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    「トラさん~僕が猫になったワケ~」筧昌也監督に聞く“実写ならではの企み”

    2019年02月14日
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    日販 ほんのひきだし編集部 浅野
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    「執行猶予1か月、過去の愚かな人生を挽回せよ。ただし、猫の姿で――」

    ある日突然、交通事故であっけなく死んでしまった“売れない漫画家”の高畑寿々男は、猫の姿で家族のもとへ戻ることとなった。
    唯一の代表作も最終回を描かないまま5年前に連載中止、妻・奈津子がパートで稼いだ生活費をギャンブルにつぎ込むだらしない毎日を送ってはいたが、娘の美優と3人で仲良く暮らしてきたつもりだった。

    家族と言葉を交わすこともできないこんな姿になった今、自分に何ができるのだろう……?

    Kis-My-Ft2 北山宏光さんが映画初出演にして初主演、しかも“猫”の役をつとめるということでも話題の映画「トラさん~僕が猫になったワケ~」が、ついに2月15日(金)に公開されます。

    一見コメディのようでいて、いち早く鑑賞した人からは「泣ける」と賞賛の声があがっている本作。

    今回はメガホンを取った筧昌也監督に、そんな異色のストーリーをどう映画で表現したのかお話を伺いました。

    筧昌也(かけひ まさや)
    1977年生まれ、東京都出身。日大芸術学部 映画学科映像コース卒業。2003年、中編映画「美女缶」がゆうばり映画祭グランプリなど、国内の自主映画祭の賞を数多く受賞し、2004年に劇場公開される。2008年、金城武を主演に迎えた「Sweet Rain 死神の精度」で長編映画監督デビューを飾る。
    その後、オリジナル原案である「ロス:タイム:ライフ」シリーズ(2003~2010/CSなど)、「豆腐姉妹」(2010/WOWOW)、気ぐるみ表現を使った短編「世にも奇妙な物語~PETS~」(2011/フジテレビ)、「死神くん」(2014/テレビ朝日)、バカリズム脚本の「素敵な選TAXI」(2014・2016/フジテレビ)、「探偵物語」(2018/テレビ朝日)などを手がける。

     

    「本編91分」の理由

    ―― 本作は、板羽皆さんの漫画『トラさん』を映画化したものです。まずは、原作を読んだときの感想をお聞かせください。

    初めて読んだのはちょうど4年くらい前だったんですが、深いところまで描いていながらかわいらしい世界観で、1人の読者としてとても面白かったです。そこからは映画監督として、「換骨奪胎」というか、しっかり読み込んで咀嚼して吐き出すという作業をしているので、今となっては原作との距離感はすごく不思議な感じですが……。

    トラさん 1
    著者:板羽皆
    発売日:2014年12月
    発行所:集英社
    価格:453円(税込)
    ISBNコード:9784088453248

    ―― 映画「トラさん〜僕が猫になったワケ〜」について最初にお聞きしたいのが、作品の長さです。昨今子ども向けのアニメ映画でも100分を超えるものが多いなか、「トラさん」は91分と短いですよね。

    そうですね。「トラさん」に関しては、初めの頃から90分くらいの映画にしたほうがいいなと思っていました。

    ―― 1人の観客としての感想ですけれど、世代を問わずみんなで気軽に観られて、それでいて最後にしっかりと残るものがある、すごく気持ちのいい映画でした。「家族の絆」というテーマを真摯に描いてはいるけれど、重たくないというか。

    『トラさん』のストーリーってすごくシンプルで、普遍的なことが描かれていますよね。絵もかわいらしいから、大仰なことをするんじゃなくて、サクッと観られて明るくて、終わってみたら何か温かいものが残っているような、まさにそんな作品にしたかったんです。「B級」という言葉をネガティブに使う人も多いですけど、いい意味での「B級」。芸術的、文芸的なモノではなくて、つまり、プログラムピクチャーのようにしたいなと。

    僕自身が、あまり多くを語るような映画が好きではないというのもあります。映画はシーンとシーンの間、画と画の間を想像してなんぼだと思っているので、「この人たち、この後どうしたのかな」「物語で描かれる以前はどうだったんだろう」というふうに想像する余地を残したい。これは普段から考えていることでもあります。

    伝えたいことがたくさんあるなら、2時間半かけて中途半端にしてしまうより、連続ドラマで十数話かけたほうがいいと思っています。それに2時間半もあると、もっとすごい何かを得て帰りたいと期待しちゃうじゃないですか。

    ―― そうですね。

    映画を観るときって、「観る時間」が大体、あらかじめわかっているじゃないですか。なので、観客の皆さんも「どんなことが起こったとしても90〜100分経てば結末がくる」と思っていて、逆にいうと、観ている時から物語の向かう方向を探っているんですよね。

    漫画の連載だと「エピソード単位で、主人公に乗っかってストーリーを追っていく」という感覚があると思うんですけど、映画に関してはもうちょっと「全体の地図」のようなものを示すことも大事だと意識しています。

    ―― そういう意味では、映画は原作よりも「なぜ寿々男が猫になったのか」の意味づけがはっきりしていますよね。これは監督のアイデアですか?

    そうです。寿々男に課せられたものって、ある意味チャンスではあるけれども「罰」ですよね。なので「猫の姿で家族のもとへ戻る」というもともとの設定に、「唯一の代表作が猫の漫画なのに、実は猫が大嫌い」という要素を加えさせてもらいました。

    「自分が忌み嫌っていたものになってしまう」というのは王道のパターンなので、「ということは、猫になったことをクリアするんだな」というのを無意識に伝えることができる。王道な作りではあるけれど、今回はこういう、道筋が明快な映画で良いと思いました。

     

    実写映画ならではの「リアリティ」と「ファンタジー」

    ―― 逆に、映画をこれから観る方にとって“未知”なのが、そもそもの「実写映画で人間が猫の役を演じる」というところだと思うんです。

    そうですよね(笑)。驚いた方も多いと思います。

    ―― でも、いざ観てみるとまったく不自然じゃなかったんですよね。むしろ随所の演出のおかげで「あ、そうだ。寿々男は今、猫なんだった」と我に返るほどで。どういうところにこだわりましたか?

    「作り込みすぎないこと」と「潔さ」ですね。ツッコミどころをもたせるという意味でも、“動物らしさ”は追求しすぎないようにしました。

    技術的には、お金をかければもっと猫らしくできますよね。特殊メイクをしたり、CGでしっぽを動かしたりとか。でも、北山くんが“完全な猫”に近づけば近づくほど、それが北山くんである意味がなくなってしまう。もっと大事なところが欠落してしまうんです。

    なので今回の猫スーツに関しても、あえてノースリーブにして、人間の肌を残しました。特に寿々男は、人間でもあるし猫でもあるわけですから。

    ある程度作り込んだら、あとは観る方の想像力にお任せする。これが猫だと定義したら、そこから深くは干渉しないという「潔さ」はとても大事です。90分という短さも、この「潔さ」につながっていると思います。

    ―― 正直に言うと、観る前は「人間が実写映画に猫の姿で登場する」ということに対して、「人間らしさ」「猫らしさ」ってどこにあるんだろう?と思っていました。

    映画って、映像である以上リアリティが必要ですからね。「キャラクターの造形を作り込むなら、周りも作り込まないと」という思い込みのようなものは作り手の側にもあって、ミュージカルや舞台ではなく映画でこれをやるというのは、やっぱりチャレンジングだったと思います。

    ▼人間たちに見えている寿々男は、猫の姿。“トラさん”を演じているのは猫の「金時」です。

     

    筧昌也監督から見た「俳優・北山宏光」

    ―― 北山宏光さんも「オファー時は驚いた」とコメントされていましたね。どんなことがどれくらい求められているのか、消化して自分のものにするのが難しそうだなと思いました。

    やっぱり初出演で“猫”というのは、なかなか怖かったと思いますよ。でも、やっぱりあくまで実写映画なので、気持ちとしては「猫のパロディをやっている」くらいでちょうどバランスが取れるなと考えていました。

    北山くんも「猫に見えるか」というところはすごく気にしていて、細かい動きなどもいろいろと提案してくれました。

    ―― “人間”のときに、北山さんが演技でこだわっていたことはありますか?

    漫画を描くシーンですね。(本物の)漫画家が描いている姿に近づくように、実際の道具を使って、ずいぶんたくさん練習してもらいました。

    「吹き替えでしょ?」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、ほとんどは北山さんが描いていますよ。僕もどっちかわからないくらいです。

    ―― それを伺うと、寿々男が漫画を描く姿がますます胸に迫ってきました……。

    ▼淡白ながら、寿々男の行動をしっかり見ている“あの世の関所”の裁判長にも注目です。

     

    子ども時代から好きだった“ある絵本”と「トラさん」の共通点

    ―― 最後に、寿々男の代表作『ネコマン』は本作において非常に重要な要素の一つですが、もし筧監督ご自身が大事にされている本があれば教えていただきたいです。

    今たまたま思い浮かんだので、原作者の板羽先生にもお話ししていないんですけど、『100万回生きたねこ』が子どもの頃から好きで、今自分の子どもにも読んでいるんですよ。

    読み聞かせるようになったのは、「トラさん」が完成して半年くらい経った頃ですかね。ふと「あれ、これ『トラさん』に世界観がちょっと似てるな」と気がついて。

    100万回生きたねこ
    著者:佐野洋子
    発売日:1977年10月
    発行所:講談社
    価格:1,512円(税込)
    ISBNコード:9784061272743

    子どもはまだ小さいんですが、絵はすごく気に入っているみたいです。内容を理解できるのはもう少し大きくなってからなので、途中で飽きちゃったりもするんですけど(笑)。

    大人になってからも絵本は好きで、今もけっこう読み返します。『100万回生きたねこ』もその一つです。

    ―― 本日はありがとうございました!

    原作漫画『トラさん』は、全3巻で発売中。映画は第2巻の最後と同じ結末を迎えますが、第3巻ではその後のエピソードとともに、トラさんとなった寿々男の「本当のラスト」が描かれています。こちらもぜひ読んでみてくださいね。

    トラさん 3
    著者:板羽皆
    発売日:2019年01月
    発行所:集英社
    価格:475円(税込)
    ISBNコード:9784088441603

    映画「トラさん~僕が猫になったワケ~」

    出演:北山宏光、多部未華子、平澤宏々路、飯豊まりえ、富山えり子、要潤、バカリズム
    原作:『トラさん』板羽皆(集英社マーガレットコミックス刊)
    監督:筧昌也  脚本:大野敏哉  音楽:渡邊崇
    主題歌:Kis-My-Ft2「君を大好きだ」(avex trax)
    配給:ショウゲート

    torasan-movie.jp

    2月15日(金)全国ロードショー

    ©板羽皆/集英社・2019「トラさん」製作委員会




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