〈インタビュー〉早見和真さん『95 キュウゴー』 1995年の渋谷を舞台に青春がほとばしる最強エンタテインメント

2015年12月28日
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日販 商品情報センター「新刊展望」編集部
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95 キュウゴー
著者:早見和真
発売日:2015年11月
発行所:KADOKAWA
価格:1,728円(税込)
ISBNコード:9784041019979

1995年3月20日。地下鉄サリン事件が起こった日。著者の早見和真さんは『95』の主人公・秋久と同じ、高校の終業式を迎えていた。「いつも生徒で埋まっている学校のホールが虫食い状態で。いろんな噂が飛び交う中、同級生のあいつが死んだといった話も次々に飛び込んできた。結局友だちは無事だったのですが、その日の午後に立ち寄った渋谷で、情報としては知っていた“援助交際”を初めて目撃してしまったんです。同年代も死ぬんだなとリアリティを持って突き付けられた僕が、自分の性を売って生きている女の子を見たときに、何を感じていいのかわからなくなって。あの時のもやもやした、いま振り返れば“怒り”が立ち上るならば、それはきっと物語になる。その気持ちはデビュー前からありました」

37歳となった秋久のもとに、母校に通う女子高生・萌香から突然メールが送られてくる。卒業制作として調べている「1995年」について、当時母校で学んでいたOBに話を聞きたいという。渋谷にある曰く付きのカフェを指定してきた萌香と顔を合わせた秋久は、自身の転換点となるその年について語り始める――。

地下鉄サリン事件が起きた、高校1年の最終日。秋久はこれまでの自分とは明らかに生き方の違う4人の仲間に引き入れられる。政治家、ヤクザ、在日朝鮮人といった特殊な家に育った彼らと過ごすうちに、ストリート雑誌に登場するなど仲間とともに渋谷で知られた存在になる。華々しい毎日をひたすら楽しむ彼らだったが、仲間の1人が何者かに襲われたことをきっかけに、様々な思惑が絡んだ争いへと巻き込まれていく。

本作を書くにあたり早見さんがイメージしていたのは、ちょうど1995年に読んだ村上龍著『69 sixty nine』。「1969年も、佐世保も、学生運動も知らない僕が頭をかち割られるようなインパクトがあって、当時の若者のエネルギーに嫉妬した」。そのおもしろさは、何より「人間の物語」だったから。名門高校の補欠球児が主人公の『ひゃくはち』でデビュー以来、青春小説は作家としての“自分の背骨”。初めて「社会派のカードを切って」評価を受けた前作『イノセント・デイズ』を経た今作は、「当時の渋谷の特異さ」を街の匂いや時代のうねりに滲ませながら、少年から大人へとつながる、ひりつくような日々を描く成長譚となった。

『95』は、大人が大嫌いだったあの頃の自分からの、「ちゃんとカッコよく生きているか」という刃だと語る。〈ダサい大人にはなりたくない〉そんな夢を持っていた秋久が、強烈な体験を駆け抜けてたどりついた覚悟。思い描いたカッコいい大人像ではないかもしれないけれど、20年後の彼(ら)の姿に、その答えは託されている。熱く、真っ直ぐに、一生懸命いまを生きる人へのエールが詰まっているからこそ、同じ刃は読者一人ひとりの胸にも突き付けられるのだ。


hayamikazuma早見和真 Kazumasa Hayami
1977年、神奈川県生まれ。2008年『ひゃくはち』で作家デビュー。同作は映画化、コミック化されベストセラーとなる。2014年『ぼくたちの家族』が映画化、2015年『イノセント・デイズ』が第68回日本推理作家協会賞(長編および連作短編集部門)を受賞した。他著に『スリーピング・ブッダ』『東京ドーン』『6 シックス』『ポンチョに夜明けの風はらませて』などがある。


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(「新刊展望」2016年2月号「著者とその本」より転載)

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