• なぜヤギは、車好きなのか?日本初の「ヤギ部」顧問・小林朋道教授のヤギ本

    2015年12月07日
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    日販 商品情報センター「新刊展望」編集部
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    〈小林朋道さんの『なぜヤギは、車好きなのか? 公立鳥取環境大学のヤギの動物行動学』文庫版がこのほど発売されました。単行本刊行時(2012年5月)に寄せていただいたエッセイを再掲載します。〉

    なぜヤギは、車好きなのか?
    著者:小林朋道
    発売日:2015年12月
    発行所:朝日新聞出版
    価格:670円(税込)
    ISBNコード:9784022618436

     

    ヤギと心を通わせたい動物行動学者が書いたヤギの本  小林朋道

    私は、鳥取県にある公立鳥取環境大学に勤務している。動物行動学を専門として、日夜、研究と教育に励んでいる(学生たちからは、先生は好きなことだけやっているように見える、と言われることもあるけれど)。部員たちから頼まれて、たくさんの学生サークルの顧問もしており、ここだけの話であるが、それは、私がいかに学生たちから深く信頼されているかを顕著に示しているのである(優柔不断で腰が軽いので頼みやすいから、という噂もあるが)。

    ただし、ヤギ部というサークルについては、ちょっと事情が違っている。大学が創立された年に、私のほうが学生に呼びかけてできた部なのである。したがって私が顧問をすることになり、今年で十四年目になる。ところで、今回、『なぜヤギは、車好きなのか?』という本を書いたのであるが、サブタイトルに「公立鳥取環境大学のヤギの動物行動学」とつけたのは、次のような私の思いがあったからである。

    ヤギを単なる家畜として見るのではなく、野生動物としての特性を色濃くもった、ヤギという生物種の動物行動学を織り交ぜたい。

    さて、新しい本を書いたときはいつも、大学の広報課のOさんのところにもっていく(大学の宣伝のためにそうするように言われているのだ)。Oさんは、大学のHPに、多すぎず少なすぎず、簡潔な文章で本についての紹介を書く。いよいよHPにアップするときには、事前に記事の原稿が、確認のために私に送られてくる。今回の本の場合もそうであった。

    Oさんの記事を確認した私はすぐにOさんに返事を返した。「うまく紹介してもらってありがとうございます。これで結構です」。そしたらまたOさんから返事がきた。その返事の中には次のような文章が含まれていた。「……拝読させていただいて何度も涙腺が大変なことになりました。ヤギコの名前とか、もっと盛り込みたくなるのをぐっと抑えました……」

    私はOさんの人柄を思い、同時に、あらためてヤギたちのことを思った。

    私は、Oさんの「涙腺が大変なことにな」った本の部分はどの辺りか、だいたい想像はついた。でもそれは、その“部分”を取り巻くヤギ達の物語があってはじめて、心動かす“部分”になるのである。きっと、Oさんは、本をしっかり読んでくださったに違いない。

    実は、本の最後の章で、部の創立とともに第一号のヤギとなり、部員から「ヤギコ」と名づけられたヤギが、本の完成の直前に逝ってしまったことを書いていた。それは私にとってつらい執筆になったのだが、書くことによって傷が癒されるような気持ちにもなった。他のヤギや部員たち、そして私といろいろなふれあいをしながら生きてきたヤギコの十一年は、私にとっても、人生の中で忘れられない時間である。いろいろな思い出を回想しながら書いた一章だった。そして、私は、Oさんからのメールを読んで、ヤギコが、Oさんの頭の中で生き続けているような気持ちになった。

    今回の本を書いた私の主要な願いは、「読まれた方の、ヤギという動物についての、動物行動学的な理解が深まること」、そして「ヤギという動物に対する思いやりが深まること」であった。両者は、一見、相反するような内容にも思えるが、実際には互いに強めあうものなのである。きっとOさんは、そんな私の願いをかなえてくださったに違いない。

    最後に一言。本の帯には「……ほのぼのエッセイ」と紹介されているし、学生たちからは、「先生は好きなことだけやっているように見える」と言われたりすることもある。しかし、私も毎日、人並みに、仕事や家族のことで悩みや苦しみももちながら懸命に生きているのである(そりゃ、まー、多少は職場でいろいろ勝手なことをして、動物たちのことなどでいろいろ迷惑はかけている面もあるかもしれないが)。そういった懸命な毎日の中で書いた本であることを、行間から読みとっていただければ幸いである。いや無理をしてでも読みとって下さい。


    小林朋道さんとヤギコ(推定)小林朋道  Tomomichi Kobayashi
    公立鳥取環境大学教授。専門は動物行動学。1958年岡山県生まれ。岡山大学理学部生物学科卒業。京都大学で理学博士取得。著書に『先生、洞窟でコウモリとアナグマが同居しています!』『先生、ワラジムシが取っ組みあいのケンカをしています!』などの先生シリーズ、『ヒトの脳にはクセがある 動物行動学的人間論』『ヒト、動物に会う コバヤシ教授の動物行動学』ほかがある。

    先生、洞窟でコウモリとアナグマが同居しています!
    著者:小林朋道
    発売日:2015年06月
    発行所:築地書館
    価格:1,728円(税込)
    ISBNコード:9784806714941
    先生、ワラジムシが取っ組みあいのケンカをしています!
    著者:小林朋道
    発売日:2014年05月
    発行所:築地書館
    価格:1,728円(税込)
    ISBNコード:9784806714750
    ヒトの脳にはクセがある
    著者:小林朋道
    発売日:2015年01月
    発行所:新潮社
    価格:1,188円(税込)
    ISBNコード:9784106037610

    (「新刊展望」2012年7月号より)
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