• ブームでなく、「カルチャー」を 文・「mer」編集長 正田省二

    2015年10月29日
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    日販 商品情報センター「日販通信」編集部
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    merの仕事はとにかく移動が多い。平均しても月に10日以上はイベントや取材などで地方や海外に出張している。つまりほとんど編集部にいない。毎月放浪の旅をしているような気分になる。今回日販さんからいただいたもったいない寄稿依頼も、度重なる出張で入稿を大変遅らせてしまった。この場を借りて謝罪を申し上げたい。

    メールやSNS、ウェブを駆使すれば一瞬で世界の情報につながる時代に、なぜこんなアナログで非効率極まりない働き方をしているのだろうか。

    思い起こせば、8年前merの前身となる「古着Mixガールズ」という雑誌をスタートさせたときから、ひとり全国に足を運びスナップ取材を敢行してきた(現在でもmerでは全くと言っていいほど編集プロダクションに取材を頼らない)。当時、出張先から次の出張先に取材の依頼をし、現地では美容師さんやショップ店員さんをはじめとしたそのエリアの情報に精通している方々とも毎晩のように深酒を交わした。現在でもmerにはその昭和的文化がしっかりと根付いていて、その甲斐あってか、全国の至る所から、カリスマ的な人気を博すモデルたちを生み出してきている。

    merで活躍できるモデルの発掘は編集者が実際にその人物と会わないと成り立たない。なぜならmer(青文字系)のモデルはファッション性や見た目よりも、その人自身が持つココロの素敵さがその人気を左右するからだ。読者に「モデルの好きなところは?」と尋ねると「おしゃれはもちろん、生き方や内面が共感できる」という意見がほとんどだ。

    merのカルチャーを一言でいうなれば、それは“普通の女のコが夢を叶えていくストーリー”だ。他人に言えないコンプレックスを抱えながら、不安や逆境を乗り越え、それぞれがそれぞれの想いや願いをカタチにしていく。

    今年「前髪切りすぎた」で一躍脚光を浴びた奈良出身の三戸なつめもそのひとりだ。同じく関西出身の先輩モデル武智志穂に憧れ、読モを目指し、ずっと思い描いていたアーティストへの夢を叶えていく。そんな、古き良き先輩後輩の関係や、体育会系並みの日々の努力、それらに裏付けされたモデルの夢物語のような奇跡のストーリーが毎年本当に目の前で実現していく。

    そして、その夢物語はモデルの世界だけに止まらず、それを追いかける読者の人生にまで大きく影響を与えている。「別の企業に就職したのですが、諦めていたファッション業界の仕事をもう一度目指すことに決めました!」「merがきっかけでおしゃれをする勇気が出て、前より自分に自信が少し持てるようになりました」などというなんとも熱くて、涙が出そうになる読者からのお手紙を毎月数多く頂戴する。

    ある意味、スマートさや軽さがウリのこのご時世において奇跡的とも言える、浪花節でドラマティックな世界。それが「青文字系」と呼ばれるカルチャーの根源である。

    だから、雑誌と読者、モデルと読者が一度結びついたら簡単には離れない。これも青文字系の特徴だ。そこから生まれるムーブメントは一過性のファッショントレンドではなく、時代の価値観を変える生き方のカルチャーとなっている。イベントで出会う読者のココロに直接触れるたび、全国の取材で新しい原石に出会うたび、merで活躍するモデルたちの成長に涙するたび、この掛け替えのない“夢”のカルチャーを残し、大きく育てていきたいと感じる。そんな毎日だ。

    われわれエンタテイメント業界の仕事は感動をユーザーと共有すること。だから明日からも、まだ見ぬ新しい感動を求めて、ふらふらと旅に出てしまうのだろうと思う。


    学研プラス「mer(メル)」編集長
    正田省二 ―SHODA Seiji
    「ピチレモン」編集長、「mer」の創刊編集長を歴任。現在では、F1向けコンサルティング、イベントプロデュースなど多方面で活躍。


    「mer」
    2007年初号発刊。2013年「古着Mixガールズ」より誌名を「mer」に変えメジャー化リニューアル。青文字系No.1女性誌としてブームを牽引。12月号(10月17日発売)では、モデル10人が表紙を飾っている。特集は「なりきり★モデルコーデ500!!」。

    mer (メル) 2015年 12月号
    著者:
    発売日:2015年10月17日
    発行所:学研マーケティング
    価格:690円(税込)
    JANコード:4910087151259

    (「日販通信」2015年11月号「編集長雑記」より転載)

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