• 『みをつくし料理帖』の髙田郁さんから全国の書店員さんへのメッセージ「バックヤードへ愛を込めて」

    2018年09月07日
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    日販 ほんのひきだし編集部「日販通信」担当
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    髙田郁さんの『みをつくし料理帖』。天涯孤独な少女・澪が料理の腕一本を頼りに艱難辛苦を乗り越え、江戸で一流の女料理人を目指す姿を描いた、人気時代小説シリーズです。黒木華さん主演で昨夏連続ドラマにもなりました。

    第1作『八朔の雪 みをつくし料理帖』(2009年5月刊行)から第10作『天の梯 みをつくし料理帖』(2014年8月刊行)まで全10巻で物語は完結していますが、このたび9月3日(月)に『花だより みをつくし料理帖 特別巻』が発売されました。

    花だよりみをつくし料理帖特別巻
    著者:髙田郁
    発売日:2018年08月
    発行所:角川春樹事務所
    価格:648円(税込)
    ISBNコード:9784758441971

    今回は発売に合わせて、髙田郁さんから本屋さんにまつわるエッセイをお寄せいただきました。

    今年が作家生活10周年となる髙田郁さん。全国の書店員さんへの熱いメッセージが綴られています。

    髙田 郁
    たかだ・かおる。兵庫県宝塚市生まれ。中央大学法学部卒。1993年、レディスコミック誌「YOU」にて漫画原作者(ペンネーム・川富士立夏)としてデビュー。2008年、小説家としてデビューする。著書に「あきない世傳 金と銀」シリーズ、「みをつくし料理帖」シリーズ、「出世花」シリーズ、『あい―永遠に在り』『銀二貫』『晴れときどき涙雨―髙田郁のできるまで』『ふるさと銀河線―軌道春秋―』などがある。今年、作家生活10周年を迎えた。

     

    バックヤードへ愛を込めて  髙田 郁

    「あれ? 写真じゃなくて、イラスト?」

    不審に思われたかたもいらっしゃるかと存じます。申し訳ありません、私は顔出しを一切しておりませんので、初登場にもかかわらず、イラストで失礼します(ぺこり)。至って小心者なのです。

    狭い部屋が落ち着きます。基本、隅っこや物陰が好きです。目立つことが何より苦手で(実際、全然目立ちません)、「あ、居たの?」と言われると、妙にホッとします。そんな私が大好きなのが、書店さんのバックヤード。「狭いところですが」と書店員さんに言われて案内される、あそこです。

    チビの頃から、本屋さんに親しんで育ちました。帰宅してランドセルを置くと、本屋さんに走ります。当時は近所に何軒も本屋さんがありましたから、ハシゴしました。ハシゴ酒ならぬ、ハシゴ本屋さんです。

    その頃から、書店ごとで棚の顔が違うことも知っていました。本屋のおじちゃん、おばちゃんに可愛がってもらいました。長じてからも、日常の中に本屋さんがありました。でも、ただひとつ、決して踏み込めない場所、それが「関係者以外立ち入り禁止」のバックヤードでした。

    角川春樹事務所さんで「八朔の雪 みをつくし料理帖」を出して頂いた時、営業担当者さんが、

    「髙田さん、書店回りをしましょう」と、

    言ってくださいました。

    はて、書店回りとは何ぞや、と思いながら、営業マンの後ろをついて歩けば、めくるめく禁断の領域、もとい、「立ち入り禁止」の扉が開いたのです。何この幸せ。何なの、このご褒美。

    「済みません、こんなに雑然としてて」

    「暗くて狭くて、ゴメンなさい」

    様々な台詞とともに、バックヤードに招かれる至福を、生まれて初めて体験しました。狭いところや、物陰が多いところなど、憎いほど私好みなんです。これを機に、よく書店回りをさせて頂くようになりました。

    バックヤードを覗く機会が増えるに従って、書店員さんがどれほどハードワークか、そして皆さんがどれほど本を愛しているかを知るようになります。

    足を運べる書店さんの数には限りがありますから、全体をひと括りには出来ません。それでも、例えば旅先で訪れた書店さんで、バックヤードへと続く扉を目にする時、書店員さんたちがそこでどう過ごしているか、想像できるのです。

    通常業務だけでも大変なのに、合間にゲラを読み、コメントを考える。あるいは「これ」と思う作品に手書きでPOPを添える。店頭陳列のための小道具を誂える─―そんな姿が透けて見えるのです。

    「こんな風に展開してくださってますよ」

    「こんなお薦めコメントを頂きました」

    版元の営業マンや担当編集者から画像を送ってもらう度、バックヤードで奮闘している書店員さんたちの姿を想像して、感謝の気持ちで胸が一杯になります。その大変さを知っていればこそ、拙著のために時間を割いてくださったことが、本当にありがたいです。

    今年、お陰様で、デビューから十年の節目を迎えることが出来ました。折々に思うのは、全国の書店員さんたちに、返しきれないほど多くの恩を受けた、ということです。新人だった時から十周年の今日まで、誰かが書いてくださったPOPや推薦コメントに、ずっと背中を押されてきました。自信を失った時、書店さんを覗き、拙著が並んでいるのを目にして、「ああ、この信頼を裏切らないようにしよう」と強く思うのです。

    顔出しをしていないため、気付かれることは稀なのですが、柱の陰からハルキ文庫の棚やらバックヤードの入口やらを眺めて涙ぐんでいる女が居たら、それはおそらく私です。全国の書店員の皆さまに感謝、多謝。

    【著者の新刊】

    花だよりみをつくし料理帖特別巻
    著者:髙田郁
    発売日:2018年08月
    発行所:角川春樹事務所
    価格:648円(税込)
    ISBNコード:9784758441971

    澪が大坂に戻ったのち、文政五年(一八二二年)春から翌年初午にかけての物語。店主・種市とつる家の面々を廻る、表題作「花だより」。澪のかつての想いびと、御膳奉行の小野寺数馬と一風変わった妻・乙緒との暮らしを綴った「涼風あり」。あさひ太夫の名を捨て、生家の再建を果たしてのちの野江を描いた「秋燕」。澪と源斉夫婦が危機を乗り越えて絆を深めていく「月の船を漕ぐ」。シリーズ完結から四年、登場人物たちのその後の奮闘と幸せとを料理がつなぐ特別巻、満を持して登場です!

    角川春樹事務所公式サイト『 花だより みをつくし料理帖 特別巻』より)

    (「日販通信」2018年9月号「書店との出合い」より転載)




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