりはしますけど。

    夢眠:それはもう運命としてそのまま受け入れる?

    浩美:なくなっても気付かないし(笑)。

    篤弘:「何か」になったら剥がしますよ。要するに、「偶然」なんです。日々の生活で見たり聞いたりしたことが偶然自分の中に入ってきて、それが、手元にあるものとつながって何かに化けてゆく。さっき、ねむさんが「自分の頭の中で」とおっしゃいましたが、自分の頭だけで作り出したものは、あまり信用していないんです。それよりも、自分が持っていたものと外にあるものとがつながってゆく偶然の力のほうが、自分たちにとっては信用できるんです。

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    浩美:オリジナリティみたいなものって、結局、昔の人がやっていたりすることが多いし、何がオリジナルなのかと考えると……。

    篤弘:「知っているか知らないか」ですよね。ただ知らないだけで、実際のところ、人間は同じことを繰り返し考えてきて、たいていの考えは自分の発見ではないです。むしろ、そういう「繰り返しの中に自分もいる」ということが喜びなんじゃないですかね。だから、自分が「いいな」と思うものって、どれも、繰り返されてきたものを何らかの形で継承しているものなんだと思います。継承を意識していることが伝わってきたとき、「いい作家だ」「いい作品だ」と感じます。

    夢眠:私、小さい頃、自分を天才だと思っていたんです(笑)。「天才だから発明しなきゃ!」「一から何かやりたい!」っていう気持ちがあったんですけど、あるとき「私がやりたいことって、これまで影響を受けたものがコラージュみたいに集まってできてるんだ」と気付いて、すごくショックを受けたんです。それから物事を広く見られるようになったんですけど、今のお話を聞いて、私も昔の人と同じことを思えてたんだっていう喜びを初めて感じました。「前からあったんだ、悔しい!」と思ったことはあったんですけど、それを「うれしい」って思えるって、すごいですね。

    篤弘:作家の仕事というのは、なくなってしまったものや考えを引き継いだり引き受けたりして、次の世代へ渡していくことだと思っています。例えば、今はもうこの世にいない人たちの声を、自分たちが引き継いで「本」という形にしていく。今はもうここにはないけど、ずっと繰り返されてきた考えや、過去の作家たちがリレーのように進めてきたことを受け取って、そこへ少しだけ新しい考えや自分なりの考えを盛り込んで次の人にバトンを渡してゆく。それが「本を作っていく」ということではないかと思っています。だから、「本を読む」というのは、ここにいない人たちの声をその中に見つけることで、自分たちもそういう思いで本を作りたいし、そんなふうに読んでもらえたらいいなと思っています。

    夢眠:『クラウド・コレクター』でも手帳とか、伝えたいもの、何かが記されているものを読み解いて理解しようとするということが書かれていて、今のお話に通じるものを感じます。

    篤弘:あの作品はまさに「失われてゆくものを留めたい」という思いからつくられたものでした。それでも、どんどん忘れられて、また新しいものが次々現れて……という繰り返しになるんですが──。

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