• 「保育園落ちた日本死ね」は名キャッチコピー?金田一秀穂インタビュー:現代の言葉とコミュニケーション

    2018年03月08日
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    ほんのひきだし編集部
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    国語辞典をはじめとする様々な辞典の編纂に携わり、日本語の使い方に関する著作も多い国語学者・金田一秀穂さん。昨年12月には、日本語に隠された「ムダ」と、その必要性を論じた『日本語のへそ』を上梓しました。

    「まじ卍」や「インスタ映え」など、日々新たに生み出されている若者言葉やネットスラング。それらを用いた現代のコミュニケーションについて、金田一さんにお話を伺いました。

    日本語のへそ
    著者:金田一秀穂
    発売日:2017年12月
    発行所:青春出版社
    価格:950円(税込)
    ISBNコード:9784413045223

    いい加減にしたらどうだろうと思う。
    「今年は去年より業績が上がらなかった」
    「来年こそは今までの挽回をはかろう」
    そういうことを言うのを。

    今必要なのは、言葉のむだ遣いである。すなわち、人と人とのむだ遣いであり、心のむだ遣いである。

    時代はAIである。機械にできることは、任せて、人にしかできないことをするしかない。効率を無視する。
    能率を無視する。暇と退屈を味わう。楽しむ。

    へそのように、なくてはならないけれど、なくてもいいようなもの。
    言葉のへその力をこの本で知ってもらいたい。

    青春出版社公式サイト『日本語のへそ』より)

     

    『広辞苑』10年ぶりに改訂! なぜ「新しい言葉」は生まれてくるのか?

    ――今年1月に発売された広辞苑は、10年ぶりの改訂で新しい言葉が多く追加されたことでも話題となりました。日常会話には今ある言葉で足りているのに、なぜ新しい言葉が次々と生まれるのでしょうか?

    新しい言葉が生まれると、今まで表現できなかったものが表現できるようになります。

    たとえば、頭の中が1つのことでいっぱいになっている状態を表すとき、今までは「緊張している」などと言っていました。でもそれでは、1つのことを考えて頭がフル回転している感じが、いまいち表しきれていなかった。

    そんなときに、「いっぱいいっぱい」とか「テンパってる」という言葉を使うことで、今までできていなかった「表現の隙間」を上手に埋めることができるようになったんです。こういった足りない表現を補うように、新しい言葉はどんどん増えていきます。

    ――同じ言葉で、意味が増えている言葉もありますよね。たとえば「やばい」は良い意味でも悪い意味でも使います。

    「かわいい」なんて言葉もどんどん意味が広がっていますよね。今まであまりうまく表現できていなかったこと、たとえば「魅力的で素敵だけど、身近で親しみやすい印象」のようなことを言いたければ、「かわいい」を使えば表現できるわけです。

    ――表現の隙間を埋めた新しい言葉は、この先も生き残っていくのでしょうか。

    僕らの身の周りには、まだ言葉にできないものがいっぱいあります。

    でもある種の言葉が突然ひょこっと出てきて、それが「今まで言いたかった、言葉にしたかったけどできなかった」ことを表現できているとする。そうすると、「この言葉を使おう! いい言葉だ!」となって、僕らの気持ちにフィットするんです。そしてそういう言葉がずっと残るわけです。逆にうまくフィットしなければ、その言葉は誰も使わないし、残らないですね。

     

    「インスタ映え」「まじ卍」……言葉で築く仲間意識

    ――昨年の流行語大賞は、「インスタ映え」が若者、「忖度」が年配の方と、流行した世代がはっきり分かれた2語のように感じました。近年、老若男女に共通して流行する言葉があまり出てこないのはなぜでしょうか?

    いや、あると思いますよ、どっちにも共通している言葉って。 たとえば「○○出版さん」なんて言い方は若い子も、年配の人も使うよね。会社名に“さん付け”をするのは新しい言い方ですよ。こういう言い方は前はなかったかな。

    あと最近よく出てくる「こだわり」とかね。「こだわり」っていうのは要するに、凝っている、特別な趣味があるということを言いたいわけですよね。僕は「先生のこだわりは何ですか」と聞かれたら、「僕はべつにこだわってない!」なんて怒るんですけど(笑)。

    そういう言葉は新しいし、若い子も年配の人も使っているんじゃないかな。

    ――たしかに、「インスタ映え」という言葉も年配の方が使っていたりしますね。

    使っているよね。インスタ自体をよく知らないのに「インスタ映え」を使う人もけっこういるんじゃないかな。要は「写真写りがいい」ってことでしょ? 僕はそうやって言うよ(笑)。

    ――年配の方の中には、若者言葉を使うことに抵抗がある方もいるように思います。

    僕はわりと抵抗があります。というか、恥ずかしいからやめた方がいいよって思います。「激おこぷんぷん丸」とか言うオヤジって恥ずかしいでしょ?(笑)

    若者言葉っていうのは、彼らの“仲間言葉”ですからね。だから、そこに仲間じゃない人が無理やり入り込んでも、排斥されるばっかりだよって(笑)。彼らはその“仲間言葉”でお互い気持ちが通じるから。

    ――最近、女子高生の間で流行っている「まじ卍」も一種の仲間言葉なんでしょうね。

    「まじ」の強めの言葉ですよね。あれ1字で済むから簡単でいいよね。あと、文字制限があるツイッターなんかは、なるべく文面が短い方がいいよね。そしたら「卍」みたいなものはすごく使えるんじゃないでしょうか? 目で見てもぱっと分かるし。

    ――LINEのスタンプや絵文字も、一目でわかって便利ですよね。

    絵文字とかスタンプって意味は通じるけど、「どこかあいまい」で、そこがいいんですよ。たとえば「今日何時に帰りますか」だけよりも、「何時に帰りますか(スタンプ)」みたいな、ちょっと抜けてる感じの方がうれしいじゃないですか。

    話し言葉ってあいまいな部分がいつも残るから、気持ちを伝えやすいんです。でも書き文字は視覚だけしか情報がないから、文字ばかりだと怒られているような気がしてしまう。「お母さんのメールはなんか怒ってるみたいだ」とかよく言うでしょ? 本当は優しく言ってるつもりなんだろうけどね(笑)。




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