• 「診察したいんです。あなたのセックスを」天童荒太が構想20年を経て描きたかった“痛み”とは?:『ペインレス』作品ガイド

    2018年04月15日
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    日販 ほんのひきだし編集部「新刊展望」担当
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    天童荒太さんの2年ぶりとなる小説『ペインレス』が、4月20日(金)に上下巻で発売されます。

    主人公は、生まれつき心の痛みを持たない女性医師。本作はペインクリニックに勤める彼女が、テロで身体の痛みを失った青年を診察するところから始まります。

    数々の作品で、人の心の痛みに深く真摯に向き合ってきた天童さん。構想20年を経て書かれた上下巻の長編小説には、「痛み」に敏感な現代人へのメッセージが込められているそうです。

    そんな本作について、編集を担当した新潮社出版部の佐藤誠一郎さんに文章を寄せていただきました。

    ペインレス 上巻
    著者:天童荒太
    発売日:2018年04月
    発行所:新潮社
    価格:1,620円(税込)
    ISBNコード:9784103957034

     

    構想20年! 天童荒太の小説は「トラウマ」から「進化」へ

    早いものでかれこれ20年。天童荒太さんから「痛み」をテーマに長編小説を書きたいという話を初めて聞いたのは、山本周五郎賞受賞作『家族狩り』が上梓された直後ですから、前世紀の末のこと。

    それから『永遠の仔』の大ヒットあり『悼む人』の直木賞受賞ありで、編集者としてはやきもきの連続でしたが、この期間は「空白の20年」ではなくて『ペインレス』のための助走であったというわけです。

    今ではペインクリニックの看板を掲げる医院も増えましたが、少し前まで、痛みを感じる患者が向かう先は内科や外科の方だった。それだけ現代は「痛み」に敏感な時代だということでしょうか。天童さんは麻酔科の医師を友人に持っていて、その導きで入念な取材をされています。作中にしばしば実際の治療シーンが出てきますが、そのプロ顔負けのディテールに驚いてしまいます。

    取材と言えば、紛争地帯の日本企業。テロで痛覚を失った青年が登場するので、中近東で爆弾テロに遭った企業についての情報収集も徹底したものでした。

    しかし、体の痛みだけに留まっていないのが天童さんらしいところ。人間がいちばん痛みを感じる部分、それは実は心の方なんじゃないかと構想が広がったときに、この作品の骨組みが出来上がったようです。

    虐待される側、虐待する側の双方から長編小説を書いた天童さんですが、今回は「トラウマ」という言葉が出て来ません。代わりに「進化」という意外な方向性が示されます。何だか小説の可能性を100メートル以上押し広げた感のある、パワフルな小説です。

    新潮社 出版部 佐藤誠一郎

    ペインレス 上巻
    著者:天童荒太
    発売日:2018年04月
    発行所:新潮社
    価格:1,620円(税込)
    ISBNコード:9784103957034

    身体の痛みを喪った青年は、その麻酔科女医にとって舌なめずりするような実験材料だった。他者への共感を生来持てなかった彼女は、快楽の在処を確かめるようなセックスの果てに何を企てようというのか。人類の倫理とDNAを決壊させる、構想20年の長編小説。

    新潮社『ペインレス』より〉

     

    『ペインレス』刊行記念イベント開催

    『ペインレス』の刊行を記念し、天童荒太さんのトークイベントが開催されます。チケットは「Pass Market」にて販売中です。

    ―作家・天童荒太は挑発する―「あなたは『痛み』を感じていますか?」

    ・日時:2018年4月26日(木)19:00~20:30(受付開始18:30)
    ・会場:la kagu 2F レクチャースペースsoko【MAP
    ・参加費:2,000円

    イベント詳細・チケット購入はこちら

     

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