〈池井戸潤さんインタビュー〉半沢直樹再び!シリーズ3作目『ロスジェネの逆襲』文庫版が発売

2015年09月02日
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日販 商品情報センター「新刊展望」編集部
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〈大ヒットドラマ「半沢直樹」の原作小説シリーズ第3弾、池井戸潤さんの『ロスジェネの逆襲』文庫版がこのほど発売されました。単行本刊行(2012年6月)の際のインタビューを再掲載します。〉

バブル世代の銀行員・半沢直樹を主人公にした『オレたちバブル入行組』『オレたち花のバブル組』(文春文庫)に続くシリーズ第3弾となるのが、『ロスジェネの逆襲』だ。

前2作で半沢は、銀行内外の人間や組織によってもたらされる数々の圧力や逆境を、その知恵と勇気で敢然と撥ね返してきた。大小さまざまな理不尽を感じながらも、それを飲み込んで自分の仕事に日々励む読者にとって、まさに胸がすくような小説なのである。

そして今作。舞台は2004年、東京。入行17年目の半沢は、東京中央銀行から系列の証券会社に部長として出向中の身である。その東京セントラル証券が、願ってもないビッグビジネスを獲得した。案件は、大手IT企業「電脳雑技集団」による敵対的買収、そのアドバイザー業務だ。ところが、せっかく掴んだ契約は、親会社の銀行に横取りされてしまう。ここで、シリーズおなじみの半沢の決め台詞の登場となる。「――やられたら、倍返しだ」

IT企業の謀略や親会社の横暴に立ち向かう半沢。息詰まるような熾烈な企業買収合戦。そんな読みごたえたっぷりの物語に加えて、『ロスジェネの逆襲』のタイトルが示すとおり、「バブル世代vsロスジェネ世代」という「世代論」が重要なテーマとなっているのも、今作の魅力である。ロスジェネ世代の代表として登場するのは、半沢の部下で証券会社のプロパー社員・森山雅弘と、若き起業家・瀬名洋介。彼らの活躍にも、胸が熱くなる。

ダイナミックな物語展開はシリーズ随一。読後感は、爽快の一言だ。

本作に込めた想いを著者に語っていただいた。

ロスジェネの逆襲
著者:池井戸潤
発売日:2015年09月
発行所:文藝春秋
価格:756円(税込)
ISBNコード:9784167904388

 

「世代論なんてのは根拠がないってことさ」by 半沢直樹

僕自身がバブル世代なんですが、あるとき、バブル世代は“既得権益者”と呼ばれているらしいと聞いた。権益と言えるほどのものがあるのか?と、最初は意味がよくわからなかったんだけど、「頭は悪いし、実力もないのに、大企業に入社していることが権益だ」というんです(笑)。

いや、それはちょっと違うだろうと。バブル世代にも優秀な人はたくさんいるわけで、世代によって優秀だとかダメだとかいうことはあり得ない。そもそもロスト・ジェネレーションと呼ばれる人たちが「自分たちは就職氷河期だったから」と卑屈になったところから出ている話だと思うんです。でも、それも小さな話で。太平洋戦争のとき「天皇陛下万歳」と言って死ななければならない時代に若者だった人は、ロスジェネ世代を見てどう思うか。「いい時代だね」と言うでしょう。だからと言って「お前たちは……」とは言わないでしょうね、きっと。そこに僕は、世代論の無意味さや人間の小ささを感じるわけです。

かつて、イザヤ・ベンダサンの『日本人とユダヤ人』(1970年刊)がベストセラーになってから、「日本人論」が大流行したことがあります。「日本人とは」「日本人的なもの」について多くの人が納得する話がたくさん出てきた。ところが、それらに科学的な根拠はまったくない。世代論もそれと同じだと思うんです。血液型と同じで、レッテル貼りの遊びですよ(笑)。

ただ、レッテルを貼って納得したり、就職氷河期の自分たちを卑下する若者がいることは事実で、彼らはバブル社員を相手に「だからあいつらはバカなんだ」と。でも、僕たち自身もそうだったからわかるけど、若者にとっては上の人たちはみんなバカに見えるんだよね。それは普遍的な現象。そのことに彼らは気づいていないんです。

今までのロスジェネ世代は、年齢的に会社員のピラミッド構造では底辺にいたから、ただ文句を言っていればよかった。それで特に何の反論もされなかったと思います。でも彼らもそろそろ中堅になってきて、あと10年もすれば会社を支える世代となる。そうなると、文句を言っているだけでは始まらないわけです。文句を言うのは誰でもできる。でもそれでは誰も納得しない。ただ、バカだとかダメだとか言うのではなく、ではどうすればよいのか、その答えを見つけなければいけない――自分たちがそんな年代になってきつつあるということに気づくべきなんです。

そういう僕の考えを、半沢のシリーズでストーリーにまぶしてみたのが、この作品です。だから、半沢が部下の森山に、仕事論として世代の話をしてみせるという形になっています。

 

〈結局、どこまでいっても割を食うのはオレたちロスジェネ世代だ――そう森山は確信した。〉

ロスジェネ世代の人たちがこの話をどんなふうに読むかわからないけど、「オヤジが書いたつまらない戯言だ」と言う人はたぶんいっぱいいるんだろうな(笑)。それはそれで別にいいんです。でも、怒るにしても認めるにしても、なるほどと思うにしてもバカバカしいと思うにしても、何らかの感想が出てきたらおもしろいですね。

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