• 森絵都が10年間「短篇小説」に挑み続けた集大成!最新刊『出会いなおし』

    2017年03月29日
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    日販 ほんのひきだし編集部 「新刊展望」担当
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    昭和から平成にかけての”塾業界”を描いた大長編小説『みかづき』が大きな感動を呼んだ森絵都さん。同作は「2017年本屋大賞」のノミネート作品としても注目を集めています。

    そんな森さんの最新刊『出会いなおし』は一転、「人生の大切な場面が詰まった6つの物語」を収めた短篇集。「短篇小説の可能性」に挑みつづけた10年間の「戦果」でもあるという本書について、森さんにエッセイを寄せていただきました。

    出会いなおし
    著者:森絵都
    発売日:2017年03月
    発行所:文藝春秋
    価格:1,512円(税込)
    ISBNコード:9784163906201

     

    意志と決断の日々

    かつて10代の読者へ向けた本を主に手がけていた私は、大人向けの小説を書きはじめて間もなく、自分は短篇小説をほとんど書いたことがない、という衝撃の事実に気がついた。子どもの本の世界には、文芸誌のような媒体がない。よって、短篇を書く機会もない。経験のないことはなんだか怖い――というわけで、いざ短篇を書こうとすると、妙に身構えてしまい、どうしても筆がびくびくする。

    これはまずい。事態を重く見た私は、あるとき、「オール讀物」から短篇の依頼をいただいたのを機に、「1作と言わず、今後10年くらい定期的に短篇を書かせてもらえませんか」と自分からお願いした。そう、誰に頼まれるでもなく、自ら始めたことだった。

    これってけっこう大変かも、と気がついたのは、実際、定期的に短篇を書きはじめてからだった。最初の1年は毎月1編ずつ書いた。そうすると、遅筆な私は他の仕事が何もできないことがわかり、翌年からは3ヶ月に1度にしてもらった。さらに数年後には半年に1度のペースとなって定着し、いつしか長い年月が流れて、昨年の夏、とうとう満期を迎えた。長い10年だった。

    とはいえ、まだ、たかだか10年。短篇の奥義などは爪の先にも触れられた気がしないが、短篇のしんどさを肌に沁ませるくらいはできたかもしれない。長篇小説というのは、書き進めるほどに物語それ自体が加速して、自然と勢いを帯びていくもので、たとえば自転車のペダルをせっせと漕ぎつづければ、あるときから足を休めても車輪が勝手に回りつづけてくれるのに似て、後半、ぐんと楽になる。よく「動きだした」「降りてきた」などと神がかったような言われ方をする現象だが、私は自転車と同じ単純な運動の法則だと思う。けれど、短篇小説はなにぶんにも尺が短いため、それが起こる前に終わってしまう。勢いや偶然の作用に頼れない。どこへ進むのか。どこで止まるのか。常に書き手の意志と決断が求められる。それが、しんどい。

    この春に上梓した『出会いなおし』は、日ごろ優柔不断な私が意志と決断を鍛えつづけた10年間の、後半の数年間に手がけた原稿をまとめた短篇集だ。「オール讀物」の掲載作品からは過去にも3冊の短篇集を編んでもらったが、これで最後の1冊となる。テーマも枚数も自由、というありがたい環境のもと、短篇小説に何ができるのかと格闘しつづけた10年間の戦果としては、これまでで最も多彩な「短篇の可能性」を吹きこむことができたのではないかと思う。

    本書のラストに収録されている『青空』は、10年の締めくくりとなった1作で、その執筆中、私は自分がかつてないほどのびのびと解放された境地にいるのを発見した。10年終わってよほど嬉しかったのかもしれないが、とりあえず、びくびくせずに短篇を書けるようにはなったらしい。ここをまた新たなスタート地点として、今後も精進して参ります。

    『出会いなおし』の試し読みはこちらから

    ※『出会いなおし』以前の短編作品はこちらに収録されています。

    漁師の愛人
    著者:森絵都
    発売日:2013年12月
    発行所:文藝春秋
    価格:1,404円(税込)
    ISBNコード:9784163826004

    異国のおじさんを伴う
    著者:森絵都
    発売日:2014年10月
    発行所:文藝春秋
    価格:508円(税込)
    ISBNコード:9784167902025
    架空の球を追う
    著者:森絵都
    発売日:2011年08月
    発行所:文藝春秋
    価格:453円(税込)
    ISBNコード:9784167741044

    あわせて読みたい:
    王様のブランチ「ブックアワード2016」受賞!森絵都『みかづき』書店員が選ぶ名言集

    森 絵都 Eto Mori
    1968年東京生まれ。1990年『リズム』で講談社児童文学新人賞、1995年『宇宙のみなしご』で野間児童文芸新人賞、椋鳩十児童文学賞、1999年『カラフル』で産経児童出版文化賞、2003年『DIVE!!』で小学館児童出版文化賞、2006年『風に舞いあがるビニールシート』で直木賞受賞。著書に『永遠の出口』『ラン』『みかづき』などがある。


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