• コワモテ大統領がケンタウロスに「乗りたい!」と異世界を大冒険!漫画『ライドンキング』

    2019年02月17日
    楽しむ
    ほんのひきだし編集部
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    ライドンキング 1
    著者:馬場康誌
    発売日:2019年01月
    発行所:講談社
    価格:691円(税込)
    ISBNコード:9784065142103

    「この食材にコレって合うの?」と思いながらも、食べてみたら「あれっ、想像と違って美味しい」という経験は、誰にでもあると思います。この漫画は、まさにソレです。

    ありそうでなかった意外な組み合わせから不思議な世界が広がり、「なんじゃ、こりゃ!」という、いい意味での驚きと笑いがありました。

    『ライドンキング』の主人公は、15年前に大国から武力で独立を勝ち取った中央アジア・ブルジア共和国の終身大統領、アレクサンドル・プルチノフ。国民からの信任も厚く、武術や格闘技で数え切れぬほど黒帯を持つ達人でもあります。しかし、テロリストに命を狙われた大統領は、ひょんなことから異世界に転生。

    どこかで見たことのあるような、あの大統領を彷彿とさせる強面(こわもて)な顔と迫力のある画に、国家機密に絡んだハードボイルド系の話が展開されるのかと思いきや、全然、違いました。

    この大統領、転生した世界でワイバーン(翼を持った火を噴く竜)を膝蹴りし、背中に騎乗(ライドン)。
    「未知の……試乗感!! し……至福!!」
    と恍惚の表情でつぶやくのです。

    なんだか凄い肩すかしをくらった気分で、まずここで1回目の「なんじゃ、こりゃ」です(笑)。えっ、この漫画ってファンタジーだったの?と。

    異世界に転生したことを嘆くこともなく、大統領就任以来、初の長期休暇(バカンス)をとることに決めた大統領は、ワイバーン退治で出会った魔法剣士サキ(17歳)、魔法使いベル(16歳)と「冒険者登録」をするため「魔境」にやって来ます。

    ここで、領主の娘であり騎士団長のジェラリエ・ゴルドーを乗せた ケンタウロス(人馬族)を見た大統領は……。

    もう本当に子供のように無邪気な「乗り物フェチ」の大統領に、ええっ、そんな反応!? 違うでしょ! とツッコミを入れたくなりました。というのもこの騎士団長、ケンタウロスを魔道具の「隷属の首輪」で支配し、狩りで捕らえた子供のケンタウロスを引き回す悪者だったからです。

    勿論、正義感の強い大統領はこれを見過ごすことができず子供たちを救うのですが、そのときケンタウロスの戦士からお礼として、尾とたてがみで編み込んだ編み紐を贈られます。
    そして、この編み紐に金の匂いを感じたサキとベルは、ケンタウロスが住む集落を探そうと大統領をそそのかし、3人の冒険が始まります。

    このBL感漂(ただよ)う画に「なんじゃ、こりゃ?」です。

    それにしても、この漫画、ストーリーに絡む様々な設定が、とにかく細かい。

    まず、ケンタウロスの子供たちを助け出すときに使った「魔石」。魔石は、「魔獣の心臓付近の魔石袋の中にあり、ランタンにはめこんで灯りにしたり、武器にエンチャントしたりできる」というのです。

    また、この魔石に大統領の気を注入すると「米軍の使用するM84スタングレネードの閃光に匹敵する光量」を出せるというのですが、エンチャント(武器に付加能力を与えること)も、M84も私にとっては異世界の言葉。

    こりゃ、ついていけないかも……と戸惑っていると、大統領のこんなセリフが出てきます。
    「わからない用語は、とりあえず聞き流すことに決めた」
    恐れ入りました! 武闘派なのに全身の力が抜けそうな、すっとぼけた大統領のセリフが所々出て来て、これがまた、いい味出しているのです。

    このほかにも、冒険者登録の際に買う帯(ベルト)の階級についての細かい設定があったり、魔法薬(ポーション)の話が出て来たり、鉱物を吸い上げ自分の身体と融合できるスライムや、異国の文字・模様の解説、魔石袋の剥き方まで図解で載っていたりと、とにかく盛りだくさん。

    これに大統領が騎乗するお茶目で可愛いホッチ(翼が退化した大型の鳥)、醜小鬼(ゴブリン)、猪鬼(オーク)、魔狼(ガルム)といったモンスターたちも次から次へと出て来て、面白さが加速します。
    もう、ここまででも目一杯なのに、生け贄として猪鬼(オーク)に捕われていたエルフの幼女・カーニャが加わり、これがまたとんでもないキャラなのです。

    幼気(いたいけ)な可愛い容姿から生娘だと言い張るエルフに対し、猪鬼(オーク)は「我らの鼻は賞味期限と消費期限を明確に嗅ぎ分ける」と言い、カーニャを「クソ女」「ロリババァ」呼ばわり。

    それに対し、カーニャも負けじと「ビチグソブタ野郎!!ども」と言い返し、まるで子供の喧嘩。またしても「なんじゃ、こりゃ?」と笑ってしまいました。

    正直、何の予備知識もなく読みはじめたので、話がどこに進むのかわからず、最初は戸惑ったのですが、いつしかそれも先が読めない面白さに変わっていきました。

    そうなると今度は、怒濤の展開とコミカルなセリフがおかしくて、すっかり異世界に溶け込んでいる自分がいたのです。

    抜群の画力に、様々な素材を惜しげもなく、これでもかこれでもかとミックスさせて新しい世界を創り出した「ライドンキング」。とにかく中身が濃いです。
    何度も何度も読み返すことができ、その度に楽しむことができる漫画だと確信しました。

    (レビュアー:黒田順子)

    ライドンキング 1
    著者:馬場康誌
    発売日:2019年01月
    発行所:講談社
    価格:691円(税込)
    ISBNコード:9784065142103

    ※本記事は、講談社コミックプラスに2019年2月4日に掲載されたものです。
    ※この記事の内容は掲載当時のものです。




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