• 伊東歌詞太郎が『家庭教室』というタイトルに込めた思いとは――インタビュー【後編】

    2018年07月17日
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    日販 ほんのひきだし編集部「新刊展望」担当 猪越
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    5月16日(水)に発売された『家庭教室』。著者はインターネットの動画投稿サイトで人気を得て、2014年にメジャーデビューを果たしたシンガー・ソングライター・伊東歌詞太郎さんで、本作は小説家デビュー作となります。

    さまざまな悩みを抱える生徒やその家族との交流を描いた本作は、幅広い世代の支持を集め、累計5万部のヒットとなっています。インタビュー後編では、音楽と小説の創作方法の違いや、「毎日通っている」という書店の魅力などについて語っていただきました。

    家庭教室
    著者:伊東歌詞太郎
    発売日:2018年05月
    発行所:KADOKAWA
    価格:1,404円(税込)
    ISBNコード:9784048961417

    前編はこちら
    「歌ってみた」で人気の伊東歌詞太郎が小説家デビュー!『家庭教室』インタビュー【前編】

     

    音楽と小説、それぞれの“伝え方”とは

    ――伊東さんは、ミュージシャンとしても言葉の力を大切にした歌詞を書かれていますが、今回“小説”にチャレンジする中で、どのような表現方法の違いがありましたか?

    音楽は瞬間芸術なので、言いたいことを飾っている余裕はないんです。「こう言ったらかっこいいかな」なんてやっていたら、その演出の部分で文字数を取られちゃって、もったいない(笑)。

    たとえば「この花の香りがいいな」と思ったら、エッセンスだけを抽出して、それそのものを届けるのが音楽での伝え方。音というのはものすごい力を持っているので、言葉は短くても音に乗ると、そのままグサッと聴く人の心に刺さると思うんです。

    小説はそうではなくて、一番伝えたいことを、出来事や人物の感情といった物語に溶け込ませることで、全体を通して読んでもらったときに、核心の部分をわかりやすく伝えることができる。

    プロセスは違うけれど、描きたいことを届けるという意味では、歌も小説も同じだなと思いました。

    ――本作では、灰原が家庭教師として訪れる街のこと、食やワイン、受験などについてさまざまな情報が盛り込まれています。いずれも登場人物たちを理解する手がかりとして役立っていますね。

    特に街のことについては、意識して書いています。僕は東京生まれ、東京育ちなのですが、書いている途中で「もっと東京を知ってもらいたいな」という気持ちがムクムクと湧いてきて。「東京って本当はこんな所なんだよ」ということが、東京を知らない人にも伝わればいいなと思っています。

     

    『家庭教室』というタイトルに込めた思い

    ――灰原は、時に一般的な「家庭教師」の枠を踏み越えて、生徒やその家族と関わっていきます。グレーをイメージさせる苗字は、どこか灰原にぴったりですね。

    フィーリングで決めた名前ではあったのですが、それは僕も書き終わったあとに思いました。

    本作には、「正義ってなんだろうな」という思いも含んでいます。ルールの中での正義と、ルールを取っ払ってもそこに残っている正義。その2つは重なる部分が大きいけれど、重ならないところもありますよね。その人の倫理観がもっとも表れる部分なのかもしれませんが、正義にはそんな曖昧な部分もあるなと思うんです。

    ――本作は、一つひとつの問題と向き合う中で、子どもたちはもちろん、灰原自身が成長していく物語でもありますね。

    『家庭教室』というタイトルの意味もそこにあります。ただ勉強を教えるだけでなく、教え子の家庭そのものが、灰原や生徒はもちろん、その親や、書いている僕にとっても学びの場になっていますし、読んでくださった方がそこから何かを感じてくれればうれしい。そういう場所として、いろいろな家庭の姿を描いています。

    ――さて、本作ではまだ、灰原に家庭教師先を斡旋してくれる「羽田くんのお父さん」についての謎が残されていますね。手数料を取るわけでも、仕事に関与するわけでもなく、しかし各家庭の深い事情まで把握しているように見える。彼は一体、何者なのでしょうか?

    羽田くんのお父さんについては今後続編で描いていく予定ですので、楽しみにしていてください。

    今回取り上げたエピソードのほかにも、問題提起したい事柄は頭の中にまだまだ残っているので、それがある限りは『家庭教室』のシリーズは終わらないと思っています。

     

    書店には「毎日通っています」

    ――小説を発表されたことで、ファン層がさらに広がったのではないでしょうか?

    まだ発売から2か月経っていないこともあって、さほど変化は感じていないのですが、『家庭教室』はこの本にぴったりの層の方たちに届いているようです。

    伊東歌詞太郎の僕だけのロックスター☆ラジオ」というレギュラー番組を持っているのですが、その中で『家庭教室』のサイン本をプレゼントするアンケート企画をやりました。応募してくださった方の年齢の内訳をみると、10代がもっとも多く、次いで20代、その次は40代の方が多い。つまり親子の世代の方が読んでくださっているんですね。

    『家庭教室』のイベントでも、「子どもは学校があって来られないので」と親御さんが参加してくれるケースが多々あります。「代わりに来てくださったんですね」とお話しすると、みなさん「私も(歌詞太郎さんの曲を)聞いています」とおっしゃるので、それがまたうれしくて。まさに本作と、親子という関係がいい形でマッチしてくれたんだなと感じています。

    ――出版イベントとして各地でサイン会を開催されていますが、プライベートでもよく書店に行かれるそうですね。

    毎日通っています。地元の本屋さんに行くことが多いですが、打ち合わせが急になくなるなど時間がぽっかり空いてしまったときには、一番にその街の本屋さんに足を運びます。

    まずは店内をグルっと回って、気になった表紙やタイトルが素敵だなと思った本を手に取ります。特に、書店員さんのPOPや、そのお店独自のランキングで興味を持つことが多いですね。その情報をもとに裏に書いてあるあらすじを読んで、おもしろそうだと思ったら即買っています。

    自分がそういう買い方をしているせいか、出版業界は書店員さんとお客さんがダイレクトにぎゅっと繋がれている気がします。本を選ぶ人が、書店員さんの力を信じているのでしょうね。

    僕は普段音楽業界で活動しているのですが、音楽を好きな人がたくさん増えれば、ミュージシャン含め業界全体が元気になって、いい作品が生まれやすい環境になっていきます。出版業界も同じだと思うので、僕はこれからも読者のみなさんと一緒に本を愛していきますし、もっと本を好きになっていただけるように、がんばって書き続けていきたいと思っています。




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