• 中田永一7年ぶりの長編小説『ダンデライオン』の“悲しき出自”とは

    2018年10月22日
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    日販 ほんのひきだし編集部「新刊展望」担当
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    10月25日(木)にSFミステリー『ダンデライオン』を発売する中田永一さん。中田さんにとって本作は、新垣結衣さん主演で映画化された『くちびるに歌を』以来、7年ぶりとなる長編小説です。

    11歳の少年が、目が覚めると31歳になっていた――そんな場面から幕を開ける本作。“タイムリープ(時間跳躍)”は、中田さんが「いつか書きたいと思っていた」思い入れのある題材だそう。

    一方、出版までに5年の歳月を要したという小説『ダンデライオン』。そこまで長い時間がかかってしまったのには、小説家とは別の顔を持つ、中田さんならではのある理由があったのだそうです。そんな“紆余曲折”あった完成までの道のりについて、中田さんにエッセイを寄せていただきました。

    ダンデライオン
    著者:中田永一
    発売日:2018年10月
    発行所:小学館
    価格:1,620円(税込)
    ISBNコード:9784093864992

     

    悲しき出自のタイムリープ

    小説『ダンデライオン』は時間SFというジャンルの作品です。主人公の少年の頭に野球のボールがぶつかったかとおもうと、すぽーんと意識が時間を飛びこえて20年後の大人の体に入りこんでしまうのです。主人公がそこで出会ったのは、自分の結婚相手だと主張する女性でした。そういう内容です。

    タイムリープ(時間跳躍)を題材にした物語が僕は大好きです。10代のころに高畑京一郎先生の『タイム・リープ あしたはきのう』を読んだとき、あまりのおもしろさに眠れなくなりました。時間を飛びこえて、少年と少女が出会ったりして、ちょっとした事件に巻きこまれたりする、そういう物語を自分もいつか書きたいとおもっていました。だから、今回『ダンデライオン』を出版できたことを誇らしくおもいます。

    しかし、この作品が完成するまでには紆余曲折がありました。というのも、『ダンデライオン』は元々、映画の脚本だったのです。

    今から5年前、2013年に初稿を書き上げました。その後、映画会社の知人に読んでいただき、様々な指摘をうけながら、20回ほどの改稿を行いました。しかし5年間の営業活動も空しく、この脚本に出資してくださる映画会社を見つけることはできなかったのです。

    それは仕方のないことでした。監督は無名の安達寛高という人物で、どこの馬の骨ともしれない奴だったのですから。ちなみに安達寛高というのは僕の本名です。この15年間、僕は自主映画を撮ったり、出資を受けて短編映画を撮ったりしていたのですが、長編劇場用映画はまだ撮ったことがありません。おまけにこれまで完成させた作品もホラー色の強いものばかり。

    映画会社は、この脚本に出資するのは賭けだとかんがえたのでしょう。僕が映画会社の立場でも、出資はためらうとおもいます。

    そのようなわけで、映画化の目処が立たずに脚本『ダンデライオン』は放置されていたわけですが、このまま忘れ去るのはもったいないという気持ちがあり、一念発起して小説版を執筆したという次第です。そのような悲しき出自の作品ではありますが、しかし内容はきっとおもしろいはず。出資が得られなかったのは、監督が無名の僕だったからであって、内容そのものには問題がないはず! そう信じています。

    脚本のときは低予算映画のつもりだったので、登場する舞台も限定的で、できるだけお金のかからないシーンで構成していました。

    しかし小説は予算のことをかんがえなくていい! 尺も長くなっていい! 好き勝手にシーンを追加して、脚本よりもずっと完成度の高いものになっているはず。いや、本当に小説にして良かったです。小説にしたことで、脚本段階では見過ごされていた粗に気づくことができましたし、あのまま映画にならなくてむしろ良かった。そうおもいます。

    5年間、映画化されなかった故に、時間をかけて練りに練り込まれてしまったパズルのようなタイムリープ小説が完成しました。どうぞよろしくお願いします。

    中田永一 Eiichi Nakata
    1978年、福岡県生まれ。2008年『百瀬、こっちを向いて。』でデビュー。他の著書に『吉祥寺の朝日奈くん』『くちびるに歌を』『私は存在が空気』などがある。

    ダンデライオン
    著者:中田永一
    発売日:2018年10月
    発行所:小学館
    価格:1,620円(税込)
    ISBNコード:9784093864992

    11歳の下野蓮司はある日、病院で目覚めると大人の姿になっていた。20年の歳月が流れていた。そこに恋人と名乗る西園小春が姿を現す。子ども時代と大人時代の一日が交換されたのだ、と彼女は話した。
    一方、20年後の蓮司は11歳の自分の体に送り込まれていた。ある目的を達成するために、彼は急いでいた。残された時間は半日に満たないものだった――。

    小学館 公式サイト『ダンデライオン』より〉




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