• 『100かいだてのいえ』は、連想ゲームでできている!?【絵本作家・いわいとしおインタビュー(後編)】

    2017年08月23日
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    日販 ほんのひきだし編集部「新刊展望」担当 猪越
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    『100かいだてのいえ』シリーズで大人気の絵本作家・いわいとしおさん。インタビュー前編では、最新作『そらの100かいだてのいえ』が生まれたきっかけについてお話を聞きました。そこには現在、伊豆で暮らすいわいさんが自然の中で感じたことが大きく影響しているそう。シジュウカラを主人公にした理由や、これまでとは一味違う登場人物たちについて語っていただいています。

    後編では、緻密に描き込まれた絵に隠されたエピソードから、「絵本」という媒体そのものへの思いまで、たっぷりとお話を伺っていきます。

    前編はこちら
    ・伊豆に暮らす著者が、『そらの100かいだてのいえ』に込めた“自然”への思い【いわいとしおインタビュー(前編)】

    そらの100かいだてのいえ
    著者:岩井俊雄
    発売日:2017年08月
    発行所:偕成社
    価格:1,296円(税込)
    ISBNコード:9784033326009

     

    絵を見て、物語を“体験”できる絵本

    ――このシリーズのもうひとつの特徴としては、絵の部分にたくさんの物語が描き込まれていることですね。1階から100階までの各部屋に生活があって、その暮らしぶりや小道具につい見入ってしまいます。

    普通なら物語が決まったら、それに沿って、描かなければならない絵や場⾯っておのずと決まってしまうと思うんです。ところが『100かいだてのいえ』シリーズでは、最後の最後にある階をまったく別な絵に変えてしまうこともよくあります。階と階の順番を変えたり、⼀旦ある場面を完成させても、もっと面白い場面を思いつけばそっくり変えられる。物語の⾻格に関係ないところであれば、最後の最後までよりおもしろくしようと粘れるんですね。それが、このシリーズの人気の秘密のひとつかもしれません。

    ――確かに「こんなところにこんな物が描かれていた」とか、「このシーンでこんなことをしている」などキャラクターを生かしたアイデアがいっぱいで、大人でもページを開くたびに発見があります。

    以前、福⾳館書店の相談役をされている元「こどものとも」の名編集者でもあった松居直さんが、雑誌のインタビューで、絵本とは「お話を読むというより、絵を⾒て体験するもの。⽂字で書かれていない部分を楽しめるのがいい絵本です」というような意味のことを言われていました。それを読んで、僕の『100かいだてのいえ』は、まさに「絵を読む絵本」になっていたのかもな、と思いました。

    『100かいだてのいえ』では、⼀つ⼀つの階にセリフをつけるとあまりにうるさくなるので、主⼈公がいる階だけにしています。ほかの階は絵だけですが、その部分がおもしろくなければこのシリーズは魅⼒的になりません。⾒るだけで何をしているかわかる、声が聞こえてくるような絵になるように⼼がけています。

    ⼩さい⼦には読み取れない部分があったとしても、もしかしたら何年か後には気づいてもらえるかもしれない。さらには、僕の個人的な、たぶんほとんどの人が気づかないような、遊びも⼊れてあります。

    本作でいえば、雪が⼿紙を書いている場⾯があるのですが、これは僕が尊敬する科学者で、雪の結晶を初めて⼈⼯的に作った中⾕宇吉郎さんにちなんでいます。中⾕さんには「雪は天から送られた⼿紙である」という名⾔があり、雪が⼿紙を書いている場面はぜひ今回描きたかったんですね。

     

    平和的乗り物“○○ーン”とは

    ――そういったアイデアは、次々と湧いてくるものなのですか?

    連想ゲームみたいなもので、例えばくもさんの家や暮らしは、白くてモコモコ、ふわふわしているものからの連想です。「羊毛フェルトのモコモコした感じは雲と似ているな」「じゃあくもさんの仕事として、モコモコした帽子を作る職人がいたり、ブティックをやっているのはどうだろう」とか、「タンポポを栽培して、綿毛を集めてそれを材料や食べものにしているのはどうかな」とか、どんどん連想していって、その中から読者が共感してくれそうなものを絵にしています。

    他には、くもさんが作っている乗り物は、最近話題のドローンのアレンジですね。ドローンはちょっと不気味な存在ですが、それを自分なりに平和的に描いてみようかなと。「ドローン」をもじって、僕⾃⾝は「フワーン」と呼んでいます(笑)。フワーンに、くもさんが脱いだ服を乗せると上がっていって、他の住人が洗ってくれたり……と、上下につながりをもたせるのに役立ちました。 ▲くもさんが住んでいるのは、1階から10階。建物の左右を飛んでいるのが“フワーン”。5階で載せられた洗濯物がキャラクターたちの手によってどのようにきれいになっていくのか、ぜひ『そらの100かいだてのいえ』で確かめてみてください。

     

    ――階段なども各階で形が工夫されていて、登った感触を想像するだけでワクワクします。

    「この階段は登ってみたらどんな感じがするのかな」「宙に浮いているのかな」と、登っていくときのリアリティを体感できることが⼤事だと思うんですね。⼦どもたちは⼀旦絵本に⼊り込むと、⾃分がその世界に本当に⾏ったかのように想像しながら読んでくれます。僕も⼩さい頃に読んだ絵本の「アイスクリームがすごく美味しそうだった」とか「あの絵が怖かった」という感じを、いまだに鮮明に思い出すことができます。それが絵本の⼀番おもしろいところじゃないでしょうか。だからこそ、絵本のディテールはとても⼤切にしたいと思っています。


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