• 「チマチマした嫌がらせを読者に送り続けて、広がりそうになる裾野を狭めたい」―冨水明編集長の「ビバリウムガイド」への思い

    2017年12月04日
    楽しむ
    日販 ほんのひきだし編集部「日販通信」担当
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    昨今、ヘビやトカゲ、カメ、カエルといった爬虫類・両生類の飼育を楽しむ人が増えています。

    そんな人たち必携なのが、爬虫類・両生類の専門誌「ビバリウムガイド」。最新号の「蛇 長すぎる」をはじめ「キモいは正義」「ゾワッとする蟲」など毎号ユニークな特集テーマを掲げ、種類別の飼育法や生体カタログ、イベントレポートなど、初心者もマニアも楽しめる&役立つ情報がぎっしり詰めこまれている雑誌です。

    この「ビバリウムガイド」を手がける編集長は、爬虫類・両生類好きの世界では相当な有名人である冨水明さん。自宅で100を超える生きものを飼育しており、『タランチュラの世界』『可愛いヤモリと暮らす本』などの著書も出版しています。

    さて、そんな「ビバリウムガイド」はどのようにして世に送り出されているのでしょうか? 冨水編集長にエッセイをお寄せいただきました。




     

    「ゲテモノ雑誌でございます」  文・エムピージェー「ビバリウムガイド」編集長 冨水明

    11月2日発売の最新号をすべて入稿し終えた10月25日に、ヘビの脱皮を撮影しながら、このエッセイを書いております。

    どの雑誌でもそうでしょうが、多くの場合、特集で取り上げる対象が雑誌の命。我が「ビバリウムガイド」は、まさにその命を扱っている雑誌です。大きく分ければペット誌ということになるのでしょうが、扱う生き物はヘビやトカゲ、カメなどの爬虫類をメインにカエルなどの両生類、さらにはタランチュラやサソリといったいわゆる奇蟲まで。そう、ゲテモノでございます。そういった生き物の飼育情報誌なのですが、編集長たる私自身は「これらはペットにはなり得ない」と言い続けております。ペット=愛玩動物であれば、これらゲテモノはやはりニュアンスが違います。撫でて楽しむ生き物でもありません。どちらかと言えば観賞魚や観葉植物に近い位置づけだと思っています。

    今年が創刊20周年だったのですが、この愛すべきゲテモノたちを飼育する趣味の立ち位置は大きく変わりました。なんとなく世間様から市民権を得てしまったかのような錯覚を受ける程度までは広がってしまったのです。それを全力で狭めようというのが、本誌のテーマです。おすすめしているように見せてハードルを上げるといった、チマチマした嫌がらせを読者に送り続けているのです。

    私は編集長という肩書でありながら、実質は編集に関わっておりません。主な仕事は企画と執筆、撮影です。ほぼ一冊まるごと私が考え、書き、撮っているということになります。私自身がマニアであり、自宅でも100を超える様々な生き物を飼っています。つまり、もっとも読者寄りの人間なのです。マニアゆえに、この趣味がダメな広がり方をするのを嫌うわけです。世はSNS全盛。ちょっと覗けば「かわいい」という言葉と共に多くのゲテモノたちの姿が目に飛び込んできます。そこにはハムスターのごとき扱いを受けたヤモリやヘビの姿が……。嘆かわしい。それを時にはきつい言葉で、時にはそれと知られずに、軌道修正していくのが本誌の役目だと思って作っています。

    趣味の世界は広がればそれだけ薄まります。薄まった結果、商業的に成功するのなら、それは良いことなのでしょう。しかしながら我々が扱うのは「命」。かつ、常に様々な法律と戦わねばならない趣味でもあるのです。気楽に飼われて棄てられる逃がされる。法律が厳しくなり飼える種類が減る。世間から白い目で見られる。この時、もっとも嘆き悲しむのは、しでかした人たちではなく、真面目にこの趣味を楽しんでいる人たちです。我々はこっそり秘かに楽しみたいだけなのですがね。

    趣味、および業界を守ると言えばおこがましいのですが、それだけを考えながら作ってきた20年でした。撮影中にオオムカデに咬まれて意識不明になったり、ショップでの撮影時にストロボを焚いたことで何十万もするヤモリが尾を切り落としてしまったり(この場合は原価弁償です)、タランチュラの脱皮を撮るために半日眺め続け、仮眠の間に終わっていたり。生き物相手、命相手のために常にこちらの思うままにはなりません。「どうしてもこれが撮りたいから印刷所を止めて~!」。編集者はたまったものじゃありませんよね。ほぼ2人で作っているのですが、編集者が対外的な調整、私が業界内の調整という役割分担で、なんとか成り立っています。なにせ業界内ルール(村の掟とも言います)が特殊なもので。ゆえに私の編集長という肩書は、内側に対するものなんですよ。


    エムピージェー「ビバリウムガイド」編集長
    冨水 明―TOMIMIZU Akira
    1971年生まれ。1995年に「月刊アクアライフ」でライターデビュー。1996年、タランチュラの飼育ノウハウや魅力を伝える『タランチュラの世界』を著し、話題を呼んだ。1997年に爬虫・両生類飼育の専門誌「ビバリウムガイド」を立ち上げ、現在に至る。企画から執筆・撮影まで自ら行い、さまざまな爬虫・両生類の魅力を飼育者目線で伝え続けている。著書に『爬虫両生類の上手な飼い方』『可愛いヤモリと暮らす本』『はじめてのヘビ コーンスネーク』『ミズガメ大百科』『大蜥蜴世界』(いずれもエムピージェー)などがある。


    「ビバリウムガイド」
    飼育情報、生体カタログなど、爬虫・両生類の最新情報が満載。「難しいことは簡単に、簡単なことはそれっぽく」、写真は多用するもののそれ以上の文章量で、読ませる雑誌となっている。2017年冬号(11月2日発売)の特集は「蛇 長すぎる」。マニアでも忘れているようなヘビの基礎を紹介する。初心者向けのおすすめヘビカタログ、ちょっと特殊なヘビカタログも。特別付録「2018年 爬虫類カレンダー」。

    ビバリウムガイド 2017年 12月号
    著者:
    発売日:2017年11月02日
    発行所:エムピージェー
    価格:1,400円(税込)
    JANコード:4910177951271
    爬虫両生類の上手な飼い方
    著者:富水明
    発売日:2014年06月
    発行所:エムピージェー
    価格:2,430円(税込)
    ISBNコード:9784904837382
    可愛いヤモリと暮らす本 新版
    著者:富水明
    発売日:2010年02月
    発行所:エムピージェー
    価格:2,057円(税込)
    ISBNコード:9784904837009

    (「日販通信」2017年12月号「編集長雑記」より転載)

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