インタビュー:林真理子が描く「人生最大で最後の格差」!『我らがパラダイス』は泣いて笑える介護小説

2017年04月21日
楽しむ
日販 ほんのひきだし編集部「新刊展望」担当 猪越
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――そういった実際のケースなども作品に反映されているのですね。やがて追い詰められた3人は、父母のため、自分のために、驚くような行動に出ます。

物語のラストが「荒唐無稽だ」という声もいただきましたが、そこまで持っていくために、いくつもの「リアル」を積み重ねました。最後の朝子たちの行動については、「そんなことが可能なのだろうか?」という疑問もあったのですが、取材に応じてくださった施設の元関係者の方から「(小説にも書いた)ある条件さえクリアできれば可能」だと確証をいただいています。

――連載時も多くの反響があったということですし、すでに映画化のお話も進んでいるそうですね。実際に彼女たちのような行動は取れないにしても(笑)、3人に共感して、一時でも心が軽くなった方も多いのではないでしょうか。

連載中も「笑いながら泣いて、泣きながら笑って読みました」というお言葉をいくつもいただきました。それが私の願っていたことなので、とてもうれしかったです。

執筆にあたっては、「正義を振りかざさない」ことを考えました。マネジャーにはマネジャーの言い分があって、利用者やその家族にも言い分があるんです。「努力して成功した人が最高の介護を受けられるのは当然。あんたらの親は努力が足りなかった」という主張も、言われた側の「そんなふうに人を侮辱するのはひどい」という怒りも、それぞれの人生があっての発言。だからこそ「国や制度が悪い」といった、ありきたりな正義にはもっていかなかったつもりです。特に最後は、「自分たちの居場所は自分たちで作ろう」と提案するつもりで書きました。

「介護で追い詰められた人間は、たいていのことは許されるのではないか」ということもテーマのひとつと言えるかもしれません。介護とは、人間の生き死に、尊厳に関わることですから。

(2017.4.5)


林 真理子 Mariko Hayashi

1954年、山梨県に生まれる。1976年、日本大学芸術学部文芸学科を卒業。コピーライターを経て、1982年、エッセイ集『ルンルンを買っておうちに帰ろう』を出版。1984年、処女小説『星影のステラ』が直木賞候補に選出されたことを機に、執筆業に専念。1985年、『最終便に間に合えば』『京都まで』により第94回直木賞を受賞。1995年、『白蓮れんれん』により第8回柴田錬三郎賞を受賞。1998年、『みんなの秘密』により第32回吉川英治文学賞を受賞。2000年、直木賞選考委員に就任。ほか、数々の文学賞の選考委員を務める。2011年、レジオン・ドヌール勲章シュヴァリエ受章。著書に、『素晴らしき家族旅行』『下流の宴』『マイストーリー 私の物語』『ビューティーキャンプ』『マリコ、炎上』『美を尽くして天命を待つ』『中島ハルコはまだ懲りてない!』など多数。

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