• 「丸まった靴下」がかわいい!?独特の着眼点が面白い渋谷直角のコラム集『コラムの王子さま(42さい)』:渋谷直角インタビュー【後編】

    2017年10月06日
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    日販 ほんのひきだし編集部「新刊展望」担当 猪越
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    漫画『奥田民生になりたいボーイ 出会う男すべて狂わせるガール』が映画化された渋谷直角さん。前回は原作漫画や映画について伺いましたが、今回は8月30日(水)に発売された新刊『コラムの王子さま(42さい)』について伺います。

    『コラムの王子さま(42さい)』は、渋谷さんならではの絵や漫画が渾然一体となったコラム集。「気にするとこ、そこ!?」と思わず突っ込みたくなる妄想炸裂の本作について、たっぷりお話を聞かせていただきました。

    コラムの王子さま(42さい)
    著者:渋谷直角
    発売日:2017年08月
    発行所:文藝春秋
    価格:1,296円(税込)
    ISBNコード:9784163907093

    「とても」の丸みボディをいつくしみ、「中指」の可哀想さを世間に喚起し、「お湯」のセルフプロデュースの高さに着目し……。森羅万象の「そこ!?」というものに過剰に思いをはせた、44本のコラム集です。

    文藝春秋BOOKS『コラムの王子さま(42さい)』より〉

    前編はこちら
    「いっちょやってみよう」のノリで奇蹟的な大作に!?「奥田民生になりたいボーイ 出会う男すべて狂わせるガール」の原作者・渋谷直角インタビュー【前編】

     

    『コラムの王子さま(42さい)』は一冊まるごとかわいい “天使”の本

    ――『コラムの王子さま(42さい)』はタイトルもそうですが、収録されているコラムやイラスト、装幀に至るまで“一冊まるごとかわいい”という印象を受けました。

    『コラムの王子さま(42さい)』を作っているときは、妖精というか、“天使”の本にしたいと考えていました。女性誌の連載なので、ネガティブなものや重苦しいものよりも、読んで気分が楽になるものにしたいなと思って、「何言ってるの!」と突っ込んでもらえるようなものを書いています。

    タイトルに実年齢を入れたのは、“王子さま”を名乗ることへの照れですね(笑)。王子を名乗るというのはかなり強気というか、普段の自分からするとないパターンなんですけれど、今回は覚悟を決めてみました。

    ――本書は「CREA」で連載された「字意識過剰」というコラムを中心に収めたものですね。さまざまな言葉について、渋谷さんの妄想が炸裂しています。

    僕はいわゆる「サブカル系」と言われていますが、その中でもマガジンハウス系なんですね。マガジンハウスの「relax」という雑誌でライターを始めて、その前から「Olive」なんかも読んでいました。カルチャー全般に興味があって、音楽や映画、漫画はもちろん、洋服やインテリア、雑貨とかも好きなんです。でもセンスがいい人は他にいっぱいいるから、同じことをやってもしょうがない。誰も触れないようなものを「かわいい」と言い出す感じです。

    「字意識過剰」の連載にあたっては、「ひとつの言葉だけで話を転がせられないかな」と考えました。といっても、初めのうちは自分でも方向性がよくわからなくて(笑)。途中からだんだん「こういう内容のコラムなんだな」とわかってきた感じです。

     

    一つの言葉に突っ込んで書いてみたかった

    ――なぜ“言葉”をテーマにしようと思ったのですか?

    言葉って、言い回しをちょっと変えるだけで急に情感が出てきたりしますよね。例えば「ワイン」というよりも「ぶどう酒」のほうが甘美な響きがあるし、「ちょっと寝るわ」と「ちょっと横になるわ」では受ける感じがまったく違う。

    「横になるというのはおもしろい言葉だな」「そういえばいつも、タテになってるんだな、人間も動物も建物も」「それに日本は縦社会だよな。その中で横になるって反抗的態度かも」と考えはじめると、これはこれでひとつの世界が広がっているんじゃないかと。今まで一つの言葉に対してそういうふうに突っ込んだことがなかったので、書いてみたいなと思ったんです。

    ――コラムを読んでいて、普段何気なく目にするものや使っている言葉がいとおしくなる感覚がありました。

    「アニミズム」という、すべてのものに霊魂が宿っているという考え方がありますよね。僕にとっては「自動販売機の横のごみ箱」とか、「瓶のふた」みたいなものがキャッキャやっているように見える時があるんです。完全にアブナイ発言ですけれど(笑)、そういうときに「これ、かわいいな」と思ったりします。

    ――こういうふうに物事を見られたら、イライラせずに日々楽しく過ごせそうですね。

    僕の頭の中って、わりといつもこんな感じなんです。日常で見たり、感じたりすることを書いています。

    例えばお皿の上のお箸を1本落としちゃって、目の前に残りの1本だけが残っているときってすごく不安な気持ちになるんです。「ああ~!」みたいな。普通は「お箸もう1膳」とすぐ頼むところを言わないでしばらく待ってみると、どんどん不安になって「耐えられない」という気分になってくる。「1本だけ残っている」という状況が。じゃあ、この残った1本の箸自体の気持ちってどうなんだ、とか、そういうちょっとしたことにフォーカスしていくのが楽しいなって。

    そういう「瞬間だけおもしろい」というネタはいっぱいあって。それが暮らしている中でほかのネタとくっついたり、「同じだ!」というものが見つかったりして1本のコラムになります。

     

    「丸まった靴下」のかわいさにハマる

    ――ご自身で特に気に入っているコラムはありますか?

    ひとつは「包む」というコラムですね。「包まれてるモノはだいたいかわいい」という話から、風呂敷や着物といった「包む」ことに自覚的な日本の文化ともつながっていく。本当はもっと掘り下げるとアカデミックなものになるんですけれど、あえてしないようにしてます。くだらないままで終わらせちゃいます。

    渋谷直角著『コラムの王子さま(42さい)』より

    「丸まった靴下」なんかも、こういうのがふいにハマったりするんです。いろいろなテイストのものが入っているので、読む人のその日のコンディションによって、染み入るものが違う本かもしれません。

    渋谷直角著『コラムの王子さま(42さい)』より

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