• ソーシャル疲れでぐったりのあなたにこそ読んでほしい 翻訳家と同時通訳者の男女を描いた小説『ロゴスの市』

    2016年02月21日
    楽しむ
    日販 仕入部 齋藤
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    SNSで気軽に情報発信・交流できる現代。ツール自体は便利でも「SNS疲れ」なんて言葉があるくらい、体も心も疲れている方が多いようです。その原因はもしかしたら、気軽に発しているはずの言葉に対して、実は敏感になっているからかもしれません。

    そこで今回は、言葉に対する「感受性」や「向き合い方」が物語のキーとなっている、ある小説をご紹介します。

    ロゴスの市
    著者:乙川優三郎
    発売日:2015年11月
    発行所:徳間書店
    価格:1,620円(税込)
    ISBNコード:9784198640422

    作者は山本周五郎賞受賞作『五年の梅』や直木賞受賞作『生きる』などの代表作がある、乙川優三郎さん。『五年の梅』『生きる』もそうなのですが乙川優三郎さんの作品には時代小説が多く、読者は50~70代が中心です(日販 WIN+調べ)。

    乙川優三郎WIN

    本作『ロゴスの市』は、「言葉との真剣勝負」という共通項がありながらも、全く性質の異なる2人の男女を描いた物語です。

    舞台は昭和55年。大学の人文学科に在籍する成川弘之と戒能悠子が、ペンクラブで出会うところから物語は始まります。のんびりした弘之と、せっかちな性格の悠子。2人は卒業後、それぞれ翻訳家と同時通訳者の道に進みます。

    「あなたは最もふさわしい表現を求めて悩み、考え尽くす時間がある、人間の生の声を訳す私には十秒もない」
    「遠い世界を丸ごと運んでくれる言語を相手に自分と戦うしかない行為を翻訳というのであった」

    「奇跡のような適訳」を探して煩悶する翻訳家と「一言一句を瞬時に消化して言語の壁を越える」同時通訳者。家に閉じこもって翻訳に情熱を注ぐ弘之と、精力的に海外を飛び回る悠子。2人は互いを認め合い、想いを寄せ合ってもいるのですが、まさに「静」と「動」というべきか、何もかもが重なり合わないのです。

    「私たち翻訳家と通訳は海と空のようなものかもしれません、色は似ているけど一つにはなれません、それでいて無視できない存在とでもいうのか、海は空の色を映しながらより深い色をみせます」

    以前、同時通訳者の長井鞠子さんもテレビのドキュメンタリー番組で、自分の仕事を「格闘技」で「真剣勝負」だと話していました。まさに格闘家のように言語や自分の境遇と孤独に戦い続ける悠子に、きっと読者も弘之を通して恋をすることでしょう。そして最後には、2人の「ある真実」が明かされます。

    青とオレンジが鮮やかな、海外小説のような装丁も素敵です。書店で見かけたらぜひ手に取ってみてください。

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