夢眠書店開店日記 第10話:漫画制作の裏側①

2016年03月26日
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今回のテーマは「漫画編集」! 『DRAGON BALL』や『SLAM DUNK』『ONE PIECE』など数々の名作を生んできた週刊少年ジャンプ編集部にお邪魔しています。対談のお相手は、現在『斉木楠雄のψ難』を担当している編集者の頼富さん。さらになんと、噂を聞きつけて作者の麻生周一先生も遊びに来てくださいました!!

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今回の対談相手

頼富亮典 株式会社集英社 週刊少年ジャンプ

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 PROFILE 
1990年生まれ。大学・大学院でアスパラガスの耐病性に関する研究を行い、2015年4月に集英社に入社。2015年6月に週刊少年ジャンプ編集部に配属された、新米編集者。

麻生周一先生:1985年生まれ。埼玉県入間市出身。小・中学校の同級生がイルマニア。『勇者パーティー現る』で第64回赤塚賞準入選となり、「週刊少年ジャンプ」で『ぼくのわたしの勇者学』『新世紀アイドル伝説 彼方セブンチェンジ』の連載を経て、現在『斉木楠雄のΨ難』を連載中。でんぱ組.incのファンクラブ会員。りさちー寄りの箱推し。

 

週刊連載に携わる人の1週間とは?

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夢眠ねむ(以下、夢眠)まずは取材を受けてくださって、ありがとうございます。でんぱ組.incメンバーの成瀬瑛美が、ずーっとジャンプがどうの、編集部に行ってみたいというようなことを言っていたんですが、私が先に伺うことになってしまいました(笑)。

頼富亮典(以下、頼富)私宛にアポを取ってくれれば、いつでもご案内しますよ(笑)。

麻生周一(以下、麻生)僕も、全然関係ないけど駆けつけます(笑)。

夢眠:(笑)。さっそくですが「週刊少年ジャンプ」の編集者って、1週間どんなふうに働いていらっしゃるんですか? 「週刊」と聞いただけで、とんでもないスケジュールなんだろうなというイメージがあるんですけど……。

頼富:1週間で作品を1本仕上げなくてはいけないので、スケジュールは毎回厳しいです。(担当している)麻生周一先生の場合だと、1回の掲載で15ページ分の原稿が必要になります。まず打ち合わせの日が1日あって、それから12ページ分のネームを3日くらいかけて描いて、FAXで送ってもらいます。私はそれを出先であろうとどこであろうとすぐに確認して、感想をお伝えします。それと同時に、残りの3ページについて改めてお話しします。ギャグ漫画では、オチがかなり重要なんですよ。いかにきれいな、びっくりするようなオチにするか、毎回打ち合わせと別に話すんです。そこから3日で作画を上げてもらって、1週間のうちに仕上げます。

夢眠:本当に1週間でやっているんですね。描き溜めていらっしゃるのかと思ってました。

頼富:作家の先生によってスタイルがあるとは思いますが……。

麻生:書き溜めている方は、ほとんどいないんじゃないですかね ?

頼富:そうですね。『こちら葛飾区亀有公園前派出所』の秋本治先生くらいしか、いらっしゃらないかもしれません。

 

お休みはあるの?

夢眠:そうなると漫画家さんって、ずーっと漫画を描いていなくちゃいけないんじゃないですか? お休みはあるんですか?

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麻生:打ち合わせをする日の日中と、あとはネームの時間を詰めれば……。

頼富:だから行きたいライブがあるときは、ネームは2日でやるんですよ。ライブに行きたいから。

麻生:正直、クオリティは下がりますね……。

夢眠:えー!

頼富:いやいや下げないでください、下げちゃダメですよ(笑)。

麻生:もちろん冗談です(笑)。

夢眠:でも、やりたいこととか、遊びたければ仕事を早く頑張るっていう。

頼富:そうです。筆を早めるしかない。

夢眠:ひょえー、しんどいー!

頼富:長期の休みだと「合併号」っていうのがゴールデンウィークとお盆、年末年始に、年4回くらい出るんですよ。そのタイミングなら1週間描いた後にまるまる1週間休みがあるので、編集者も作家の先生と一緒にスケジュールをコントロールして、お休みを取っています。そんな感じですかね。

夢眠:えっ、じゃあ「ジャンプ作家」と呼ばれる先生方って、年間で全然休めてないんじゃないですか!? 旅行とか行けなそう……。

麻生:まあ、1週間休みのある合併号のときに。

頼富:合併号のときに、決め打ちで行くことになりますね。

夢眠:じゃあ合併号が出た後は、旅先で漫画家さんに会えるかもしれない!?

頼富:合併号の原稿明けの時期には、もしかしたら会えるかもしれないですね(笑)。顔が認知されている方はあまりいないと思いますが……。

 

何人くらいの作家さんを担当するの?

夢眠:編集者さんって、1人で何人くらいの作家さんに付くんですか? 例えば担当する作品の数だと、どれくらいになるんでしょう。

頼富:1人につき1人の作家さんに付くことがほとんどで、担当する連載作は多くて2つです。私は今「週刊少年ジャンプ」で『斉木楠雄のΨ難』を担当していて、それとは別に、低年齢層向けの「最強ジャンプ」という隔月誌で『しりこだま!』という漫画を担当しています。

夢眠:そうじゃないと、さっき聞いたようなスケジュールでの作業は難しいですよね。

頼富:はい、とてもじゃないですが……。

夢眠:以前、文芸編集者の浅井さん(文藝春秋)のところへお邪魔したときには、40人くらい担当の作家さんがいると伺いました。

頼富:すごいですね。ただ新人の作家さんを含めると、漫画編集者が抱える作家さんも多いかもしれません。漫画の場合、持ち込みの対応をしたらその瞬間からその編集者が担当なんですよ。僕はまだ配属されて半年くらいですが、すでに100人以上の持ち込みを見ています。その方たちも言ってしまえば担当の作家さんということになりますが、リアルタイムで連絡を取っているのは、そのうち20人くらいですかね。

夢眠:その20人って、将来性があると見込んで面倒を見ることにした方ってことですよね。「産みの親」といえばいいのかな?

頼富:この関係は、どう形容すればいいのか難しいですね……(笑)。新人作家さんの場合、最初の持ち込みですでに作品として完璧に仕上がっていることはなかなかないので、直さなくてはならないところ、よかったところについてアドバイスしながら、一緒に漫画を作っていきます。それから賞を獲ったら読み切りを載せて、連載にするというのが、多くの新人作家さんが目指すルートです。なので最初の目標は、読み切りを増刊号やジャンプ本誌に載せることですね。

夢眠:読み切りが載ることが、連載獲得のチャンスなんですね。すごい、まさに“少年の夢”ですね……。

 

麻生周一先生のデビューは?

夢眠:麻生先生も、持ち込みから始めたんですか?

麻生:いえ、僕は投稿でした。

頼富:麻生先生のデビューは、かなりのレアケースですよ。半年に1回「手塚賞」「赤塚賞」というジャンプ最大の賞があるんですが、麻生先生はまだ誰も編集が付いていないときに赤塚賞へ投稿した作品が、いきなり準入選になったんです。

夢眠:ぎゃ! 大型新人!

頼富:当時は「うわ、すごいのが来た」みたいになったはずですよ。

麻生:いやいやいやいや……。

夢眠:うふふふ! 照れちゃった!

頼富:その読み切りがいきなり本誌に掲載されて、その1年後くらいにはそれをベースにした連載が始まっていたという。

夢眠:ひょえー!

頼富:かなりスタートダッシュが速い作家さんの一人だと思います。

夢眠:すごーい。だって何度も持ち込んで、それでもなかなか芽が出ないという方もいらっしゃるんですよね?

頼富:そうですね、10年くらいかかって連載にこぎつけたというような方もいらっしゃいますし、そもそも連載に至らなかった方も大勢いらっしゃいます。そう考えると、かなりトントン拍子で進んだパターンだと思いますよ。

夢眠:ありゃま!

麻生:全然です。「マイナスからのスタート」ですよ……。

頼富:なぜ突然でんぱ組.incの歌詞を……。

夢眠:(笑)麻生先生は、ずっと漫画家になりたかったんですか?

麻生:僕はそうでもないです、20歳くらいからですね。それまではずっと引きこもってたんで。

夢眠:本当の引きこもりの方ですか?

麻生:週に2日くらいアルバイトして、あとは実家にいました。

夢眠:私、それって今一番スタンダードな引きこもりだと思うんです。みりんちゃん(でんぱ組.incの古川未鈴)も、引きこもってたけどバイトには行ってたから。

麻生:そうですね、「マイナスから」なんですよ……。

頼富:めっちゃ歌詞被せてきてる(笑)。

夢眠:でも麻生先生、絵は好きだったんじゃないですか? そうじゃないと、こんなに描けないのでは……。

麻生:いや、絵は……週刊連載で毎週描いているのでさすがに多少マシになりましたけど、最初は本当に酷かったですね。

夢眠:でも皆さん、連載しながらどんどん上手くなっていくものなんじゃないですか?

頼富:画風すら変わる方もいらっしゃいますよね。

夢眠:それはいいことっていうか、そういうものですよね。

頼富:「印刷されるとどういう見え方をするのか」を毎週突きつけられるので、その都度ブラッシュアップできるのは週刊連載のメリットの一つだと思いますよ。

夢眠:一冊に色々な作家さんの漫画が収まるわけですが、他の人のカラーがどうとか、気にしていますか?

麻生:両隣に載っている漫画と比べて、自分の作品のクオリティの低さに見ていられなくなることはよくありましたね。まぁ、それは今もですけど。

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夢眠:でも頑張って描いてるんですね。私、ジャンプ作家って「ブランド牛」みたいなところがあると思うんです。「漫画家になるならジャンプがいい」っていう気持ちはありましたか?

麻生:最初に投稿したのがジャンプで、そのままいっちゃっただけなんですけど、僕もジャンプが一番人気だし読んでいたので、……うん、ブランドですね。

頼富:ありがたいことです。

 

編集者って、どれくらい作品に介入するの?

夢眠:担当編集者って、作家さんのネームにどれくらい口出しするものなんですか? 私、漫画家と編集者さんのイメージっていうのもあって……。

頼富:もうご自身の中に明確なものがあるんですね(笑)。

夢眠:ネームを見せられて「ちょっと、これじゃダメだよ! ボツ!」みたいな(笑)。実際そうだったら嫌かもしれないですけど、それが漫画家と編集者の関係を表す象徴的なシーンというか、いいなっていうのがあって。

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頼富:さすがに、全部ボツにしたことは今のところないです。

麻生:連載中なんで、間に合わないです。

夢眠:そうか、「先生が体調不良のため……」になっちゃいますね。

頼富:ネームでボツが出ないように、打ち合わせの時点でしっかりお話しして、流れをきちんと決めるようにしています。

麻生:こっちも全ボツを喰らわないために、すごいギリギリに出すんで……。

夢眠:時間切れを狙って!?

麻生:もう直す時間ないだろうと思って(笑) 。

夢眠:お互いの心理を読み合いながらやるっていう(笑)。その中でも「これはこうしたほうがいいんじゃないですか」って意見して、先生も同意してくれたら擦りあわせていくという感じでしょうか?

頼富:見栄えについての意見を言うことが多いですね。それと、第一読者としての感想はきちんとお伝えするようにしています。先ほど言ったように、オチを2人で考えていたりもするので、私が「これはどうですか」と思いつく限りボケて、それに対して先生から数多のボツを喰らうということもあります。

夢眠:“滑る”ってことですか?

頼富:そうです。

麻生:「ああ、それはないな」って。

頼富:「違う」って言われながら。

麻生:「それだけは絶対やりません」って。

夢眠:ということは、笑いのセンスが編集者さんと先生とで合っているほうがうまくいくのか……。そのへんはどうですか?

麻生:頼富さんで(担当は)3人目なんですが、今までの担当は合っていました。よかったです。

夢眠:編集さんが変わるときって、けっこう緊張します?

麻生:緊張しますよ。人見知りが激しいので。

夢眠:でも、いわば夫婦とかコンビみたいなものじゃないですか。ちょっと特殊な関係性ですよね。

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麻生:漫画見せるの、いまだにちょっと恥ずかしいんですよ……。

夢眠:あはは! まだ?

頼富:早く打ち解けてくださいよ!

麻生:最初の担当さんが8年くらい付いてくれてて、去年あたりに変わったんです。それでまたすぐ変わって、ちょっと慣れないですね……。

頼富:慣れていただけるよう頑張ります!

夢眠:なんか付き合いたてのカップルみたいで、そわそわしますね!


漫画が作られていく裏側を少し覗いてみた感想は、いかがですか? 次回以降はさらに詳しく、普段どんなふうにお仕事をされているのかをお聞きしていきます! お楽しみに。

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