• 宮下奈都さんが「知らない本屋さん」で見つけた本:読書日記「旅の本屋さんにて」

    2017年09月13日
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    日販 ほんのひきだし編集部 「新刊展望」担当
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    ある書店員の呼びかけが発端となりTwitterで結成された「本屋さん秘密結社」でプッシュされ、それをきっかけにブレイクした『スコーレNo.4』。そして、全国の書店員が“最も売りたい本”を選ぶ「本屋大賞」を2016年に受賞した『羊と鋼の森』。

    本屋さんとの深い関わりを持つ作家・宮下奈都さんは、今夏に家族旅行で訪れた北海道でも、本屋さんに立ち寄ったそうです。

    旅先の“知らない本屋さん”で宮下さんを惹きつけたのは、どんな本だったのでしょうか? その時のエピソードを読書日記として寄せていただきました。

    ▼『スコーレNo.4』のスピンオフ3編を含む6編が収録された短編集『つぼみ』。8月16日(水)より発売中です!

    つぼみ
    著者:宮下奈都
    発売日:2017年08月
    発行所:光文社
    価格:1,620円(税込)
    ISBNコード:9784334911799

    宮下奈都

    ▶宮下奈都さんのプロフィールはこちら

     

    旅の本屋さんにて

    夏休みに、家族でゆっくりと北海道を旅行した。いろんな街で本屋さんが気になる。ちょっと寄るだけのつもりが、いつのまにか熱心に棚の間を歩きまわったり立ち止まったり。知らない本屋さんには知らない本がある。それはとても楽しいことだ。

    初めての本屋さんとはまだ信頼関係はない。もしかしたら、ぜんぜん好みじゃない品揃えかもしれないし、それは本屋さん側からすれば私のような客はお呼びじゃないってことだと思う。本屋さんとの相性は、ある。それでもやっぱり近づきたくて、きっかけがないかと店内をぐるぐるまわる。

    すると、さらっと見ただけでは気づかなかった本たちがだんだん目に入ってくる。こんな本があったのか、と驚いたり、感心したり。

    変な絵本があるなあ、と思わず手を伸ばしたのが『本の子』。表紙では、変な女の子が本の上にすわっている。彼女こそ、本から生まれた子なのだ。この世界の海も、道も、山も、闇も、怪物も、物語の中の言葉でできている。絵本のページからあふれ出しそうな言葉たちを追いかけるうちに、ふと目に留まった言葉が私の胸のどこかを叩いた。コン。コンコン。「あなたきっと、たっぷり勇気をお持ちですよ」。ああ、これ、オズの魔法使いだ。そう思い出した途端、臆病な私にももしかしたら勇気はあるのかも、と幼い心を震わせた、むかしむかしの読書体験がぶわっとよみがえってきた。そうだ、「わたしたちは物語でできている」のだ。

    本の子
    著者:オリヴァー・ジェファーズ サム・ウィンストン 柴田元幸
    発売日:2017年06月
    発行所:ポプラ社
    価格:1,728円(税込)
    ISBNコード:9784591154571

    『僕らの社会主義』。これは、読みたいと思っていながら、つい買いそびれていた本だ。ここで会ったが百年目、と即購入。社会主義というと、政治の一思想であって過激なのではないか、危険な側面があるのではないか、と疑われがちだと思う。でも、哲学の研究者と、コミュニティデザインを専門とする建築家との間で語られる社会主義は、楽しさ、美しさを追求し、社会をよくしていくためのひとつのやり方である。

    私たちが生きるこの社会を、すでに完璧で満ち足りた社会だと考えるなら、新たな道は必要ないかもしれない。けれど、今、のんきな小説家であるはずの私にさえも、あちこちにたくさんの問題があるのが見える。さまざまな意味で「豊かに」生きる。そのためにどうすればいいか、何ができるか。考えていくのは、とてもおもしろいことだろう。

    僕らの社会主義
    著者:國分功一郎 山崎亮
    発売日:2017年07月
    発行所:筑摩書房
    価格:864円(税込)
    ISBNコード:9784480069733

    オホーツク地方の小さな町の本屋さんで、私の新刊『つぼみ』を見つけた。棚に一冊だけ。そこだけ、ぱっと輝いて見えた。思わず手に取って、このまま買ってしまおうか、ここで読んでくださる方のために残そうか、しばし迷った。誰かに読んでほしい気持ちと、福井からこんなに離れたところにひとりで旅に出た本を連れて帰りたい気持ちが闘った(結局、補充されると信じて購入)。

    『それでも それでも それでも』。これは、旅行中の本屋さんで買ったのではなく、版元のサイトから通販で買った。サイン本だったのだ!

    「週刊金曜日」連載中からときどき読んではいたけれど、一冊にまとまるのを楽しみに待っていた。この人の写真には、妙に引っかかって何度も見てしまいたくなる力がある。何を写したかったのか、読もうとしたくなる。そこに本人の言葉がつくから、過剰になるようで、ぎりぎりそうはならない、写真集になっていた。力があることを知っていたから、直筆のサインをこの目で見たかった。筆致や勢いを感じ取りたかった。――なんて書いてみたけど、ただのファンです。

    それでもそれでもそれでも
    著者:齋藤陽道
    発売日:2017年08月
    発行所:ナナロク社
    価格:1,944円(税込)
    ISBNコード:9784904292754

    宮下奈都 Natsu Miyashita
    1967年福井県生まれ。上智大学文学部哲学科卒。2004年、「静かな雨」が文學界新人賞佳作に入選。2007年に発表された長編『スコーレNo.4』が話題となる。『羊と鋼の森』で2016年本屋大賞を受賞。瑞々しい感性と綿密な心理描写で、最も注目される作家のひとり。著書に『静かな雨』『ふたつのしるし』『たった、それだけ』『窓の向こうのガ-シュウィン』『誰かが足りない』など多数。

    羊と鋼の森
    著者:宮下奈都
    発売日:2015年09月
    発行所:文藝春秋
    価格:1,620円(税込)
    ISBNコード:9784163902944
    スコーレno.4
    著者:宮下奈都
    発売日:2009年11月
    発行所:光文社
    価格:617円(税込)
    ISBNコード:9784334746780
    つぼみ
    著者:宮下奈都
    発売日:2017年08月
    発行所:光文社
    価格:1,620円(税込)
    ISBNコード:9784334911799

    まだ何者でもない、何者になるのかもわからない、わたしの、あなたの、世界のはじまり。
    『スコーレNo.4』の女たちはひたむきに花と向き合う。
    凜として、たおやかに、6つのこれからの物語。

    10年前に書いたもの、5年前のもの、素敵な女性ファッション誌に載ったもの、いろいろ取り混ぜて、あらためて読んで、はっとしました。今よりちょっと若くてちょっとがんばっている宮下の小説を、ほかでもない本人が読んで勇気づけられたのです。このときにしか書けなかったものがここにあると思いました。小説って楽しい。もっと読みたい、もっと書きたい、と思いました。
    宮下奈都

    光文社公式サイト『つぼみ』より〉

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    宮下奈都さんの本屋大賞受賞後第一作『静かな雨』 「これだけ私の人生の詰まったものを書けといわれたらもう書けない」
    〈インタビュー〉宮下奈都さん『窓の向こうのガーシュウィン』 光に向かってゆっくりと


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