• 【坂道のアポロン】彼らを描くのに必要なのは、小田和正とオフコースだった:小玉ユキインタビュー(3/3)

    2018年03月10日
    楽しむ
    日販 ほんのひきだし編集部 浅野
    Pocket

    3月10日(土)に公開された、映画「坂道のアポロン」。ほんのひきだしでは原作者の小玉ユキさんに、映画の見どころと原作執筆時のエピソードについてお話を伺っています。

    インタビューの最後にお聞きしたのは、映画の主題歌「坂道を上って」について。「ジャズの物語なのになぜ?」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、実は原作が生まれたときから、ある“つながり”があったようです。

    インタビュー(2/3)を読む

    小玉ユキ(こだま・ゆき)
    9月26日長崎県生まれ。2000年デビュー。2007年~2012年に「月刊flowers」(小学館)にて連載した『坂道のアポロン』で第57回小学館漫画賞一般向け部門を受賞。ほかの作品に『月影ベイベ』などがある。現在も同誌にて活躍中で、2018年5月号(3月28日頃発売)より長崎・波佐見を舞台にした『青の花 器の森』の連載をスタートする。

     

    「あの頃が大切で大切で仕方ない」苦しくなるほど切ないイメージを膨らませてくれたのは、小田和正とオフコースだった

    ――本作の主題歌は、小田和正さんの書き下ろし新曲です。「坂道を上って」を聞いた最初の感想はいかがでしたか?

    誇張でなく、「この曲が先にあったんじゃないか」と思いました。もはや新曲という感じがしないというか、「私、この曲を知ってる」という不思議な感覚になったんです。

    歌詞も作品に寄り添うように書いてくださっていて、「そうなの!」「それが書きたかったの!」って感激しましたね。

    ――連載中に小田和正さんの曲を聞いていらっしゃったという、運命的な縁もあるそうですね。

    『坂道のアポロン』は1960年代を舞台にした漫画で、ジャズがテーマの一つになっているので、執筆中はもちろんジャズも聴いていました。でも薫・千太郎・律子という3人の関係を描くにあたってイメージを膨らませるのに必要なのは、ジャズではなかった。ジャズは“結びつける要素”ではあるけれども、3人の青春を「ジャズ」という音楽そのもので語ることはできないと思いました。

    一生ものの友達ができる幸せ、でも別れてしまうという切ない気持ち。こんな心境の時に聴きたいのは、ジャズではない。ではこの切なさを、どこからもらったらいいだろう? それで聴いたのが、小田和正さんの曲でした。小田和正さんの曲もそうですけど、もっというとオフコースですね。

    ――なるほど、オフコースですか!

    オフコースは1970年にデビューしていて、当時大学生だったはずです。一方で『坂道のアポロン』は1960年代が舞台で、薫たちは高校生。ちょうどこの時代に青春を送っているんです。

    オフコースについては、それまでも知っていたし聴くけれど、そこまでくわしくはありませんでした。でもこの時代に青春を過ごした人たちが作る音楽って、今のその世代の方が作る音楽とはやっぱりちょっと違うと思っていて。「アポロンを描くぞ」という態勢でいざ聴くと、沁みる沁みる……。「こういう感じが描きたかったんだ!」とイメージがわっと膨らんで、執筆中はずっと聴いていました。

    オフコースの曲をすべて聴き漁り、ライブDVDも見て、写真集まで見て(笑)。そうしたら、小田和正さんやオフコースがこれまでにたどってきた、さまざまなエピソードも知ることができました。そういうふうにして曲を掘り下げて聴いていくと、「あの時のことが大切で大切で仕方ない」というキュンとさせられる苦しさが、どんどん深みを持っていくんです。それがたまらなくて、その気持ちに常になっていたくて、ジャズ、オフコース、小田和正、ジャズ、オフコース、小田和正……という構成で作ったプレイリストを執筆時には必ずかけていました。

    ――作品がまだ出来上がっていない時からのインプットが、こうして映画のエンドロールで主題歌として流れるって、ものすごくドラマチックですね。

    実は映画化の際、「主題歌は誰がいいですか」って聞かれた時、ダメもとでプロデューサーの八尾さんに「小田和正さんがいいです」って言ったんですよ。言うだけはタダだからって(笑)。そうしたら曲を書き下ろしてくださることになって、一生分の幸せをこの映画で使い切ってしまうんじゃないかと思いました。

    原作やアニメを知っている人は「なんでジャズじゃないの」とか「イメージに合わない」って思うかもしれないんですけど、私の中ではスタート地点にあったものなんですよね。

    ――『坂道のアポロン』は「大切な青春時代」が詰まった、繰り返し箱をあけて味わいたくなる作品でした。

    私もまだ2回しか見てないので(笑)、早くまた見たくてしょうがないです!

    ――これから『坂道のアポロン』がどんなふうに育っていくといいなと思いますか?

    映画に関しては、試写会では比較的若い女性の方が多い印象でしたが、内容はジャズ世代の方から小学生くらいまで、幅広い方に男女問わず見ていただける作品だと思います。

    漫画ではどうしても複雑に話を組んでしまっていますが、映画はわかりやすく凝縮してくださっているので、この機会に『坂道のアポロン』にぜひ触れてみていただきたいです。家族で見に行ったりしてもらえると、なお嬉しいですね。

    ***

    映画の原作『坂道のアポロン』は、単行本第1巻~第9巻と『坂道のアポロンBONUS TRACK』、公式ファンブックが発売されています。また映画公開に先駆けて、映画ノベライズ版も発売されました。

    坂道のアポロン 1
    著者:小玉ユキ
    発売日:2008年04月
    発行所:小学館
    価格:463円(税込)
    ISBNコード:9784091316707
    映画坂道のアポロン
    著者:豊田美加 小玉ユキ 髙橋泉(脚本家)
    発売日:2018年02月
    発行所:小学館
    価格:529円(税込)
    ISBNコード:9784094064926

    また2月9日より、小玉ユキさんの最新刊『ちいさこの庭』『小玉ユキよみきり集 宝石箱』も発売中です。

    ちいさこの庭
    著者:小玉ユキ
    発売日:2018年02月
    発行所:小学館
    価格:463円(税込)
    ISBNコード:9784098700356

    森に棲むといわれる“ちいさこ”たち。絵本好きな少女、恋愛小説家と編集者、引きこもりの男子中学生……生きる時代も性別も立場も違う人間たちが“ちいさこ”に出会い――?
    “ちいさこ”と人間の不思議な体験が詰まった、ファンタジックオムニバス。

    宝石箱
    著者:小玉ユキ
    発売日:2018年02月
    発行所:小学館
    価格:500円(税込)
    ISBNコード:9784098700363

    満月と音楽が遠距離恋愛中のカップルを優しく繋ぐ「ムーンライト・セレナーデ」をはじめ、ファンタジー作品から等身大ラブストーリー、あの名作へのオマージュ作品など、バラエティに富んだまさに“宝石箱”のような読み切り短編集。

     

    映画「坂道のアポロン」作品情報

    医師として病院に勤める西見 薫。忙しい毎日を送る薫のデスクには1枚の写真が飾られていた。笑顔で写る三人の高校生。10年前の夏、二度と戻らない、“特別なあの頃”の写真……あの夏、転校先の高校で、薫は誰もが恐れる不良、川渕 千太郎と、運命的な出会いを果たす。二人は音楽で繋がれ、荒っぽい千太郎に、不思議と薫は惹かれていく。ピアノとドラムでセッションし、千太郎の幼なじみの迎 律子と三人で過ごす日々。やがて薫は律子に恋心を抱くが、律子の想い人は千太郎だと知ってしまう。切ない三角関係ながら、二人で奏でる音楽はいつも最高だった。しかしそんな幸せな青春は長くは続かず――

    知念侑李 中川大志 小松菜奈
    真野恵里菜 / 山下容莉枝 松村北斗(SixTONES/ジャニーズJr.) 野間口徹
    中村梅雀 ディーン・フジオカ

    監督:三木孝浩
    脚本:髙橋泉
    原作:小玉ユキ「坂道のアポロン」(小学館「月刊flowers」FCα刊)
    製作幹事:アスミック・エース、東宝
    配給:東宝=アスミック・エース
    制作プロダクション:アスミック・エース、C&Iエンタテインメント

    2018年3月10日(土)全国ロードショー

    http://www.apollon-movie.com/

    ©2018 映画「坂道のアポロン」製作委員会 ©2008 小玉ユキ/小学館

    坂道のアポロン 1
    著者:小玉ユキ
    発売日:2008年04月
    発行所:小学館
    価格:463円(税込)
    ISBNコード:9784091316707




    タグ
    Pocket

  • 自衛隊防災BOOK_SP記事下

    bousai20180918_sp
  • GoogleAd:007



  • ページの先頭に戻る