• 子どもたちの「友だち」になれるような主人公を 『若おかみは小学生!』作者・令丈ヒロ子さんインタビュー

    2018年09月14日
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    日販 ほんのひきだし編集部 浅野
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    交通事故で両親を亡くした小学6年生の女の子・おっこが、不思議な仲間たちとともに、祖母が営む温泉街の旅館で“若おかみ”として修業を始める――

    小学生女子を中心に圧倒的な支持を得てきた児童文庫シリーズ『若おかみは小学生!』。このたび待望のアニメ化を果たした同作の劇場版が、TVシリーズの放送に続き、ついに9月21日(金)に公開されます。

    2003年から2013年まで10年間にわたって刊行され、アニメ化決定時には初期の愛読者からも「アニメ化されたんだ!」「懐かしい!」と喜びの声があがった本作。

    第1作から15年経った今も世代をこえて愛される「若おかみ」の魅力をさぐるべく、今回は作者の令丈ヒロ子さんに、メールインタビューでお話を伺いました。

    若おかみは小学生!

    令丈ヒロ子(れいじょう・ひろこ)/作家
    大阪府生まれ。嵯峨美術短期大学卒業。講談社児童文学新人賞に応募した作品で注目され、作家デビュー。おもな作品に「若おかみは小学生!」シリーズ、『温泉アイドルは小学生!(全3巻)』『アイドル・ことまり!(全3巻)』『メニメニハート』『パンプキン! 模擬原爆の夏』(以上、講談社)、『あたしの、ボケのお姫様。』(ポプラ社)、『ハリネズミ乙女、はじめての恋』(KADOKAWA)、『なりたい二人』『かえたい二人』(PHP研究所)などがある。

     

    『若おかみは小学生!』ファン待望のアニメ化 原作者はどう見た?

    ――まずは制作決定時の率直な感想と、実際にご覧になった感想をお聞かせください。

    2013年に本編が終了したシリーズなので、制作決定を聞いておどろきました。そして大変うれしく、光栄に思いました。

    TV版・劇場版、どちらも原作のイメージや設定、エピソードなどをとても大事にしてくださっています。キャラクターも、原作さし絵の亜沙美さんの描かれたものが、そのまま本から飛び出してきたような感じです。アニメオリジナルの部分も大変よく考え、工夫してくださって、原作にあってもおかしくないようなものばかりです。

    あまりの完成度の高さ、キャラクターへの愛情と配慮に、感動しかありませんでした。

    ――劇場版アニメ制作にあたって、何か要望は出されましたか?

    初期の『若おかみは小学生!』を愛読してくれていた世代(みなさんもう、20代)だけでなく、今の読者の小学生たち、とくに低学年の小さな子にも楽しめるような作品にしていただきたいとお願いしました。

    ――TVシリーズと劇場版では、内容も、高坂希太郎監督をはじめ制作スタッフの顔ぶれも異なりますよね。

    TVシリーズでは「ユーレイや鬼の友だちとすごす、おっこの楽しい毎日」がメインで描かれています。劇場版では、それプラス、原作の後半で描いた、両親の死を乗り越え成長するおっこの姿が描かれています。それも高坂希太郎監督ならではの、繊細で美しい映像とともに……。感動、そして切なさでいっぱいになります。

     

    原作・TVシリーズにはなかったシリアスな展開も……

    ――劇場版では約90分という時間のなかで、原作のエピソードを織り交ぜつつ、原作では描かれなかった交通事故の真相、そして「おっこと両親の物語」が描かれています。もちろんコミカルなシーンも満載ですが、映画には胸が苦しくなるようなシリアスな要素が多分に含まれていて、非常に見ごたえがありました。

    おっこの両親、また事故に関するシーンなどは、高坂監督と脚本の吉田玲子さんの作です。原作では、おっこが両親の死を受け止め、乗り越えていくところはファンタジー設定で、しかも長いので、どうやって90分にまとめるのかな?と思っていたので、なるほどと感心しました。

    的確でどの世代にも伝わりやすく、作品の大事な部分やおっこのキャラクターが生きる良いエピソードだと思います。

    物語のカギとなる木瀬さん、おっこの両親とも、そのまま原作に出てきていても違和感のないキャラクターであり、同時に「若おかみは小学生!」の世界を深め、大きくしてくれた重要な存在だと感じました。

    ▼おっこの両親。父の声を薬丸裕英さん、母を鈴木杏樹さんが担当している。

    ▼物語の重要なカギを握るキャラクター「木瀬文太」(画像中央)。杖をついているが……?

     

    おっちょこちょいだけど明るくて一生懸命 等身大な“おっこ”はどうやって生まれた?

    ――原作『若おかみは小学生!』は、累計発行部数300万部超の人気シリーズです。等身大のキャラクターが魅力的な主人公・おっこや、春の屋旅館の世界がどのようにして生まれたのか教えてください。

    当時(2000年初期)、児童文庫ではあまり女の子向けのシリーズ物がなくて、女の子が主人公で、女の子読者が喜んでくれそうなものを……という依頼をいただきました。それで、元気で前向きな女の子が主人公で、大人もおどろくような活躍をする話がいいと思いました。

    温泉旅館のおかみなら、女の子が大人のお手伝いをしつついろんな人と出会える、それにおいしそうな食べ物をたくさん描けそうだし、いい設定かなと思いました。わたし自身が温泉好きで、よく行っていたというのもあります。

    当時読者に対して思っていたのは、子どももいろんな悩みや痛みがあるのだから、それをおもしろいものを読んで、笑ったり泣いたりして、スッキリしてもらって、また元気に生活していってほしいということでした。なので、主人公をただ前向きで明るく元気なだけでなく、失敗も多いし、誘惑にも負けるし、でも反省もすぐする……という、優等生すぎない、いい子だけど欠点も多い子にしました。読者にとって親しみやすい、「友だち」のように思ってもらえる主人公にしたかったのです。

    同時に「いつも見守ってくれる愛情深い特別な存在」がいる子を描くことによって、安心感、自己肯定感を感じてもらえるお話にしたかったこと。多様な人たちとの出会いと理解、共生など。いろんな要素を盛り込んでいます。

    ▼一生懸命おもてなしをしたつもりが、ついカッとなってトラブルを生むことも……。

    ▼厳しくもおっこを温かく見守るおばあちゃん(左)。幽霊のウリ坊(中央)は、おっこのよき理解者。

    ――執筆していて楽しかったこと、悩んだことなどはありますか?

    食べ物のシーンを描くのも読むのも好きなので、やはりいろんなお料理のメニューは考えるのが楽しかったです。アニメには登場しませんが、魔界のあやしい食べ物「闇桃」とか、未来のお菓子で、口の中で新鮮な栗がスパークする上に、包装紙が勝手に消えるという「ぱちぱち栗まんじゅう」とか。架空の食べ物を考えるのも好きでした。

    おっこちゃんやウリ坊などのメインキャラは全員書いていて楽しかったですが、鈴鬼(すずき)をはじめ、魔界の魔物たちには、手こずりました。なにをしでかすかわからない者たちなので、作者にも思い通りになりません。

    しかし、魔物がとんでもないことをするたびに、それを許しおおらかにつきあうおっこちゃんのキャラも成長するので、鈴鬼は特に大事な役割のキャラクターでした。描くのが楽なキャラばかりが、作品にとっていいわけじゃないんだなと改めて思いました。

    ▼子鬼の姿をした鈴鬼や美少女の美陽(みよ)など、ウリ坊のほかにも個性豊かな魔物が登場する。

    ――第1作からの10年間で、小学生をとりまく環境や、社会情勢も大きく変わりました。時代にあわせて変えてきたこと、逆に変えなかったことはありますか?

    当時は、最新のホテルの宿泊プランとか、人気の旅館など、一応調べて参考にしていました。2018年スタートのお話だったら、対応しきれないほどたくさんやってくる外国からのお客様とか、民泊問題とかをお話の中に入れていたかもしれないですね。

    しかし基本、おっこちゃんが「現代の小学生とは思えない」キャラで、メールの絵文字もうまく打てないという設定なので、ずっとガラケーで通すなど、おっこちゃん自身には時代があまり影響していないと思います。またお話の基本は、人間関係と主人公の成長なので、そこはあまり時代によっての影響はないのかなと思います。

    ――劇場版との関係について伺いたいのですが、原作で「おっこと両親の物語」が描かれなかったのはなぜでしょう。

    魔界という設定があったので、その中で、ファンタジーを使った方法で、両親の死を受け止め、乗り越え、成長していくさまを描きたかったので、現実世界で両親の死にかかわる人物に会うとかいうエピソードは考えていませんでした。また、事故の詳細、事故によるトラウマをはっきりと描くと、小さい読者はコメディ的な楽しい部分を楽しめなくなるのでは……という思いもありました。

    特にお話のスタート部分に、そこははっきり書きすぎないようにしたというのもあります。

     

    令丈ヒロ子さんに質問! どんな小学生だった? 本屋さんでの楽しみは?

    ――続いて、令丈ヒロ子さんご自身のお話を伺いたいです。子ども時代にはどんな本を読んでいらっしゃいましたか?

    小学校の図書室にあるものは、なんでも読みました。とにかく印刷してある文字なら、なんでも読みたい!という感じだったので、家にある大人向けの本や雑誌、商品カタログまで、読んでいました。

    童話、女の子向けのジュニア小説、ノンフィクション、伝記、神話、昔話などなど、なにを読んでもおもしろかったですね。特に好きなジャンルは、ミステリーとSFでした。子ども向けに抄訳されたシリーズは何度も読みました。

    ――今回『若おかみは小学生!』がアニメ化され、SNSでも「懐かしい!」「もう一度文庫を読みたい」という声をたくさん見かけました。子どもの頃に夢中で読んだ作品は、その後成長していくうえで大切な存在になります。児童文学をはじめ、読書や本、また本と出合う場の一つである書店に対して、どんな思いをお持ちですか?

    『若おかみは小学生!』は、青い鳥文庫の書き下ろしです。児童文庫はハードカバーに比べ、値段も安いし、軽くて持ち運びやすい。子どもが自分で選んで、お小遣いで買ってくれるし、気に入ったらカバンに入れて学校に持っていって、友だちと貸し借りなんかも気軽にしてくれるものだと思います。ですから、どんどん読めて、楽しくてわくわくして、友だちと話題にしてくれるような話にしたいと思い、「児童文学」というより、「連続ドラマ」的なエンターテインメイントに徹する気持ちで書きました。

    大人になる途中にはいろいろな壁があり、不安もあり、まっすぐにはいかないけど、それはすごく貴重な時間であり、できるだけ楽しくすごしてほしいし、いろんなことを体験したり、考えたりしてほしい。その際、読者といっしょに成長する旅の道連れであり、仲間であり、案内人になってくれたらいいなと思いつつ、児童書を書いています。

    書店での楽しみは、大ヒット作や人気シリーズ、新刊のコーナーも華やかでいいですがやはり棚差しですね。

    あんまり目立たないようなところに、「これ、なに?」と思うような一冊との出会いがあり、それを選んだ書店員さんの気持ち……「これ、ぜったいおもしろいから!」という推しのパワーを感じるとき、あったかい気持ちになります。

    ――『若おかみは小学生!』は全20巻の本編や短編集に加え、TVシリーズの放送・映画公開にあたって新刊も発売されています。最後に、読者の方へのメッセージをお願いします!

    原作はもちろん、アニメも、コミック版もノベライズも、どれもまぎれもなく「おっこちゃん」なんですが、少し違った表情で笑ったり泣いたり怒ったりします。ちょっとちがったルートで大人に近づきます。それを比べてみるのも、おもしろいと思います。

    また、アニメ放送にあわせて、『若おかみは小学生!スペシャル短編集0(ゼロ)』と『若おかみは小学生!劇場版ノベライズ』も刊行されました。

    短編集の方は、若おかみシリーズの短編を書き下ろしました。4年ぶりの、おっこちゃんやウリ坊、美陽ちゃん、鈴鬼くんとの再会は、シリーズを読んでいてくださったみなさんにとって、「なつかしい」幼なじみと会ったような感じになれると思います。

    ノベライズの方は、吉田玲子さんの劇場版の脚本を元に、おっこちゃんの気持ちを追った作品となっています。映画を観た後に読まれたら、「あ、あのとき、おっこはこんなことを考えていたのか!!」と、謎解き的なおもしろさがあるかもしれません。

    どうぞ、よろしくおねがいいたします。

    若おかみは小学生!スペシャル短編集 0
    著者:令丈ヒロ子 亜沙美
    発売日:2018年05月
    発行所:講談社
    価格:702円(税込)
    ISBNコード:9784065117484
    若おかみは小学生!映画ノベライズ
    著者:令丈ヒロ子 吉田玲子(脚本家)
    発売日:2018年08月
    発行所:講談社
    価格:734円(税込)
    ISBNコード:9784065127087

     

    『若おかみは小学生!』書籍情報

    若おかみは小学生!

    若おかみは小学生! part 1
    著者:令丈ヒロ子 亜沙美
    発売日:2003年04月
    発行所:講談社
    価格:670円(税込)
    ISBNコード:9784061486133

    既刊一覧はこちら

    小さな子ども向けのアニメ絵本・ゴールド絵本も発売中!

    若おかみは小学生!
    著者:令丈ヒロ子 斎藤妙子
    発売日:2018年08月
    発行所:講談社
    価格:594円(税込)
    ISBNコード:9784065126837
    若おかみは小学生!
    著者:令丈ヒロ子 斎藤妙子
    発売日:2018年08月
    発行所:講談社
    価格:1,728円(税込)
    ISBNコード:9784065123676

     

    映画「若おかみは小学生!」作品情報

    小学6年生のおっこ(関織子)は交通事故で両親を亡くし、おばあちゃんが経営する花の湯温泉の旅館〈春の屋〉で若おかみ修業をしています。どじでおっちょこちょいのおっこは、ライバル旅館の跡取りで同級生の“ピンふり”こと真月から「あなた若おかみじゃなくて、バカおかみなの!?」とからかわれながらも、旅館に昔から住み着いているユーレイのウリ坊や、美陽、子鬼の鈴鬼たちに励まされながら、持ち前の明るさと頑張りで、お客様をもてなしていくのでした。
    いろんなお客様と出会い、触れあっていくにつれ、旅館の仕事の素晴らしさに気づき少しずつ自信をつけていくおっこ。やがて心も元気になっていきましたが、突然の別れの時がおとずれて――。

    原作:令丈ヒロ子・亜沙美(絵)(講談社青い鳥文庫「若おかみは小学生!」シリーズ)
    監督:高坂希太郎
    脚本:吉田玲子
    音楽:鈴木慶一 ほか

    キャスト:小林星蘭、水樹奈々、松田颯水、薬丸裕英、鈴木杏樹、ホラン千秋、設楽統(バナナマン)、山寺宏一 ほか

    主題歌:藤原さくら「また明日」(SPEEDSTAR RECORDS)

    製作:若おかみは小学生!製作委員会
    アニメーション制作:DLE、マッドハウス
    配給:ギャガ

    9月21日(金)より TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー

    https://www.waka-okami.jp/movie/

    ©令丈ヒロ子・亜沙美・講談社/若おかみは小学生!製作委員会




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