うさぎの還暦で思ったこと/「ミッフィー」と「うさこ」、ふたつの名前

2015年05月06日
楽しむ
馬場進矢(日販 商品情報センター)
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オランダ人絵本作家、ディック・ブルーナのうさぎの絵本『ナインチェ(Nijntje)』の最初の作品が刊行されてから、2015年で60年となります。つまり、あのうさぎは還暦ということです。

それを受け(?)、今年から来年にかけて「誕生60周年記念 ミッフィー展」が全国各地で開催されます。

 

ブルーナは10年前のエッセイに、このように書いています。

ぼくのこと、ミッフィーのこと
著者:講談社 ディック・ブルーナ
発売日:2005年04月
発行所:講談社
価格:1,512円(税込)
ISBNコード:9784062128261

最初の絵本をつくったのは1955年のことですから、ミッフィーとは長いつきあいになります。数えてみるともう50年にもなるんです。「うさこちゃん」という名前で、日本に絵本が出版されたのは、その9年後です。どの国よりも早く、ミッフィーの絵本を翻訳出版したのが日本だったのです。

世界各国で翻訳されているナインチェの絵本ですが、その外国語版がはじめて出版されたのは、実は日本です。1964年、翻訳者は石井桃子先生、出版社は福音館書店、邦題は『ちいさなうさこちゃん』で刊行されました。

ちいさなうさこちゃん 改版
著者:ディック・ブルーナ 石井桃子
発売日:2010年04月
発行所:福音館書店
価格:756円(税込)
ISBNコード:9784834000269

と、先の引用を含めてあのうさぎの名前がいくつか並びましたが、整理すると下記のようになります。

・「ナインチェ」…本名
・「ミッフィー」…英名・和名
・「うさこ」…和名(石井先生命名)

和名が「ミッフィー」「うさこ」と2つありますが、日本デビュー時の名称は「うさこ」一本。その後、福音館書店から続けて8作出版されました。つまり60年代から70年代にかけて、あのうさぎは「うさこ」として親しまれてきたということです。

そして『ちいさなうさこちゃん』から17年経った1981年、「うさこ」ではなく「ミッフィー」という英名でのナインチェ絵本が日本で刊行されます。それが『ミッフィーのゆめ』(舟崎靖子・文/講談社)です。

 

ということで、日本国内では「うさこ」と「ミッフィー」の2本が走る展開となったのです。

 

ブルーナの版権会社側にどんな戦略があったのかは不明ですが、同一のキャラクターライツ(権利)もので名称が別々でマーケティングされるというのは、珍しいケースです。

その後「ミッフィー」での刊行が続くと思われましたが、意外にも3年後の1984年に福音館書店から『うさこちゃんとじてんしゃ』が刊行され、再び「うさこ」としての刊行が続きます(ただし、翻訳は石井先生から松岡享子先生に変わりました)。

「やっぱり『うさこ』が本流なのかな」と眺めていたら、月日は流れて1994年、講談社から唐突に『ミッフィー どうしたの?』が刊行されます。翻訳者は『魔女の宅急便』などで有名な角野栄子先生です。

ミッフィーどうしたの?
著者:ディック・ブルーナ 角野栄子
発売日:2004年09月
発行所:講談社
価格:648円(税込)
ISBNコード:9784062703710

以降、講談社による角野訳「ミッフィー」は、2004年の『ミッフィーのてがみ』まで続きました。「今後は『ミッフィー』へシフトしていくのだろうな」と思っていたら、予想外にもその翌年、『うさこちゃんとあかちゃん』が福音館書店(松岡先生訳)で刊行されました。

 

この頃には「ナインチェ」ファンは、著作権者(=ブルーナ)が何をどうしたいのか、もうさっぱりわからない状態になっていました。

 

そしてついに、ナインチェ絵本はまさかの展開を迎えます。

2010年、なんと、講談社の『ミッフィー どうしたの?』の翻訳出版権が福音館書店へ移動し、同作はタイトルを『うさこちゃんのさがしもの』に変更されたうえで、新訳刊行されたのです。訳は松岡先生。

うさこちゃんのさがしもの 改版
著者:ディック・ブルーナ 松岡享子
発売日:2010年04月
発行所:福音館書店
価格:756円(税込)
ISBNコード:9784834023190

その結果、講談社から刊行されていた角野訳の『ミッフィー どうしたの?』は絶版となりました。

それを知った時、私はタイトルそのまま「ミッフィー、どうしたの?」と思った次第です。

今後もあのうさぎの名称が日本国内でどのような旅路を辿っていくのか、ナインチェファンとしては追いかけていかねばと思っています。

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