〈インタビュー〉『リング』『らせん』の作者・鈴木光司さんの最新作『ブルーアウト』はエルトゥールル号遭難事件をモチーフにした海洋冒険小説

2015年12月18日
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日販 商品情報センター 「新刊展望」編集部
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「エルトゥールル号遭難事件」をご存じだろうか。1890年9月、オスマン帝国の使節団が乗った軍艦・エルトゥールルが帰路の途中、和歌山県串本町沖で台風に遭遇、沈没し、500名以上の犠牲者を出した大規模な海難事故である。

鈴木光司さんの最新作『ブルーアウト』は125年前のその事件を下敷きに、今でも沈没船が眠る海に潜った2人の若者の、苦難と成長を描く海洋冒険小説だ。

ブルーアウト
著者:鈴木光司
発売日:2015年12月
発行所:小学館
価格:1,620円(税込)
ISBNコード:9784093864305

串本町のダイビングショップで働く29歳の女性ダイバー・高畑水輝は、1人のトルコ人青年・ギュスカンと出会う。彼はエルトゥールル号の犠牲者の遺族であり、いまだ海底に沈む、家族にとって曰く付きの品を探しに日本にやって来た。その遺品を引き上げるため、水輝は彼とともに事故が起きた海に潜るが、自然の脅威は2人を危機的状況に陥れていく。

鈴木さん自身もヨットを所有し、1万8,000マイルという豊富な航海経験を持つ。常に危険と隣り合わせの海でその怖さと懐の深さを知り尽くした著者が、持ち味である迫力ある筆致を存分に生かした本作は、まさに“野性”と“知性”がミックスされた「ものすごくストレートな作品」。

「海には道がないから、360度どこにでも行ける代わりに、自分で判断して決定しない限り進路は決まらない。日本人はマニュアル化は得意だけれど、決断を人に委ねたがる面がある。それでは海に出たらあっという間にお手上げ状態になってしまう。判断と決定の連続で、(人間性を)鍛えられるのも海の魅力であり、トレーニングの場でもある」

失敗や危険な状況をも逆手にとって、それを糧とし、自らの人生をより高めていく。困難に立ち向かう水輝とギュスカンの姿からは、海に乗り出す人間たちの、そんな逞しさが伝わってくる。

自然に立ち向かい、「厳しい状況に果敢にトライしていると、天がふと神秘の一端を垣間見せてくれることがある」。それは一見、別々の事象に思える事柄でも「実は因縁の糸でつながっていた」という“偶然”という名の必然。125年という時を経てその糸がつながる時、命をかけた冒険の先に彼らは何をつかむのか─。

「ディテールを書きこんでいるうちに、物語が動き出す瞬間がある。その力を利用して」ストーリーは加速していく。「ヨットも小説も自然の流れに対応して、なるべくいい選択をしながら目的とするものに辿り着く。モノを作るというのはそういうことだと思う」

小説を書く目的はもちろん「読者を楽しませること」。「読者は僕の船に乗り込んだのと同じ。僕が船長だとしたら、クルーにはほかのことでは味わえない楽しい経験をしてほしい。その代わりただでは済ませません(笑)」。目指すのは「読者の胸をざわつかせ、物事の新たな面に気付かせること。固定観念や先入観を崩すことが、小説を読む喜びだと思う」。そんな読書の“冒険”を、ぜひ体感してほしい。


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鈴木光司 Koji Suzuki

1957年静岡県浜松市生まれ。慶應義塾大学仏文科卒。『楽園』でデビュー。大ヒットした『リング』はハリウッドでも映画化。2013年『エッジ』でアメリカのシャーリー・ジャクスン賞を受賞。近著に『鋼鉄の叫び』『樹海』『野人力 オヤジが娘に伝える生きる原理』。


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(「新刊展望」2016年1月号「著者とその本」より転載)

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