• 『夫のちんぽが入らない』のこだまが、限界ぎりぎりまで綴ったエッセイ集を語る!『ここは、おしまいの地』インタビュー【前編】

    2018年02月19日
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    日販 ほんのひきだし編集部「新刊展望」担当 猪越
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    大反響を呼んだ『夫のちんぽが入らない』から約1年。1月25日(木)、こだまさんの第2作となるエッセイ集『ここは、おしまいの地』が発売されました。

    『ここは、おしまいの地』は、こだまさんが作家デビューする以前から「Quick Japan」で連載されたエッセイをまとめたもの。「転居する先々がどれも“おしまいの地”ばかりだった」いう中で、さまざまなアクシデントに見舞われてきた自らの半生を綴っています。そんな本作を執筆したきっかけから文章を書くことへの特別な思いまで、こだまさんにお話をうかがいました。

    ここは、おしまいの地
    著者:こだま
    発売日:2018年02月
    発行所:太田出版
    価格:1,296円(税込)
    ISBNコード:9784778316129

    何もない“おしまいの地”に生まれた実家は空き巣に何度も入られ、訪問販売の餌食だったこと。中学の卒業文集で「早死しそうな人」「秘密の多そうな人」ランキングで1位を獲得したこと。引越し業者でさえ「これは最強っすね」と袖口で鼻を押さえながら言ってくる「臭すぎる新居」での夫との生活。生まれ持った気質なのか、見事なまでに災難に巻き込まれる“おしまいの地”での出来事。

    太田出版『ここは、おしまいの地』特設サイトより〉

     

    「まさか本になるとは思ってなかった」赤裸々エッセイが一冊に

    ――『ここは、おしまいの地』は「Quick Japan」で連載されたエッセイをまとめたものですね。『夫のちんぽが入らない』は、夫婦間のデリケートな問題が書かれていることもあり“私小説”にされたそうですが、本作には生まれ育った集落や家族、またご自身がこれまで体験したことなどが率直に書かれています。

    「Quick Japan」に初めての書き下ろしエッセイを掲載していただいたのが2015年6月で、その後数回読み切りエッセイを書いたあと、連載として書かせていただくことになりました。

    最初の書き下ろしエッセイは1,000字程度の短いものだったんですけど、連載になると私にとってはちょっとボリュームがあったので、どのように組み立てて、流れを作っていけばいいのか悩みました。

    しかも編集部から依頼をいただいたときに言われたのは、「好きなことを書いてください」。その頃は、ブログは書いていましたけれど、まだ作家活動はまったくしていなかったのに……。あとがきにも書きましたが、「ほぼ素人の中年に毎回好きなテーマで書かせるなんて、ギャンブル以外の何ものでもない」と、今でも思っています(笑)。

    結局は、だいたいが“内向的な性格ゆえの悩み”から始まって、「これからはこうやって生きていこう」という思いで締める形になっていますね。先ほど「ギャンブル以外の何ものでもない」とは言いましたが、そういう場を与えてもらうなんてそうないことだと思うので、貴重な機会をもらったなと感謝しています。

    ――前作を書かれたときと心境の違いはありましたか?

    この本の連載は前作が発売される前から始まっていたのですが、私としてはブログと同じような心境で書いていたんです。まさか本になるとは思っていなくて、「締切だから書かないと」と自分の中にあるものを全部出していたら、「いや、本にしますよ」と言われて(笑)。

    そこで初めて怖じ気づいてしまって、単行本化にあたっては「これならぎりぎり大丈夫かな」というラインまで手を入れています。でも自分の病気のことなど、結構具体的ですよね(笑)。

    夫のちんぽが入らない
    著者:こだま
    発売日:2017年01月
    発行所:扶桑社
    価格:1,404円(税込)
    ISBNコード:9784594075897

    ――こだまさんの場合、体験されている事柄が特徴的なものばかりなので、「どうしてここまで書いて、周りの人にバレないんだろう?」と不思議に思いました(笑)。

    病院の先生が読んだら「あれ、あの人が書いたのかな?」と思うかもしれないですけれど、私は人間関係が狭くて、現状を知っているような友達はほぼいないんです。

    家族も本をほとんど読まないので、「だったら書いちゃえ」と大胆になっている部分もありますね。ただ、「ここまで書いたら私、この先どうなっちゃうんだろう」とは毎回思っています。




     

    “おしまいの地”で見いだしたことを書く

    ――タイトルの『ここは、おしまいの地』は収録作の一編ですね。「ヤンキーと百姓が九割を占める」という、こだまさんが生まれ育った集落での思い出について書かれています。

    本のタイトルは収録作からとりたいという気持ちがあって、「ここは、おしまいの地」と「私の守り神」の2つで最後まで迷いました。

    全体的に生まれた集落や住んだ土地の話が多いのですが、集落を出て移り住んだ先も僻地ばかりだったんです。そんな「“おしまいの地”で見いだしたことを書いた本」ということで、このタイトルになりました。

    ――「私の守り神」は持病の影響で手術をされた際の、入院生活についてのお話ですね。同室のおばあさんたちのたくましさに「そういうふうに生きて、死にたい」と書かれていますが、まさに同感でした。

    病室のおばあさんたちに学んだことは多かったですね。車いすに乗っていたり、酸素ボンベが必要だったりと私よりもずっと症状が重いのに、みなさんカラッと生きている。「こうなってしまったのだから、悩んでいても仕方ない」と人生を謳歌している生き方に、元気をもらうことが多かったです。

    この話は「Quick Japan」からの2回目の依頼のときに書いたものなのですが、「何か長めのものを書きませんか」といわれて、「あの入院の日々を書けるな」とすぐにひらめきました。

    ――ほかに気に入っているお話はありますか?

    「川本、またおまえか」という一編ですね。小学校時代に川本くんという同級生にからかわれたことをきっかけに、外見のコンプレックスが強くなって、もともと内気だった性格にさらに拍車がかかってしまったんです。その後十数年かけて、完全な克服とはいえないけれど、徐々に自分が変わっていく姿を書きました。

    ――大学生になって、その川本くんと旅先で再会したというエピソードが劇的ですね。

    そうなんです。川本くんはすごく背の高い男の子だったので、旅先の改札口で、人ごみの中にいてもぴょこんと顔が出ていて。「あれは川本くんじゃないか?」と見ていたら目が合って、自然と話をすることができました。

    この話を読んだ人に「映画みたいだね」と言われたのですが、自分でも「本当にこんな再会ってあるんだ」と印象に残った出来事でした。お互い少しずつ変わって大人になったんだなと実感した体験でしたね。

     

    前作とあわせて読むことで、こだまの人生が丸ごとわかる!

    ――ほかにも引っ越し業者に「ここまで臭いがキツい家は初めて」と苦笑されるような家に引っ越したりと、「事実は小説よりも奇なり」なエピソードが満載です。

    エッセイでは「くせえ家」と書いていますが、「くさい」とかのレベルじゃないんですよ。本当に「くせえ」としかいいようのない臭いで、ずっとドアを開けっ放しにして空気を入れ替えても全然消えない。

    あの家に関しては私のせいではないような気がするのですが、そういう“貧乏くじ”のような、変なものにしょっちゅう当たってしまうんですよね。

    ――これだけ盛りだくさんの内容になっているのは、そういう“引きが強い”こともあるのかもしれませんが、こだまさん自身がいろんなことをじっくり見ていて、細かいところまで覚えていらっしゃるからなのかなと思いました。

    たとえば「私の守り神」に書いたエピソードは、入院中に書き溜めていた日記をエッセイに盛り込んでいるんです。当時は本当にすることがなかったので、寝る前に「こんな出来事があった」「おばあさんがこんな変な話をしていた」と一日の出来事を日記につけていました。

    ――日記といえば、表題作「ここは、おしまいの地」にも、小学生の時に書いていた日記の引用が出てきますね。

    日記をつけていたのは「話し相手がいなかった」という理由が一番大きいと思います。自分に向かって話しかける形で書き続けていました。

    たぶん高校卒業まで書いていたと思うのですが、その頃のものは捨てちゃったんですよね。小学生のものだけは手元に何冊か残してあるのですが、やっぱり恥ずかしくて。

    「(本人バレの心配について)家族は本をほとんど読まないから大丈夫」と言いましたが、日記は「何かの拍子に家族に見られたらどうしよう」「絶対見られたくない」と思っている。日記でさえそうなので、自分自身のことだけ書いた本作はともかく、前作は周りの人に読まれたら生きていられないかもしれません(苦笑)。

    ――前作はおもに夫婦間の問題や、そこから生じるご自身の悩みについて書かれているからですね? 今回はこだまさんを取り巻く人々のことが多く書かれているので、内と外に向かうこだまさんの視線が映し出す、対になる作品とも読めますね。

    確かにこの2冊で、現時点での私の人生が完成するような感じですね。

    前作は夫婦間や母との関係、仕事の悩みなどを軸にしています。今作は前作の単行本化とほとんど同時進行で連載していたエッセイなので、前作では書かなかったことを中心に書きたいなと思っていました。

    『夫のちんぽが入らない』と思い悩んでいた以外にも、「私の生活はこういうふうに続いていた」というまた違う世界を書いています。すでに「前作よりも楽しく読めた」と感想をくださる方もいて、そういう本になっていたらうれしいですね。

    後編へ続く(2018年2月20日公開予定)
    何があっても苦笑いしながら生きていくしかない――こだま『ここは、おしまいの地』インタビュー【後編】

    こだまさん 画像こだま
    主婦。2017年1月、実話を元にした私小説『夫のちんぽが入らない』でデビュー。発売からいままでで13万部(2017年12月現在)を到達し、「ブクログ大賞2017」ではエッセイ・ノンフィクション部門にノミネートされる。現在「Quick Japan」「週刊SPA!」で連載中。

    ここは、おしまいの地
    著者:こだま
    発売日:2018年02月
    発行所:太田出版
    価格:1,296円(税込)
    ISBNコード:9784778316129
    夫のちんぽが入らない
    著者:こだま
    発売日:2017年01月
    発行所:扶桑社
    価格:1,404円(税込)
    ISBNコード:9784594075897

     

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