• 「はじめることよりも、つづけることのほうが難しい」雑貨店おやつのトノイケミキさんが10年間を振り返って思うこと

    2017年06月28日
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    「雑貨店 おやつ」トノイケミキ
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    阪急電鉄の桂駅(京都府)から約3分ほど歩いたところにある、「雑貨店 おやつ」。かわいらしい雑貨や焼き菓子、無添加のジャムなどを販売するこのお店は、2007年にWebサイトをオープンした後、2011年にこの場所へお店を構えました。

    「雑貨店 おやつ」の店主は、京都生まれのトノイケミキさん。「雑貨店 おやつ」10周年の節目に、これまでのことを一冊にまとめた『雑貨店おやつへようこそ』という本を出版されました。

    お店づくりのノウハウ、仕入のこと、お金の話、地域とのつながり……。本書に込めた思いについて、トノイケさんご本人に文章を寄せていただきました。

    雑貨店おやつへようこそ
    著者:トノイケミキ
    発売日:2017年05月
    発行所:西日本出版社
    価格:1,512円(税込)
    ISBNコード:9784908443138

     

    あなたとわたしをつなぐもの

    わたしは、京都で小さな雑貨店を切り盛りしている。店をつづけてきた経験が誰かの役に立てたらよいなと、2年かけて1冊の本にまとめた。ようやく本を書き上げて少しはゆっくりできるかなと思っていたけれど、本を出版してから業務は増えた。出版社から次々とメールがやってくる。

    「取材依頼が来ています。新聞社に連絡をとってください」
    「は~い」

    「ラジオの出演依頼が来ました。出てもらえますか」
    「はいはい」

    だいたい二つ返事でうけることが多いのだけど、この依頼には思考が止まってしまった。

    「『ほんのひきだし』というWebサイトに文を書いていただけますか」

    「う~ん……」

    しかもその目的というのが、「自分が書いた本を売るため」だという。自分の本を売るためにどんな文章を書いたら良いのか、さっぱりわからない。

    店では、いろいろな作り手の手作りの雑貨を販売している。その使い勝手やすばらしさをわたしが体験した上で、販売していることが多い。体感しているから自信を持って販売できる。これは自分が作っていないからこそできること。自分が作っていたなら恥ずかしさが先に立ってしまう。

    まる1日考えて「わかりました」とメールを送った。

    本を売るためではない。「ほんのひきだし」を読んでいる人とつながりたいと思ったから。

     

    つづけること

    先日、小学生になる子どもが突然習っているピアノをやめたいと言い出した。よくよく聞いてみるとピアノをやめたいのではなくて、どうしても今やっている曲を弾きたいという気持ちにならないのだとか。それに加えて学校の宿題に部活動、やるべきことも増え、以前と状況がかわったというのもある。

    先生に相談し、練習する曲をかえてもらってようやく少し気持ちを持ち直した。はじめたときのモチベーションを維持するのは、たとえ趣味であっても難しい。

    仕事となればなおさら。あなたも自分のやっている仕事を

    「やめたい」

    と思ったことがあるのではないだろうか。

    実はこの本、発売直前までタイトルを悩んでいたのだけれど、編集や営業やデザイナーが集まって会議をしたとき

    「つづける」

    という言葉をタイトルに必ず使いたいということは、全員共通の思いだった。

    「つづけていくための働き方のコツ」はどんな職業でもかわらない。自分の置かれている状況も、家庭では父や母に、会社では新入社員から部長に、年を重ねて立場がかえながら、わたしたちは生きつづけ、働きつづける。

    そしてつくづく実感する。

    「はじめることよりも、つづけることのほうが難しいなあ」

     

    今のあなたに贈る

    だからこの本のタイトルは「店のつくり方」という開業のハウツーのかたちをとっているけれど、そのあとの「つづけ方」に重点を置いている。

    「おもしろかったけど、不思議な本ですよね。こんな本は出会ったことがないなあ」
    と言われた。仕事のことと子育てのことを一緒に書いている本はないんだとか。世の中にない本をつくりたかった私にとっては、最高のほめ言葉だった。

    「販売という仕事の基本的なことが書いてあるから、新入社員の教科書として使いたい」
    と営業職の人に言われ、

    大学の講師をしている人には
    「辞書を使ってキーワードを拾うというシーンは、早速授業で使い学生たちにやってもらいました」

    子育て中のお母さんには
    「お店のつくり方というよりも、子育て本として活用できる本ですよね。カードを使って時間を管理するところとか、もうマネしてます!」

    店にいると、読んだ人の感想が直接聞けることがいい。

    不思議と「ここが良かった!」と言われる文章は、その人それぞれ。自分の作ったものに、少しずつ自信が出てきて、おすすめとはまでいかなくても、穴があっても入らずに堂々としていられるようになった。

     

    店という場所

    「本を読んですぐに来たんです!」
    と言って店に来られるお客さまを見て

    「ああ、届いているんだ」
    と実感している。

    そしてたまに自分の書いた本を開けて過去のわたしの言葉に勇気づけられ、とうとう自分もこの本を使い始めた。

    人と共感する度に、わたしはしあわせを感じる。

    「これ、すごく素敵ですね」
    「ありがとうございます。わたしもそう思います!」

    人と感動をいっしょに味わうことができる店という場所で生きることが、自分に合っていると思う。まだ出会っていないあなたに会いたくて、つながりたくて、今日も店に立ちつづけている。

     

    文・「雑貨店 おやつ」店主・トノイケミキ

    雑貨店おやつへようこそ
    著者:トノイケミキ
    発売日:2017年05月
    発行所:西日本出版社
    価格:1,512円(税込)
    ISBNコード:9784908443138

    著者プロフィール
    トノイケミキ。1971年、京都生まれ。
    8年間ディスプレイ会社に勤めたあと、かつての同僚と2002年7月、大阪・西天満に雑貨店「カナリヤ」をオープン。
    その後、カナリヤの籠から巣立ち、2007年5月に「雑貨店 おやつ」のサイトオープン。
    2011年11月に実店舗をオープン。
    著書に『カナリヤ手帖 ちいさな雑貨屋さんのつくり方』、『はじめまして京都』(宮下亜紀共著)がある。

    雑貨店 おやつ
    京都市西京区桂野里町10-9(Tel.075-204-6023)
    http://www.o-ya-tsu.com/




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