• 歌人・穂村弘が9人の表現者の“秘密”に迫る対談集『あの人に会いに』:インタビュー

    2019年02月14日
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    日販 ほんのひきだし編集部「新刊展望」担当 猪越
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    短歌のみならず、エッセイ、書評、評論ほか、幅広いジャンルで活躍する人気歌人の穂村弘さん。『あの人に会いに』は、そんな穂村さんが各界を代表する“すごい”クリエーターたちの、創作の秘密に迫る対談集です。

    登場するのは、いずれも穂村さんが若い頃から作品に触れ、憧れてきた表現者たち。創作の源から作品への向き合い方まで、9人9様の刺激的な対話が繰り広げられる本書について、穂村さんにお話を伺いました。

    あの人に会いに
    著者:穂村弘
    発売日:2019年01月
    発行所:毎日新聞出版
    価格:1,728円(税込)
    ISBNコード:9784620325484

    対談登場者
    ・谷川俊太郎(詩人) ・宇野亞喜良(イラストレーター)
    ・横尾忠則(美術家) ・荒木経惟(写真家)
    ・萩尾望都(漫画家) ・佐藤雅彦(映像作家)
    ・高野文子(漫画家) ・甲本ヒロト(ミュージシャン)
    ・吉田戦車(漫画家)

     

    「よくわからないけど、すごい人」の秘密に迫る

    ――本書に収められた対談は、「辞書のほん」(大修館書店・現在は休刊)で連載されたものですね。連載時のタイトルは「よくわからないけど、あきらかにすごい人」ですが、テーマはどのように設定されたのですか?

    「すごい人」は世の中にいっぱいいるけれど、謎があるクリエーターといえばいいでしょうか。よくわからないけど、すごい。その2つが並ぶところがポイントです。

    たとえば吉田戦車さんはある時期から顔出しされるようになりましたが、それ以前はあのシュールな作風で名前が“戦車”だから、どんなキャラクターなのかまったく見当がつかなかった(笑)。

    高野文子さんが『絶対安全剃刀』でデビューした時も、「転校生がいきなりテストで​学年トップになってしまったような恐ろしさ」と誰かが書いていました。どこかから出現した人が、いきなり最高の作品を作ってしまったというイメージがありました。

    ――本書ではそんな錚々たる方たちが、現在にいたるまでどのように創作に向き合ってきたのかが語られていますね。

    それぞれ画期的な仕事をした方たちですが、宇野亞喜良さんや横尾忠則さんなどは常に危険な匂いがあって、「次に何をしてくるのかわからない」とハラハラする感じがずっとある。そういう人の創作の秘密を聞いてみたかったんです。

     

    表現の現場から浮かぶ、時代感覚

    ――その“ハラハラする感じ”は対談中にもありましたか?

    この対談では、それぞれのクリエーターの、いわゆる“企業秘密”の部分に立ち入ろうというはっきりとした意識を持っていました。

    かなり突っ込んだ質問もしているので、そういう面での緊張感はありましたが、登場いただいたのは僕が大ファンである人たち。その思いは伝わっていると思いますし、過去の仕事でよく知っている人も多いので、具体的なことも話してくれていますね。

    ――谷川俊太郎さんと佐野洋子さんの夫婦時代のお話などは、踏み込んだ内容でドキドキしました。

    そうですよね(笑)。谷川さんにはどんなに突っ込んだことを聞いても、怒られることはないだろうなという安心感もあって。

    この企画の最初に登場してもらった谷川俊太郎さんや横尾忠則さんは、ちょうど僕の30歳くらい上の、今80代の世代です。そのときは無意識でしたが、その世代は作ってきたものが素晴らしいということもあるし、ずっと時代のトップクリエーターですよね。その秘密も知りたいなと思いました。

    ――宇野亞喜良さんも含め、その世代の方とのお話では、60年代の表現の現場の状況と、穂村さんが経験し触れてきたものとのお話がクロスして語られていますね。その頃を知らない世代にとっても、時代の空気が感じられて興味深いのではないでしょうか。

    いわゆるアングラの時代ですよね。学生運動の匂いのあった革命幻想の時代​。それが終わったのが1970年の大阪万博あたりだといわれますが、そこでアングラ的なエネルギーが1回なくなった。

    万博からバブルまでは成長志向一直線で、91年のバブル崩壊以降は阪神・淡路大震災や地下鉄サリン事件など時代感覚が非常にダークになっていく。そういった移り変わりが、対談の中で自然と浮かび上がる感じはありましたね。

     

    創作には、“直感”と“自分をジャッジする”客観性が必要

    ――対談からは、みなさんが率直にお話しされている雰囲気が伝わってきます。穂村さんもかなり食い下がって質問されていますよね。

    そこはけっこう大事で、かなりの数のインタビューを受けてきている人たちなので、質問に対する “公式”の答えがあるんです。でもそこで満足しないで、もう一歩、二歩食い下がろうという方針でした。

    たとえば吉田戦車さんが『伝染るんです。』を「ストーリー漫画の添え物じゃねぇぞ」という気持ちで始めたことや、高野文子さんが「マンガは、攻撃しなきゃだめだと思ってやってた」というお話を聞くと、なるほどなと非常に腑に落ちるものがありました。作品からも、そういう意志というか、意識の持ちようが感じ取れますよね。

    ――年齢、ジャンルが異なる9人との対話が並んでいるので、自然と創作における共通点や違いが浮かび上がってくるのも、対談集ならではのおもしろさでした。

    表現の仕方は違っても、近いイメージを持っていらっしゃるんだなと思うことはありました。

    たとえばインスピレーションの話では、谷川さんは「昔は上からやって来るイメージがあったけれど、すべて下から来るのではないか」、横尾さんは「表現者はインスピレーションの大海の中を漂っているよう」と語っていて、共通するものがありますよね。

    ほかにも、創作には「右脳と左脳」や「論理と直感」などその両方が必要だということを、何人かの人がそれぞれの表現で話されていて。優れたクリエーターは直感優位に見えがちですが、みなさん自分をジャッジすることの重要性をおっしゃっていました。

    〉〉次ページ「100パーセントの天才である必要はない」に続く




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