• 夏目漱石『それから』で描かれた横恋慕。もし慰謝料請求されたらいくらになる?【弁護士に聞いてみた】

    2018年10月14日
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    ほんのひきだし編集部
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    ※この記事には夏目漱石『それから』の重大なネタバレが含まれています。というか、最初から最後までストーリーが書かれています。

     

    『それから』とは

    夏目漱石によって書かれた小説。1909年発表。

    『三四郎』(1908年)、『門』(1911年)と合わせて三部作と見る向きがある。漱石は1907年に朝日新聞社に長編小説を連載することを条件に入社しており、この作品も朝日新聞上で連載された。

    それから
    著者:夏目漱石
    発売日:2013年10月
    発行所:集英社
    価格:518円(税込)
    ISBNコード:9784087520552

     

    『それから』のあらすじ(ネタバレ含む)

    長井代助は定職に就かず、親から定期的にお金をもらって生活をしていた。

    ある日、大学時代からの友人である平岡常次郎・三千代夫妻が、東京へやってくる。

    常次郎は大学卒業後、銀行に就職し、地方へ転勤していたのだが、部下の使い込みの責任を取る形で退職したのだ。

    三千代は代助に借金を頼みにくる。代助はお金を貸したり、常次郎の就職先を探したりと2人のために動く。

    代助は親から縁談の話を持ちかけられるが、三千代を愛していることに気が付き、それを断る。

    代助は三千代に告白をし、受け入れられるが、ほどなくして三千代は病に倒れてしまう。

    そして、縁談を断った影響で親からは絶縁状が届けられるのだった。

     

    弁護士に聞いてみた

    ──前回から引き続き、早津弁護士に聞いてみたいと思います。これはいわゆる三角関係の話ですね。

    答えてくれた弁護士:早津花代(はやつ・はなよ)さん
    離婚問題を扱う弁護士。原法律事務所所属。

    早津:これは代助と三千代は肉体関係があるという前提の話なんですか?

     

    ──肉体関係……たぶんプラトニックな関係ですね。

    早津:プラトニックですか、難しいですね。

     

    ──直接の描写はないですね。お互いの家に行き来するだけなので。

    早津:プラトニックを前提とすると、違法性はないですよね。 すると、今度は離婚事由があるのかということになります。

    まず、これのポイントは夫の常次郎も離婚していいと思っているのか、離婚したくないと思っているかによると思います。

    三千代から離婚請求をしている場合とすると、ただの離婚請求となるので、ポイントは別居期間が何年になるのかというような話になりますね。

     

    ──別居はしてないですね。

    早津:これ、話としてはシンプルなんです。常次郎は代助に対して慰謝料を請求できるのかという話なので。

     

    ──できるのでしょうか?

    早津:肉体関係がないと慰謝料請求はできませんね。違法行為には当てはまりません。

    彼女が家を出てしまって、代助のところに住むようになったというのなら、同棲していて肉体関係だけないというのは認められないと思います。

    ただ、これは通っていただけですよね。一緒に暮らしているわけじゃなく。

     

    ──一緒には暮らしていないです。

     

    2人の関係が破綻したのは代助が原因なのか?

    早津:常次郎と三千代は普通に暮らしていて、代助のところに通っている。で、妻をくださいと言っているということですか?

     

    ──お互い何度も会って心惹かれていくっていう。

    早津:お金を借りに行くんですよね?

     

    ──そうです。三千代は代助に借金の頼みに行っています。で、代助は三千代のためにお金を用意すると。

    早津:常次郎は銀行を退職して東京に戻ってきたんですよね。常次郎は三千代に何をしたんですか?

     

    ──体調の悪い三千代を放っておいたり、お金を使い込んで飲み歩いたりとかですね。

    早津:お金の使い込みですか、よくありますよね。

    だから、これ代助が原因じゃない可能性がありますね。離婚原因は代助のせいだと常次郎は言うけども、いやいや、あなたも酷いことしていますよね、という。

    そうなると、いつの時点で婚姻関係が破綻していたのかという話になります。で、代助とは不貞行為はないという。

    このあとの三千代の行動次第ですね。代助のところに転がり込むのなら、不貞行為認定されちゃいますね。いくらなんでも。

     

    婚姻関係が破綻したのはいつの時点なのか

    ──一緒に住むかどうかなんですね。

    早津:というより、一緒に住んでいるとプラトニックな関係と言われても無理がありますよね、という判断になります。

     

    ──例えば、週刊誌の記事とかでホテルから出てくる男女の写真を載せたりしていますが、ああいうのがあれば不貞行為と認められる?

    早津:肉体関係があることを不貞行為といいます。構成要件をしっかりと見て判断します。

    それとは別に、婚姻関係が継続し難い重大な事実があれば離婚はできますよ。

     

    ──もし2人が不貞行為を行っていた場合、常次郎は慰謝料請求できるんですか。

    早津:でも、その場合も三千代は「いやいや、あなたが」と反論しますよね。

    婚姻関係の破綻にいたる原因はなんだったのかという話ですね。お金がないのに浪費して、病気のときに顧みなかったという時点で、もう8割破綻していたという評価はできますよね。

     

    まとめ

    ──まとめさせてください。『それから』で常次郎が三千代に対して慰謝料を請求したとしたら、いくらになりますか。

    早津:仮に不貞行為があったとして、それは婚姻関係が破綻する最後のきっかけにすぎないということであれば、100万円~150万円くらいが相当と判断されるのではないでしょうか。

     

    ──前回と同じぐらいですね。

    早津:そうですね。『舞姫』の場合と違って、子どもがいないので、それよりは少し下がる気がします。

    ポイントはどの時点で婚姻関係が破綻していたのか、ですね。それをお互い主張して、判断することになると思いますね。

    事実を共有することは、実はすごく難しいんですよ。

    聞いた人:菊池良(きくち・りょう)
    ライター、Web編集者。著書に『もし文豪たちがカップ焼きそばの作り方を書いたら』『世界一即戦力な男』がある。

     

    この記事を監修した弁護士

    法律事務所ブルーム
    早津 花代
    離婚問題を積極的に扱う弁護士。丁寧な対話を心がけており、事案によってカウンセラー(臨床心理士)とチームで対応することもある。第二東京弁護士会所属。

    ※この記事は、弁護士の総合検索サイト「あなたの弁護士」に2018年4月24日に掲載されたものです。

     

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