• 壇蜜は、原稿をたいがい全裸で書いている――『たべたいの』インタビュー

    2018年02月02日
    楽しむ
    日販 ほんのひきだし編集部「新刊展望」担当 猪越
    Pocket

    『たべたいの』発売記念!壇蜜インタビュー

    2017年11月に、『たべたいの』を発売した壇蜜さん。本書は食にまつわる思いや記憶を絡めながら、「食べ物と自分自身との関係」について綴られたエッセイ集です。

    しかし壇蜜さんは、実は「食に対してさほど情熱的でない」のだそう。今回はそんな壇蜜さんが「食」をテーマに選んだ理由から、作品に込めた思いまでたっぷりお話を伺いました。

    たべたいの
    著者:壇蜜
    発売日:2017年11月
    発行所:新潮社
    価格:778円(税込)
    ISBNコード:9784106107412

    生ハムは、ピザやパスタにトッピングされ、オーブンに入れられてもまだ「生」なのか。ラブホテルで頼むピザのサイズはSMLどれが正解なのか。賞味期限切れの牛乳はいつまで「チャレンジ」できるのか。謎めく才女の脳裏に食を巡る疑問、懸念、記憶の数々が渦巻き続ける。「食べ物」が壇蜜を語り出す――。

    新潮社 公式サイト『たべたいの』より〉

     

    「食べ物」をテーマに過去といまをつなぐ

    ――『たべたいの』は、「週刊新潮」で2年にわたって連載されている「だんだん壇蜜」を一冊にまとめたエッセイ集です。まずはなぜ食べ物について書こうと思われたのか、連載のテーマを決めたきっかけを教えていただけますか?

    食べ物は、いままでの連載ではまだ掘り下げたことのないジャンルでしたし、食べることは生活の一環なので取材をすることなく毎週書けます。

    私は「過去回想型」の人間なので、過去を振り返りながらいま目の前にあるものにつなげていく、そんな枕が成立するテーマとして、誰にでも関わる食べ物ならうまくいくのではないかと思ったんです。また1,200字のエッセイというのは私にとってはちょっと長いので、連載するにあたってはマンネリにならないジャンルで書きたいなとも考えていました。

    ――『たべたいの』の目次を見ると、納豆や牛乳、魚肉ソーセージといった馴染み深い食べ物が並んでいます。それから「おつとめ品」や「お金がない時の食事」といった“庶民の生活”を想像させる項目もありますね。そういったものを起点に綴られた日々の疑問や楽しみ、思い出のエピソードなどは、読んでいて日々のささやかな暮らしを大切にしたくなるようなものばかりでした。

    読者に夢を持たせないのがこの本のコンセプトなので。「夢などない、あるのは肉体のみ」。魂はぎりぎりあるかもしれないですけれどね。

    ――「夢を持たせない」というのは、どういうことですか?

    この本を読んだ方が、「夢なんて見なくたっていいんだ」と思うようになってくれたらうれしいなと。やみくもに成功体験を求めたり、人生に迷ったり、「もっと充実させなきゃ」「どんなことも前向きに解釈しなきゃ」と無理に思ったり……。そういう、“生きることに思い詰めている人”が減ればいいなと思います。

    ――壇蜜さんのエッセイを読んでいて、控えめというか、“自戒”という言葉が浮かんでくるのはそのためでしょうか。『たべたいの』にも、学生時代に教わったこととして「傲(おご)らず、腐らず、身の丈にあった生活を」という言葉が出てきますよね。

    私は30歳になるまで就職もまともにできず、転職したり、親に借金したりのとんでもない奴でした。だからちょっといい波が来て、その波に乗って助けてくれる人がいても、「本来はだめな奴なんだ」ということは自分が一番知っているんです。

    ――「身の丈にあった生活を」のエピソードでは、その言葉が「トッピングの誘惑に抗う」という話につながっていくところが面白かったです。1冊読み終わっても、まだいろんなエピソードが読みたい、まだ壇蜜さんの頭の中が知りたいと思わされるエッセイでした。

    これからも手の込んだ料理を食べたり、お洒落な店に食事に行ったりしない人間がどういう暮らしをしているか。何を食べて私が作られてきたのか。そんなことを長きにわたって書いていけたらいいなと。でもまだ2年ですからね。連載を長く続けることが何より難しい時代ですけれど、まだそんなものなんだなあと感じています。

     

    原稿はたいがい全裸で書いている

    ――『たべたいの』には一編ごとに、テーマにまつわるイラストや俳句も添えられていますね。俳句は『壇蜜歳時記』(2016年11月刊行)でも披露されていましたが、文章だけでなく、俳句やイラストを書くのもお好きなんですか?

    好き嫌いの感情は置いておいて、「そうでもして下駄を履かせないと『週刊新潮』での連載は難しいな」と思っていました。最初から敷居が高い感じではあったのですが、ようやく慣れてきましたね。でもなぜそうしたのかは覚えていなくて、巡り巡ってやることが3つになったなという感じです(笑)。

    書いている時も、その回に似合うものができると「よかった……」と。読者の方には枕と落ちと、俳句やイラストも含めて全部で成立した世界を好きになってもらいたいです。

    ▼各編のタイトルの下にその食べ物にまつわる一句と、イラストが添えられています。

    壇蜜歳時記
    著者:壇蜜
    発売日:2016年12月
    発行所:大和書房
    価格:1,512円(税込)
    ISBNコード:9784479772057

    1 2
    タグ
    Pocket

  • すばる舎_スマホ記事下

    abareru20181201
  • ページの先頭に戻る