• 〈インタビュー〉畑野智美さん『感情8号線』 環八でつながる6つの街を舞台に描く、切ない恋物語

    2015年11月17日
    楽しむ
    日販 商品情報センター 「新刊展望」編集部
    Pocket

    羽田空港を起点として、東京23区の西側を取り巻く幹線道路・環状八号線。畑野智美さんの新刊『感情8号線』は、この“環八”の沿道にある街を舞台に、恋や人生にままならない思いを抱える女性たちを描いた連作短編集だ。

    感情8号線
    著者:畑野智美
    発売日:2015年10月
    発行所:祥伝社
    価格:1,620円(税込)
    ISBNコード:9784396634803

    役者になるため上京し、〈荻窪〉の餃子屋で働きながら、バイト仲間に報われない恋をする真希。インテリアショップで働く絵梨は、〈八幡山〉で同棲する彼から日常的に暴力を振るわれている。幸せな結婚をしたばかりなのに不安でいっぱいの亜実は、新居のある〈千歳船橋〉で元彼に再会。専業主婦の芙美は〈二子玉川〉の高級マンションで裕福な生活を送りながらも、夫の不倫に苦しんでいる。〈上野毛〉で一人暮らしの里奈は、美人でスタイル抜群、仕事もできるが恋愛は空回りばかり。生まれも育ちも〈田園調布〉の麻夕は、世間知らずの本物のお嬢様。住む世界の違いを実感しながらも、好きな人への思いを抑えられない。

    舞台となる6つの街は同じ環八沿いにありながら、最寄りの路線や街の雰囲気はそれぞれ異なる。直線距離だと近いのに、電車だと乗り換えが必要で遠回りになる。そんな“近くて遠い場所”に暮らす、ゆるやかにつながる6人の女性たちに、畑野さんは「読んだときにふっと知り合いの顔が浮かぶように」、あえて「よくある名前」を付けた。

    「いま流行っているツイッターやフェイスブックなどのSNSは、隣の芝生を一層青く見せるシステム。公の場所なので良いことしか書けないし、写真や文章も芝生をより青く見せるために工夫されたもの。それをずっと見ていると、何で私だけうまくいかないのだろうという気持ちになるけれど、本当はみんな何かしら問題を抱えている。友だちの失恋話を聴くような感じで、良いことだけじゃない、悪いことも日常的にあるんだということを書きたいと思いました」

    主人公が入れ替わるたびに、それまでは外側からしか見ることのできなかった人物の状況や真情が明らかになる。彼女たちの周囲への視線は、畑野さん自身が「改めて読んで、この人たち、こんなに意地悪でいいのかな(笑)」と思ったと語るように、時に辛辣だ。しかし、「喜怒哀楽や嫌な感情を持つのは人として当然なこと」。加工された誰かの日常に「いいね!」と返すよりも、心の底から感じる「そうだよね」という共感は、蓋をしがちな感情を解放してくれる。小説というフィクションが持つリアリティのなせる業だろう。

    タイトルの“8”には「エンドレス」の思いも込めた。「小説としてはこれで終わりですが、彼女たちの人生はずっと続いていく」。各章のラストではその後の波乱の兆しにドキッとすることも。人間関係は平穏なばかりではないけれど、だからこそ人は変わっていける。「実際に会って話して、揉めたり、相手のことを思いやったり。人間は誰かといるからこそ成長するということは、ずっと書いていくと思います」


    畑野智美さんRGB.01畑野智美 Tomomi Hatano
    1979年東京都生まれ。2010年『国道沿いのファミレス』で第23回小説すばる新人賞を受賞しデビュー。他の著書に『夏のバスプール』『海の見える街』『南部芸能事務所』シリーズ『運転、見合わせ中』『ふたつの星とタイムマシン』『みんなの秘密』などがある。


    現在オンライン書店「Honya Club.com」にて畑野智美さんのサイン色紙が抽選で当たるキャンペーンを実施中です!

    〉詳しくはこちら
    http://www.honyaclub.com/shop/e/etenbo52a/


    (「新刊展望」2015年12月号「著者とその本」より転載)
    common_banner_tenbo

    タグ
    Pocket






  • 関連記事

    ページの先頭に戻る