• 『いま、会いにゆきます』を書けたのは、僕が“病的なほどの愛妻家”だったから――市川拓司最新作『私小説』発売

    2018年03月29日
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    日販 ほんのひきだし編集部「新刊展望」担当
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    『いま、会いにゆきます』『そのときは彼によろしく』『恋愛寫眞』など、純愛小説で数々のベストセラーを生み出してきた市川拓司さん。

    3月7日(水)に発売された『私小説』は、愛妻家で発達障害を抱えた恋愛小説家の、およそ30時間のあいだに起きる出来事を赤裸々に描いた作品です。

    自身も発達障害であることを公表している市川さん。『私小説』はそんな市川さんが「純愛小説家」たる所以と、「その作品が世界中で愛されている理由」がわかる1冊になっているのだとか。そんな本作について、市川さんに文章を寄せていただきました。

    私小説
    著者:市川拓司
    発売日:2018年03月
    発行所:朝日新聞出版
    価格:1,404円(税込)
    ISBNコード:9784022515407




     

    ぼくが純愛小説家であるほんとの理由

    『いま、会いにゆきます』が日本で映画化されて14年が経ちました。ここでまた韓国でリメイク版「いま、会いにゆきます」が公開され、「歴代記録を塗り替えるような大ヒットスタート」のニュースが舞い込んできました。また米国、英国、カナダ等を含む世界17ヶ国に先行販売されたという報道も耳にしています。執筆から16年もの月日が流れたいまでもまだ、こんなふうに世界中のひとたちから愛されている小説を、「ぼくはいったいどうやって書いたんだろう?」と我ながら不思議に思わずにはいられません。

    『私小説』はその疑問に対する答えになり得るかもしれません。ぼくはなぜ純愛小説家なのか? ぼくが書いた純愛小説は、なぜいまもまだ読み継がれているのか?

    ひとつは、ぼくが乱婚型のチンパンジーではなく一夫一婦型のテナガザルのように奥さんを愛しているから(というより、命懸けでなついているから)。

    ぼくは奥さん以外の女性を性的な目で見たことがありません。10代の頃からいままでずっと。もし、女性がおもてなしをしてくれるようなお店に行ったら、ストレスのあまり血を吐いて倒れてしまうかもしれない。

    またぼくは、「持ち玉は1発」タイプで、カゲロウのように、生涯にただ一度だけ恋をするように出来ています。もし奥さんと別れていたら、「その次」はなかった。15で彼女と知り合い、19で付き合い始めることが出来たのはほんとに運がよかった。

    ぼくは他人との肌の触れ合いが苦手です。だから、女性と触れ合いたい、という欲求もなかった。彼女と出会い、じっくりと時間を掛けてふたりの距離を縮めていったからこそ、いまのように構えずに触れ合うことができるようになった(まだ、ぎこちなくなるときがありますが)。じつは彼女も同じようなタイプだったんですね。距離の縮め方が一緒だった。これもまた幸運な出会いでした。

    『私小説』の中でこれらのことを語りながら、しみじみ思いました。「ぼくってほんとに偏ってるなあ。こんなやつぁいない……」でも、だからこそ、なんだと思います。とことん偏った人間だからこそ、誰にも描けないような「恋愛小説」を描くことが出来た。ありきたりな、よくある恋愛ストーリーではなく、「ファンタジーレベルの純愛」の話を。

    とことん突き詰めれば普遍性を持つようになる。つまりは、そういうことなんだと思います。世界共通言語になりうるような「愛の形」。中途半端じゃ駄目なんです。驚くほどシンプルで混じりっけのない愛し方。それが強烈な求心力になる。

    本の帯に、「最後は妻の顔を見つめながら死にたいと思う」とあります。たぶん、多くの「夫たち」がそう思っているはずです。ぼくはただそれを「臆面もなく」口に出して言える、ってだけなのかもしれない。だとすれば、ぼくが一番特殊なのは、「病的なほどの愛妻家であることを公言してちっともはばからない」ってとこなのかもしれません。

    私小説
    著者:市川拓司
    発売日:2018年03月
    発行所:朝日新聞出版
    価格:1,404円(税込)
    ISBNコード:9784022515407

    「ぼくは選択的発達者だ。ある集団に属する人間たちの能力や人格を平均化したとき、そこから大きく外れている項目がいくつもあるのが選択的発達者。おおむねどの項目も平均からさほど離れていないひとたちは平均的発達者。」

    「ぼくは数分執筆しては数分走るというインターバール方式で小説を書いている。選択的発達者であるぼくの脳は過敏であると同時に、ひどく興奮しやすくも出来ている。危機的状況に置かれたときの人間と一緒だ。よく言う「闘争か逃走か」。ぼくはありえないほどの平和主義者なので闘争という選択肢はない。つねに逃走。ゆえに、ぼくにとって走るってことは「逃走」の代替行為なのだとも言える。」

    愛妻家で発達障害を抱えた恋愛小説家の、日々追想発作に苛まれるスリリングで感傷的な日常を描く。

    朝日新聞出版 公式サイト『私小説』より〉

    市川拓司 Takuji Ichikawa
    1962年、東京都生まれ。2002年『Separation』でデビュー。03年刊行の『いま、会いにゆきます』はミリオンセラーとなる。他の作品に『そのときは彼によろしく』『恋愛寫眞 もうひとつの物語』『こんなにも優しい、世界の終わりかた』などがある。

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    著者:市川拓司
    発売日:2017年07月
    発行所:小学館
    価格:1,620円(税込)
    ISBNコード:9784093864718
    ぼくが発達障害だからできたこと
    著者:市川拓司
    発売日:2016年06月
    発行所:朝日新聞出版
    価格:842円(税込)
    ISBNコード:9784022736680
    いま、会いにゆきます
    著者:市川拓司
    発売日:2007年11月
    発行所:小学館
    価格:617円(税込)
    ISBNコード:9784094082173

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